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異世界転生 ~記憶が戻るとスラム街~  作者: 山本 大和
第三章 波乱の王竜戦
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2:それぞれの思い

 一試合目の熱気がまだ収まらない観客席であったが、次の試合の二人の姿が見えると一瞬にして静まり返った。


「次の試合の展開はどう予想しますか?」

「そうですね。カイト選手もケイン選手も実力に大差は無いでしょう。この試合もかなりの接戦になると思われます。」


そのころリングの上で向かい合う二人は愛剣を構え、試合開始の合図を待っていた。


「はじめ!」


審判のその合図と同時に二人は互いの間合いに入り込んだ。無言のまま斬り合う二人はお互いに一歩も譲らずに、剣と剣がぶつかり合って甲高い音が響く中、ケインはそっと口を開いた。


「僕は嬉しいよ。実体剣を使う君と闘えるのだから。そして君に勝つのは僕だよ。」

「その剣筋、伊達や酔狂で勝つと言っている訳では無いみたいだね。」

「僕は君の剣技といい、人望といい、君の事を尊敬してるんだよ。」

「へぇ~、それは知らなかった。だったら何でわざわざクラスを二分しようとするような奴の下に付いたんだよ。」


一進一退の極限状態の中で斬り合っているのが嘘の様に二人は呼吸も剣筋も乱さずに語り合っていた。


「世の中権力者の下につくのは人の摂理だと、実家で嫌と言うほど教えられたよ。」

「悲しいな。」

「そうさ。僕は十年前何があったかは知らないけど、今現在君のお父上には犯罪者のレッテルが貼られている。だからいくら僕が君の事を尊敬していようと、君の下につくことは出来ないんだよ。」


ケインの上段からの渾身の一撃を受けたカイトは後退し、二人の間がまた開いた。


「だけど、権力者が全て正しいとは限らないんだぞ。」

「僕にだって今のジャンクの行動がおかしい事ぐらいわかるさ!」

「だったら何故!」

「だから僕は君に勝って、この手で彼を止めなければならないんだ。」


リングの上には二人だけの空間が存在し、二人とも観客席からの騒音や視線は一切気になってはいなかった。


「とてつもない速さの斬り合いなのはよく分かりますが、一体彼らは何をぶつぶつと喋っているのでしょうか。」

「そんなことは分かりません。ただ彼らの剣筋が乱れない事はとても素晴らしい事です。」


そしてリングの上で俺とケインは再び剣を構え直した。すると周囲の空気が一瞬にして張り詰めた。


「そう簡単に勝ちを譲るとでも。」

「その威圧感。流石は僕が尊敬する男だ。だからこそ僕は本気の君を超えなければならない。」


その静寂を破り先に動いたのはケインの方だった。それに続いてカイトも前に出る。ケインの放った突きをすんでのところで躱してすぐに横薙ぎを繰り出したが、ケインはそれを自らの剣の腹で受け止めて弾き返した。そしてまた二人は距離をとった。


「やっぱり君は凄いや。あの突きを躱すなんて。」

「それはお互い様だよ。俺もあれを弾き返されるとは思わなかった。」

「だけど次で決める。」

「その言葉そっくりそのまま返してやる。」


自らの剣を鞘にしまった二人は示し合わせていたかのように、全く同じタイミングで走り出した。チャンスは一度だけ、それはほんの一刹那の内に終わってしまう。長い沈黙をおいて先に膝を付いたのカイトの方だったが、まだダウンと言うわけではない。またケインもケインで耐えている。そして背を向ける二人の真ん中には半分に割れた剣が突き刺さっていた。


「武器破壊だ!大会規定により只今の決まり手は武器破壊。武器破壊でカイト・ブラックの勝ち。」


実況によりカイトの勝利が伝えられて、観客から歓声が沸き起こる一瞬にも満たない時間が、二人にとってはとてつもなく長く感じたのであった。


「負けて悔しいけど、本気の君と闘えたのは楽しかった。だからジャンクを止めるのは君に託す。」

「あぁ。ちなみに俺はカイト。カイト・ブラックだ。カイトで構わない。」

「良いのか。なら俺の事もケインと呼んでくれ。」


「勝って驕らず、負けて腐らず。これこそが騎士道と言うべきものでしょう。」

「そうですね。彼らの今後の活躍が楽しみでなりません。」


リングの中央で握手を交わす二人に向けて観客からは惜しみ無い拍手が送られていた。そして、観客席のなかにつくられた特別来賓席では国王がその闘いを目を離すこと無く見届けていた。


「陛下、流石はブラック家の子ですな。」

「あぁ、本当に若い頃のギルバート殿と瓜二つだ。一人だけ格が違うわい。」

「はい。これで我が軍も安泰ですな。」

「陛下、育て方を間違えたら伸びる若者も伸び悩みますぞ。」

「シルヴィア卿よ、みなまで言わずともわかっておるわ。」


こちらも和気あいあいとした雰囲気で少年たちの闘いの行方を見守っていた。


 試合を終えた俺が控え室に戻るとそろそろ昼食を食べ終えそうなライアンと、今から食べ始めるステラの二人がいた。


「お疲れ。」

「次はお前の番だな。」

「あぁ。任せときな。」


そう言ってライアンは控え室から出ていった。昼食を食べ終えた俺はステラに声をかけられた。


「カイトは次の試合のどうする?私は召集時間前までは見ていくつもりだけど。」

「今回は遠慮しとくよ。二回戦の相手はジャンクだしそれどころじゃないかな。」

「分かったわ。じゃあ、また後で。」


そう言ってステラは控え室を出て左に曲がって行った。そしてその背中を見送った俺は右に曲がり会場から一度退出した。


「いますか、親方!」

「おっ、カイトの坊主じゃねぇか。今日はなんの用だい?」

「これなんですけど。」

「これぐらいならすぐに直るさ。茶でも飲んで待っててくれ。」


そう言って親方は俺から剣を受け取るなりすぐに工房の方へと戻っていった。そうして本当に茶を飲んで店の中を物色しながら待っているとすぐに親方が戻ってきた。


「ちょっと振ってみてくれ。」

「うん。全然違和感を感じないよ。」

「それなら良かった。」

「ところで親方、さっきから気になってるんですけどあの短剣にしては長いし、片手剣にしては短いあの剣は何なんですか。」

「あれか、ハンターに頼まれたオーダーメイドだよ。あの年でどうやってここの噂を聞きつけたかは知らないが、身の丈にあったサイズの剣が欲しかったみたいだな。」

「へぇ~、それじゃお邪魔しました。」

「あぁ、また来てくれよ。」


俺が店から競技場に戻ると、ライアンが丁度一回戦突破を決めていて、もうすぐステラの試合が始まるところだった。

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