6:負けれない理由
起きて直ぐにライアンに騒がれ、食堂に行ったら俺とステラは英雄扱い。朝からこの調子だと学園の方に行ったら先生達にも騒がれるだろう。
「それにしても、あいつら本当に損したよな。せっかくツートップの決闘が観れたのに。」
ライアンの言うあいつらとはジャンク派の事である。あれだけ大々的に開催が公表されていたのに誰一人として会場にいなかったのだ。
「腐っても貴族の端くれだがら、俺とステラがツートップだって事をプライドが許さなかったんだろうよ。あいつらってそういう人達でしょ。だから近いうちに一悶着あると思うよ。」
「そういう物なのか。」
絶対に試験一週間前の今週中に一回は接触してくるはずだ。
「ねぇカイト教えてよ。」
「何をだよステラ?」
「昨日の決闘の最後、どうして貴方はただの鋼鉄の剣に魔力を流せたわけ?あの剣がミスリル製な訳ないでしょ。」
「抵抗値が大きかったとしても、全く流れない訳じゃないんだからその値を超せば良いだけでしょ。」
そんなに難しい事じゃないはずなのに、第一ただの木でそれをやってるステラが聞くことでもないだろう。
「本気で言ってるの?」
「本気も何も精霊魔法と同じ原理だよ。雷撃を水属性魔法と併用するのは電流を流すのはその方が空気中に直接流すより楽だからで、決して空気中に電流が流せない訳じゃないでしょ。それと同じで金属の中でも比較的抵抗値が低いのがオリハルコンやミスリルなだけでただの鋼鉄でも流せない事はない。」
「例えそれができたとしても普通は一人の魔力量で流せる物じゃないのよ。それなのに貴方は昨日の決闘で魔力切れを起こすわけでもなく、決闘後には私を背負ってたのよ。これがどういう意味かわかってる?」
何をステラはここまで怒っているのだろうか?断定できたわけではないが、俺としては金属でもないただの木でそれをやってのけたステラの方が凄いと思う。
「カイト今まで魔力切れ起こしたことないでしょう。」
「制御出来るようになってからは一回もないけど。それがどうかしたの?」
「やっぱり何もわかってないのね。だったら私が・・・やっぱり後にするわ。今は授業に急ぎましょう。」
俺が何かおかしな事いったのか、誰だって制御出来るようになってからは魔力が切れるまで、使わないようにするはずだ。それなのに俺が何もわかってないみたいに言って、ステラは何が言いたいのだろうか。
それから教室に着くまでの間、廊下ですれ違う多くの人は生徒教員問わず、俺とステラを見つけてはきゃーきゃー騒いでいた。どうしてただの決闘をした二人がここまで注目されないといけないのだろうか。そしてここ教室でも。
「二人とも凄かったわ、先生感動しちゃった!」
そう、我らが担任レインちゃんだ。あのときは実況を担当していた。
「レイン先生もですか、すれ違う度に皆同じ反応するですけど。」
「仕方ないわよステラさん、あんな決闘なかなか観れるものじゃないから。」
「それにしてもレインちゃんは楽しみすぎだって。それにあの張り紙はレインちゃんが作ったんでしょ。そしてなんでわざわざ実況までしてんだよ。」
「そんなの私の勝手でしょ。それより早く席について。朝礼始めるわよ。」
こっちの身にもなってよ。ただでさえ親父の件で注目浴びてるのに、今はもっと肩身が狭く感じるよ。
「最後に今日から試験が終わるまでは模擬戦も決闘も禁止。各自でやる分には構わないけどしっかり課題も提出してね。」
ここに来て部活動停止ならぬ試合の禁止か。どこの世界でも試験一週間前からがお決まりらしい。
「おいお前ら。ツートップだか何だか知らねぇけど調子に乗るんじゃねぇぞ。」
「ご忠告ありがとう。」
こんなに早く大勢の前で接触してくるとは思ってもみなかった。今日のところはお引き取り願おう。
「ふざけんな。騎士学科のトップはこの俺ジャンクだってことだよ。」
「ねぇあんた達、カイトを怒らせない方が身のためよ。」
「なんだとこらぁ!」
わざわざ俺が俺が穏便に済ませようとしてたのに、ステラを突き飛ばすなら、そういうわけにもいきそうにない。
「お前らさいい加減にしろよ。寄ってたかって女の子に嫌がらせをして、お前らを産んでくれたお母さんは女だぞ。そして平民出身だからって他の男子を蔑んで、お前らの食べてる飯を作ってるのは農家だぞ。肉や魚は誰が捕ってきてくれている。その剣を打った鍛治師も平民だぞ。そんなんで人の上に立つものとして恥ずかしくないのかよ。そんなに俺やステラに負けるのが怖いのかよ。」
行きなり殴りかかってきた。相当頭にきたのだろう。まぁ当たりはしないのだけど。
「だったらもっと自分の剣を磨いて正々堂々と勝負すれば良いだろうが。俺とステラもそこで負けたとしても、今度はこっちが挑戦者として挑めば良いだけだ。だれもそれを恥ずかしいとは思わない。ありもしないプライドのために勝負を避ける方がよっぽど恥ずかしいことだ。」
「そうよ。負けたら終わりの戦争じゃないんだから。自分が勝ったら誇れば良いし、負けたらまた努力すれば良い。」
ステラの言う通り戦争は個人の問題じゃないからあの手この手で敵を陥れる事が必要になるけど、個人間における決闘で死ぬわけではない。わかってくれるかはわかんないけど。
「弱者が強者に説教してんじゃねえよ。」
「まだわかんないなら良いこと教えてやるよ。一週間後には試験もあるしそこで俺達より良い成績をとれ。直接対決が良いなら7月の王竜戦で大勢の前で俺達に勝て。たったそれだけだ。」
「良いだろ。そこまで言うのならその勝負受けてやる。ただし、俺達の中の誰かが優勝したらもう歯向かうな!仮にお前らが勝ったらその時は大人しく言うこと聞いてやる。」
「その条件でいいよ。ただし王竜戦まではお互いに一切の私闘禁止。これが絶対だ。」
「良いだろう。分かったな!」
そういって自分達の席に戻っていった。これでもう、王竜戦までは問題が起こることはないだろう。
「なぁステラ、わざわざこっちから喧嘩吹っ掛けなくても良いでしょう?だから突き飛ばされたってわかってる?」
「だって文句があるなら一人で来れば良いじゃない。それにあいつらあの決闘観に来てすらないのよ。そんな人たちに文句は言われたくない。」
「まぁ結果的に王竜戦まで互いに不干渉って事で同意できたからよかったけど。無茶な挑発はやらない方が良いから。無駄な争いはうみたくない。」
「それもそうね。この事は置いといて試験に向けて頑張りましょう。」
ステラさん切り替え早すぎでしょう。本当にわかってくれたのかな。こっちとしては何事においても力でねじ伏せるつもりは無いのだけれど。
終礼が終わって寮に帰ろうしたときに、レインちゃんに呼び出された。学園長室にお客さんが来ているらしい。俺目当ての客人とは誰なのだろうか?
「失礼します。カイト・ブラックです。」
「入りなさい。」
そこには学園長先生と国王陛下の姿があった。
「学園長、どうして陛下がこちらに?」
「まぁそこに座りなさい。話はそれからだ。」
一体陛下が俺になんのようだと言うのだろうか?カーマイン公爵の件だとしたら早すぎる。
「これはまだ君たちには言っていないが、王竜戦はその後の夏休みに行われる実地研修の研修先の選定をする場所でもある。上は宮廷直属から下は名もない小隊、どこに飛ばされるかは座学の成績と王竜戦での結果次第となる。無論生徒を選ぶ優先権は王族から順番である。よっぽどの事がない限り宮廷にいくことはないのだが、今年はその例外の年になってしまった。」
「私はアスラン側付きとして今回の優勝者を選ぶこととした。私としては君以外の者に任せたくない。だから私とアスランのために今回の王竜戦で優勝してくれ。」
「俺にその任務を実力で掴み取れと。そういうことですね。でしたら頭をあげてください。それに優勝しないと殿下に怒られてしまいます。」
「誰に似たのか、本当に頼もしい限りだ。」
「俺はこれで失礼します。」
「それと今回の事は他言無用で。あとあの娘にも頑張るよう伝えてくれ。」
「はい、わかりました。」
これでまた、負けられない理由が一つ増えてしまった。まぁもとより負ける気は一切ないのだが、目標があった方が頑張れる。
これから毎週日曜に投稿するようにします。




