6:捜索と犬
詰所を出た俺の足元をとてつもなく柔らかい感触が襲った。どちらかと言うと雪のふわふわ感と言うよりかは、もふもふ感と言ったほうが正しいそれはとても暖かく、足元を動き回っていた。
「母さん、ここにレックス連れてきた?」
そう。そのもふもふで暖かく、俺の足元を動いていたのは愛犬のレックスだった。
「レックスちゃん?かなり急いでたから、リードを止めてくるのを忘れたのかも?」
良く見るとレックスの首から繋がったままのリードを何故か女将さんが持っていた。そしてレックスの口元には何かがくわえられていた。
「どうして女将さんがここに?」
「サクラさんが宿に忘れて行ったマフラーを届けようと外に出ると、浮かない顔の子供達がいたの。スズネちゃんから理由を聞いていた時にいきなりこの犬がやって来て、私の持ってたマフラーをくわえてどこかに行こうとしたから、ついてきてしまったの。いったい何があったの?」
「ひとまずレックスのリードは僕が預かります。それと何があったのかは母に聞いて下さい。」
不幸中の幸いと言うべきか、サクラのマフラーをくわえたレックスがいるって事は思ってたより早く見つかりそうだ。
「ワォン!ワォン!」
「よくやったぞレックス、お前の鼻があれば百人力だ!」
母さんに渡されたバックの中にあったささみの一切れをレックスに食べさせているとフォッカーさん達の準備が終わったらしい。
「坊主、俺達は準備完了だ!直ぐに行ける。」
「わかりました。それじゃあついてきて下さい。頼んだぞレックス。」
詰所を出てから30分程たっただろうか?
雪も一層強くなり、視界が悪くなってきたが俺達はある場所にたどり着いた。ここ王都はに至るところに水路が整備されており、野菜の冷蔵保存や農業用水として使われている。今、俺達のいる場所から見えるあの水路は東区と北区の境界とされている。
「フォッカーさん。あそこの水路を越えると北区に入ります。そのためここで一旦別れようと思います。俺とレックスで敵の最新情報を入手してきます。例え酔っていても衛兵さんに味方の情報を渡すとは思えません。その間にフォッカーさん達は、北の門の詰所にいって城の方に犯罪者護送馬車の要請をして詰所で待機していて下さい。終わったらそっちにレックスを走らせます。」
「よし坊主。それぐらい任しときな!」
フォッカーさん達と別れた俺は北の街の酒場町の一つに来ていた。俺は気軽に入れて情報が簡単に集まりそうな店、なおかつ人の出入りが多いところを見つけ暖簾をくぐった。
「いらっしゃい。兄ちゃん一人かい?それならカウンターだけど。」
「良いですけど、犬って入れます?」
「騒がねぇってんなら、かまわないぞ。で何にする?」
「ありがとうございます。じゃあ唐揚げ、一人前お願いします。」
中に入ると思ってた通りの雰囲気で、昼は食堂で夜は居酒屋といった具合だろうか?客層は若い駆け出しのハンターから良い歳のおっさんとほとんどが男で埋められており、中にはもう出来上がっている人もいるみたいだ。
「へい、兄ちゃんお待ち遠さん。」
「旨そうですねこれ。それじゃあいただきます。」
「なぁ兄ちゃん、この辺じゃ見かけない顔だけど、新米ハンターさんか?」
「いえ、そうじゃないんですけど、強いて言うなら人探しですかね?それにしてもここは思ってたより治安が良さそうですけど。」
「それはここがまだ東区寄りだからだ。だからまだましな方に見えるかも知れないけど、北の街の中心部はここみたいにはいかない。」
「それじゃあ、ベアーズって人達の事はご存じないようですね?」
俺がそういった瞬間に周りの男たちの笑い声がなくなり、隣の既に出来上がってたおっさんは酒のおかわりを大越で頼みはじめた。挙げ句の果てに大将は、
「兄ちゃん、この店であの連中の話は無しだ。ここにはベアーズの連中に仕事の大半を奪われたり、邪魔されたりした男たちの溜まり場だ。以前は腕利きのハンターだったらしいが、今は過去の栄光にすがるただの悪党だ。わかったならお代は要らない。今日のところは帰ってくれ。奴等の息がかかっているのはもっと北だ。」
と言われ、運良く俺はベアーズが地元の人にも迷惑かけているって事がわかり、レックスを連れて店をあとにした。フォッカーさん達はうまくやってくれているだろうか?
~フォッカー視点~
カイトの坊主と別れた俺達は北の門の詰所の前まで来ていた。
「東の詰所のフォッカーだ!入るぞ!」
詰所の中にはそこの小隊長の好みが良く表れるのだが、ここには必要最低限の物しか置いてなく、よっぽどきっちりした性格の小隊長だということが見てとれる。
「東のフォッカー隊長自ら北に何のようですか?」
「良く聞けよ。明日の夜明け前までには『熊殺しのベアー』とその配下ベアーズ壊滅し捕らえる事ができる。そのための犯罪者護送馬車の手配を要請しに来た。」
「・・・・・えっ?」
「おいおい、何固まっていやがる?人の話が理解出来ないのか?」
「あっはい。今しがた同じ様なことをそこにいる旅人さんに言われたばかりでして。それにしても変ですなぁ、つい先程までそちらにいらしてたのですが。」
「それで。犯罪者護送馬車のほうは手配してもらえるのか?」
「了解です。しかし信じられません。」
「そんな心配は必要ない!俺達はただ壊滅させられたベアーズを捕まえるだけだ。」
~○○○視点~
国立図書館で衛兵に声をかけられたカイトを見つけ、まさかまた会えるとは思っていなかった私は、ついていけばいつかは話せると思い彼の後をつける事にした。幸い彼を乗せた馬が道の真ん中をあけてくれたお陰で、私は持ち前の光魔法と飛行魔法を駆使して何とか気付かれずに彼の後をつけることができた。彼の入った詰所の中からベアーズを潰すという声を聞いた私は一足先に北の詰所に行き、衛兵に犯罪者護送馬車の手配をしてと良い争っていたところに来てくれた東の詰所の人に後の事を託した私は北の街の中心部に向けて歩き出した。
(いったいあいつは何でベアーズなんかの喧嘩買ったのよ!こうなったら最後まで付き合わせてもらうわよ。)




