1:衝撃の幕開け
7月18日火曜日、今日も朝から快晴で絶好の試合日和であり、ここ国立競技場には多くの観客が詰め掛けていた。何故なら今日からここで王竜戦が行われるからである。軍部の大半を騎士が占めているラインハルト国は騎士の国と呼ばれることもあり、そんな騎士は国民の憧れの的である。そして王竜戦とは将来騎士になることを約束された者達による決闘であり、それをその目で見ることが出来るのは国民にとってとても嬉しいことなのである。また王竜戦には国民に軍人の中の花形である騎士の姿を身近に感じさせることで軍の志願兵の人数を増やすプロパガンダとしての側面があるのも事実である。そして今はそんな王竜戦の開会式が行われている。
「選手入場、皆様盛大な拍手でお迎えください。」
ちなみに今回の司会は名前を聞いたことはないが、騎士学科の学科長がつとめているらしい。
「開会宣言、ラインハルト王国国王パトリック陛下にして頂きます。陛下宜しくお願いします。」
陛下が台の上に立つと観客席では一気にボルテージが上がっていった。
「長ったらしい前置きは無しだ、これより第48回王竜戦の開催を宣言する。」
その声と当時に、昼花火が打ちあげられた。その音と歓声が鳴り止んだあと、司会は次に移った。
「続きまして、大会上の諸注意を学園長アレックス・カーターからございます。」
「えぇー、選手諸君はあらかじめ聞いているとは思いますが、もう一度確認しておきます。ひとつ、勝敗の決定に置いては審判が絶対です。ひとつ、使用可能な武器は1試合で1個のみ。ひとつ、魔法について身体強化魔法等、強化魔法の利用は認めるが、精霊魔法は一属性のみとする。以上の事を踏まえて正々堂々と闘ってくれることを願う。」
「学園長ありがとうございます。これにて開会式を終わります。本日の第一試合の開始は三十分後を予定しています。試合開始まで今しばらくお待ちください。」
こうして王竜戦の開会式は終了し、それぞれの思惑が交錯する波乱の王竜戦の闘いの幕開けが目前にせまっていた。
もうすぐ私、ユーナ・レオンハートの試合が始まります。相手はあのジャンク・フランクフルト相手にとって不足はありません。
「この試合大方の予想はジャンク・フランクフルトに傾いていますが、どうご覧になりますか?」
「そうですね。レオンハートさんに勝ち目が無いわけではありませんが彼女にとって厳しい試合になることはまちがいないでしょう。」
放送席はあんなことを言ってはいますが前評判なんて関係ない。先生とやって来たことを発揮し、勝って私はお父様に恩返しをするだけです。
「はじめ!」
審判の合図で試合がはじまった。
「おっと、フランクフルトが開始早々一気に飛び出した!初撃で決める気なのだろうか、そしてこの一撃をレオンハートは耐えることが出来るのか。」
多分昔の私だったら初見でこれを防ぐのは無理だっただろうけど、今の私はもう過去の私ではない。これぐらいの攻撃は先生と何度も実践してきている。だから今の私が防げないわけはない。
「なんと言うことだ!フランクフルトがスピードに自らのパワーを上乗せして放った一撃を、レオンハートはレイピア一本で受け流した。」
「これは筋肉の柔らかさ、関節の可動域、そして繊細な剣捌きに於いて男子に勝るところを持つ女子だからこそ為せる技です。」
だが、思っていたよりも衝撃が凄い、あと何回このレイピアで受け流せるかもわからない。
「ほぉ、これを受けて立っているか。」
「えぇ、今度は私から行かせてもらいます。」
先生とステラと共に磨いてきたこの剣で、今までの屈辱を晴らさせて頂きます。
「今度はレオンハートの攻撃だ。彼女の連撃は相手に反撃の隙を一切与えていません。」
まだ、もっと鋭く、獲物を見つめる鷹のように。もっと丁寧に、針の穴に糸を通すように。そしてもっと激しく、峡谷を流れる激流のように!
「彼女の連撃はとまる事を知らないのか、私にはもっと速くなっているように見えます。優勝候補の一角が初戦敗退になるのでしょうか?」
そうしてユーナは場外ギリギリのところまでジャンクを追い込んでいた。
「とどけぇーー!」
「させるかー!」
・・・・・・・・・・ポトッ・・・・・・・・・・
「とどいたぁ~、連撃からの間髪入れず振り下ろされた一撃は、その切っ先が微かにフランクフルトの頬をかすめた。最初に傷を負ったのはジャンク・フランクフルトの方です。」
すんでのところで体勢を建て直すことが出来たジャンクは場外に落ちることなく何とかリングの上に立っていた。しかし思いの外勢いを止めることが出来ずに足を滑らせたユーナは、勢い余ってジャンクにぶつかり二人同時に場外へと落ちてしまった。
「何と言う幕切れ、果たして審判の判定は・・・・ジャンク・フランクフルトだ。勝者ジャンク・フランクフルト!」
「一回戦から見応えのある試合でしたね。皆様この試合を繰り広げた二人に盛大な拍手を。」
その拍手は二人が控え室に下がっていくまで鳴りやむことはなかった。
控え室に向かう花道にて、私の事を待っている人がいた。
「先生、私ダメでした。」
「そんなことないわ。ちゃんと胸張って歩きなさい。」
「だけど、私。」
「そうよ。ユーナは何一つ恥じることはない。貴女の剣はしっかり、相手にとどいたんでしょ。」
「ありがとうステラ。」
「後は私に任せて、ユーナは休んでて。」
「うん。そうするね。」
そうして控え室のベットで目を覚ましたユーナの目の前には懐かしい両親の姿があった。
「よく頑張ったねユーナ。」
「騎士学科に入った甲斐があったな。」
「お父様、お母様、御免なさい。折角来てくれたのに一勝も出来なくて。」
「何言ってるのよ。あんなに頑張っている貴女の姿を見れただけで十分よ。」
「折角この学園に送り出してくれたのに、私は。」
「違うよユーナ。謝らなければいけないのは私の方だ。政略結婚の道具にされたくないが故に騎士学科に送り込んでしまった。」
「いえ。お父様は最善の事をしてくれました。」
「そう言ってくれると嬉しいよ。ユーナ、今日はよく頑張ったな。流石は私たちの娘だ。」
それを聞いたユーナは目は大粒の涙が溢れさせながら、満面の笑みを浮かべていた。そしてその頃会場ではカイトの一回戦が始まろうとしていた。




