10:予選突破
時は流れて7月2日、日曜日。俺やステラは全勝で予選を突破し、大抵のブロックではもう消化試合になっていたのだが、ライアンのブロックだけはただ一つ、今日の最終戦までもつれ込んでいた。相手はロクト、上位8人の内のひとりで、ジャンク派の一人でヘムリス子爵家の次男坊だったはずだ。王竜戦の予選は学園主催での賭博の対象となっており、一口銀貨一枚100Pから購入でき、各予選ブロックの突破者を一人選ぶ特別券と、各試合の勝者を選ぶ単勝の二種類がある。もちろん特別券の方が配当率が高く、騎士学科の生徒は自分のブロックには賭けられないので、俺はステラとライアンの特別券を二枚ずつ買っている。ステラの券は本命なので払い戻しは安かったが、特別券の合計購入枚数が50枚に満たないであろうライアンの券はオッズが物凄く高いので、今日みんなの大本命であるロクトに勝ってくれれば小遣い稼ぎとしては十分だ。
「ライアン頑張って勝ってね。私達はライアンが勝つのに賭けてるんだから。」
「まぁ、お金の事は置いといて。勝って決勝トーナメントで闘おう。」
「あぁ、それじゃあいってくる。」
それからライアンが競技場の中へと入って行くのを見送って、俺達はメインスタジアムの観客席へと戻っていった。
そこには王竜戦決勝トーナメント最後の一枠が誰になるかを見届けようと学年学科を問わず多くの人が集まっていた。
「・・・です。解説には学園長先生をお招きしてお送りしています。宜しくお願いします。」
「宜しくお願いします。」
「それでは学園長先生、この試合貴族出身の生徒と平民出身の生徒の闘いはどう思われますか?」
「2、3年生になると、実家で剣術指導を受けてきた貴族出身の生徒と平民出身の生徒の差は無くなってくるのですが、一年生のこの時期で王竜戦決勝トーナメントを狙える位置にいるライアン君の実力本物だと思うね。」
「それではどのような展開だと思われますか?」
「そうだね。ロクト君の出方次第かな?相手が平民出身だからって舐めてかかるとライアン君の一方的な展開になると思うし、ロクト君がライアン君の実力を認めているのなら接戦になることは間違いないね。」
「学園長先生、ありがとうございます。」
実況と解説が語り合っているうちにリングの上には二人の姿があった。審判にはゴドフリー教官が上がっている。
「それでは王竜戦決勝トーナメント最後の一枠をかけた闘いがまもなく開始です。」
お互いに一礼したあと距離をとると、歓声が静まり返り、試合開始の合図を待っていた。
“ドォーーーン”
銅鑼の音を合図に歓声が上がった。リングの二人はお互いの出方をうかがっている。ここでしっかり読みあっているところを見ると、ロクトはライアンの実力を認めているようだ。しかし最初に痺れを切らして突っ込んで来たのはそのロクトだった。ライアンはしっかり見切ってこの突進を躱してさらに一撃を与えようとしたが、初撃を躱されたロクトが立て直しそれを受けきった。やっぱりロクトが大本命なだけはある。しかしそれで終わるライアンではなくロクトから反撃が繰り出される前に次の攻撃へと移行していた。それからライアンが少し押し気味でロクトは防戦一方になっているが決定打を受け流され、距離を取られてしまっていた。
~ライアン視点~
さすがは貴族出身、そう簡単には勝たせてくれないみたいだ。だからってここで諦めたら、カイトとの約束が果たせなくなる。出来ることならば身体強化魔法を使わずに勝ちたかったが、今はそんな事が言える状況では無いみたいだ。魔力消費を抑えるためには自分の中に意識を残したまま、外部に対応しなければならないが、カイトに今までしごかれたおかげで、今の俺に出来ないことはない。
~カイト視点~
「今ライアンのやつ、身体強化発動した。」
「本当だ、だけど相手は気付いてないみたいね。」
それはそのはず、何と言ってもライアンに身体強化の伊呂波を叩き込んだのはこの俺だ。そしてライアンはそれを自分の物として消化している。この状態のライアンは俺でも気を抜くとすぐにやられてしまう。ロクトがそれに気付かないならもう勝負は決まったも同然だ。ほら。審判の手が上がった。
「決まったー!これは凄い、勝ったのはライアン!大本命ロクトここで破れたり!」
そして舞い散る紙吹雪、本命が敗れたときのこの光景はとても美しい。
「連絡をします、単勝の払い戻しは45.9倍、特別賞の払い戻しは258.3倍、当選者は本日中に学園窓口にてお引き換え下さい。繰り返し・・・・」
そして一人紙吹雪の後片付けをする生徒会の人たちをあわれむカイトであった。
ライアン勝利の感動が収まらない中、カイトは何とか取材から切り抜けてきたライアンをようやく見つけることができた。
「お疲れライアン。」
「応援ありがとなカイト。」
「あぁ、そして予選突破おめでとう。」
「これで晴れてカイトと勝負ができる。」
「その前にくたばらなければな。」
「お前こそ。」
そしてその光景を傍らで見守るステラであった。
新作練ってたら、こっちが疎かになってしまいました。その分新作は面白いと思うのでそっちもよろしくお願いいたします。




