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異世界転生 ~記憶が戻るとスラム街~  作者: 山本 大和
第二章 ラインハルト学園 1年生編
19/28

5:決着

~放送席にて~


「私には槍がメイン武装のステラさんの必修のため身につけた剣が、少し学生離れしている気がするのですが。どうなんでしょうかゴドフリー先生?」

「いえ、そうではありません。いくらメイン武装が槍だとしてもあの速さに到達することができます。しかし彼女が凄いのは身体強化魔法を発動した状態であれほどの精度の連撃を繰り出していたところです。彼女が学生離れしているのは魔力(マナ)の制御の方です。」


そう解説している最中にステラの連撃から俺は逃れていた。


「そうですか。それではたった今その連撃から逃れたカイト君のことはどうみますか。私はどうやって逃れたのかわかりません。」

「それは無理もないですよ。今まで手数で押していたステラさんが決めにいくためにできた僅かな隙を彼が見逃さなかったことをあの一瞬で理解できたのは、学園長と国王陛下ぐらいでしょう。彼の実技教官をしているこの私でさえ、その隙は彼が動くまでわかりませんでした。やはりあの二人は今の時点でこの学年の騎士学科ツートップなのは間違いないでしょう。」

「それでは益々、今後の展開から目を離すわけにはいきませんね。」

「そういうことになります。」


      “ウォーーーーー!”


そして再び観客から歓声が沸き起こり誰一人として目を話す人はいなかった。その中に我を忘れて決闘盛り上がる国王陛下の姿があった。


~リングにて~


 やっとの事でステラの斬撃から逃れた俺は、次に向けて呼吸を整えていた。


「あの連撃から逃れるとは流石はカイト、私の剣はまだまだみたいね。」

「正直言って、ここまで剣術が凄いとは思ってなかったよ。それにやっぱり魔力(マナ)の制御は桁違いだね。」

「慣れたらそこまで苦じゃないわよ。呼吸しているのと同じような感覚だわ。」

「いや、お前の家族が特別なだけだ。」


多分その中でもステラは別格だろう。そう思えるのがその証拠である。普通ならあんなに正確な連続技を使いながら、魔力(マナ)漏れもなしに身体強化魔法は常時使えるものではない。もし仮にほかの人間が身体強化魔法を常時発動しながら今のステラみたいな立ち回りをしていたら、魔力(マナ)が垂れ流しになり一瞬にして魔力(マナ)が尽きてしまう。そうならないために、任意発動が存在しているようなものだ。


「やっぱりカイトとの決闘は楽しいわね。さっきは虚を付くために剣を使わせて貰ったけど、次は正々堂々とこの槍でいかせてもらうわ。」

「俺もだよステラ、今度は俺も身体強化魔法を使わせてもら。」


決闘が楽しいというと少し語弊があるとは思うが、つまり格下に圧勝するよりかは、ライバルと死力を尽くして闘ったり、格上に挑戦したりする方が断然騎士としての血が騒ぐのである。そのうえ今は、実剣を使っているため、木剣より臨場感が半端ない。

最後にここまで熱くなったのはいつだっただろうか?多分じいちゃんとの修行の時だったはずだ。今のステラは俺をそこまで熱くさせてくれる。


 得意の槍であるために身体強化魔法の制御に余裕があるのか先程の剣よりも一撃が重くなっている。それは身体強化魔法を発動している俺でもそう感じてしまう位だが、先程の様に間合いを詰められる事はない。そのためこちらからも何度か仕掛けてはいるがそれも全て槍で受け流されるか、かわされている。このままではどちらが先に魔力(マナ)が切れるかの勝負になってしまう。そうなってしまう前になんとか決めなければならない。そんなことを考えているうちにステラの横凪ぎをかわし、俺は懐に飛び込んだ。ここなら外すことはない。もし仮に槍で受け止められたとしても見たところ柄は木製だ、身体強化魔法を発動した状態で放った斬撃ではひとたまりもない。予想通りステラは柄で受け止めざるを得なかった。これなら俺の勝ちだ。


      “ガキィーーーン”


一体なんで金属製の剣と木製の柄がぶつかってここまで甲高い音が鳴り響くのだろうか。そして木製の柄はびくとせず、逆に俺が吹き飛ばされた。


「驚いたでしょう。」

「一体どんな仕組みだよ、それ?」


普通は槍の柄を木製にした場合、軽くなって取り回しは簡単になるがその分衝撃に弱くなる。それを防ぐために柄も金属製にした場合は質量が増す分、槍に振り回されやすくなるため、女子には到底扱えない。


「物質強化魔法。精霊魔法じゃないからルール違反はしてないわよ。魔力(マナ)伝導性の高い素材は金属が有名だけど、植物にも存在してるの。魔導師が精霊魔法を発動するときに使っている杖の材料とかもその一種。」

「だからって、お前に魔法を禁止している親がそんなものお前に渡すはずないだろう。」

「知らないわよそんなこと。ただ一つ分かりきっていることは、槍だから間合いも広くて、柄が木製だから扱いやすく、その上魔力(マナ)伝導性が高いため物質強化魔法をかけやすい。そのお陰でわたしはカイトとの決闘を楽しめているってこと。」


つまりステラにかかればどれだけ抵抗値が大きくもいとも簡単に魔力(マナ)を通してしまうと言うことだ。もし仮に本物の素材を使ってあるとしたらこの槍をステラに渡した親の意図がわからない。それにしても軽くて丈夫で攻撃範囲が広いのはとても厄介だ。あの柄をぶった切れるのはのはオリハルコンやミスリル製の武器だろう。今の俺では武器破壊は無理だったみたいだ。


「楽しかったけど、そろそろ終わりにしない。」

「そのつもりよ。次で決めさせてもらうわ。」


もし仮に身体強化魔法と物質強化魔法の同時発動をしたところで、絶対に勝てるとは言えないが押し負けることはないだろう。それでも抵抗値が大きいこの剣で発動するには魔力(マナ)の消費が半端ない。今の状態で発動できるのは一回だけだろう。それで決めれなければ俺の負けだ。


 俺とステラは互いにタイミングを計っていた。ステラも本気で決めに来るみたいだ。そこは物音一つなく張り詰めてはいたが、どことなく温かい感じがした。次の瞬間お互いに走り出した。身体強化魔法を使わないただの全力疾走だ。


「「いっけぇーーー!」」


強化された剣と槍がぶつかり合った衝撃で砂埃が舞い上がり、視界が悪くなったが、ステラの槍の先が俺の首筋に当たってることだけは感じ取れた。視界が戻ると俺の剣もなんとかステラの首元にとどいていた。


「俺の負けだ。精霊魔法が使えない俺にはこの状態からの攻撃手段は持ち合わせていない。」

「いいえ、私の負けよ。魔力(マナ)を使い果たして今は立ってるのがやっとなんだがら。」


そう言い残して、ステラは槍を手放しその場に膝から倒れこんだ。


「勝者、カイト・ブラック!これにて決闘を終了する。」


「なんという劇的な幕切れでしょうか。この決闘はもはや学生同士の決闘ではありません。これ以上のものは戦場以外で行われることはないでしょう。」


実況の声を聞き、観客から一斉に歓声が沸き起こった。


「ありがとう、カイト。」

「お前に精霊魔法使わせてたらどうなっていたことだか。いまは休んでな。」


いくらステラと言えど精神の疲労は溜まっていたみたいだ。俺に背負われると直ぐに寝息が聞こえた。そして俺は眠っているステラを背負ったままリングの外へ降り、控え室に入った。そこには話し込んでいる学園長先生と国王陛下達の姿があった。


「流石はギルバート将軍の息子だ。素晴らしい決闘を観させてもらった。何でも褒美をくれてやる。」

「本当に宜しいのでしょうか?」

「何構わんさ、それでもと言うなら、お前の父から位を剥奪するしかなかったあの時の私からの謝罪と受け取ってくれ。」


陛下にここまで言わせるとはやっぱり俺の親父は凄い人だったんだ。


「そういうことなら、今年の王竜戦に彼女の父、カーマイン公爵を呼んでください。そして面会の機会を作ってください。」

「そんなことで構わないのか?私には黒竜騎士団の再編も可能なんだぞ。」

「はい。それがこの決闘で掛けていたものですので。それにその件はそれにみあった仕事をしたときまで待ってください。それでは貴族からの反感を買いかねません。」

「やっぱり君は将軍の息子だな。よし分かったその願い私が叶えてやろう。」

「ありがとうございます。」


本当なら学園長先生を通してお願いする予定だったので少し手間が省けた。あの頑固親子の喧嘩をやめさせるには、陛下の力が必要だ。


「きゃー、やっぱりあのカイト様です。お会いできて嬉しいです。」

「こら、アリス端ないではないか。すまんな、カイト見苦しいところを見せてしまって。」

「アスラン殿下とアリス王女殿下?どうしてここに?」

「なに、父上についてきただけの事だ。それにしても大きくなったなカイト、昔みたいにアス兄と呼んでも良いのだぞ。」

「それはもう無理です。あの頃のようには参りません。」


かつて俺は王宮にいる間、よく殿下に遊んでいただいたことがある。その頃はまだ年の近い兄弟がいた感じだったのだが、二人とも成長してそういうわけにはいかなくなった。


「それでも、私の事はアリスと呼びなさい。同い年の貴方に敬語を使われると背中が痒くなります。ステラもそう呼んでくれています。」

「分かったよアリス。それでも公の場では敬語を使わせて貰います。」

「仕方ないけど、それ位は我慢します。」


いくら同い年とはいえ、普通は王族に敬語を使わない方がおかしいはずだ。


「それはそうと、今から私と一戦どうだろうか?」

「ご冗談が過ぎますよ殿下」

「私は至って真剣なのだが。」

「これアスラン、彼が卒業すればいつでも手合わせできるのだ。今少し我慢すれば良いだけだろう?」


陛下の助け船のおかげで直ぐにもう一戦という事態にはならなかった。俺も殿下と手合わせしたくないわけではないが、今からとなるとかなりきつい。


「それでは私達は帰るとしよう。次に会う王竜戦が楽しみだ。その頃にはもっと腕を磨いていることを期待する。」

「わかりました。エリン王妃にも宜しくお伝えください。」

「あぁ分かった。次は全員で来るとしよう。」


 寮に戻った俺は、試験まであと一週間だと言うのに、その夜はぐっすりと眠ってしまった。試験までの最後の一週間、ここでどれだけジャンク達に差をつけるかによって、今後の学園生活に与えるよ影響の度合いが変わってくる。

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