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薔薇乙・悪役令息の悩み  作者: 鳴桜氷華
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第八妾妃、ロアナ

「婚約者から第八妾妃候補へと落とす事とする!」

 そうデルシータはドヤ顔で俺を指さした。


「デルシータ王子、私に第八妾妃になれ、と本気で言ってるんですか?」


「ああそうだ。王太子妃は男爵令息のピットとする。こうすればお前はピットより

下の身分となるため、お前がピットに手を出す事は無くなるだろう?」


 フロアの中で周りがざわついた。


 王太子妃に下級貴族の令息、というとんでもない話も、ロアナが男爵令息を害す

る恐れがあるためという、言い訳にすらならない事を言い放つ。


 デルシータ第一王子は、そこまで優秀な人物ではない。

 学園の成績は俺の方が全て良かった。


 前世知識チート、といえばあるかもしれない。だがそれは前世の勉強時間の差でし

かない。

 この世界は知識が遅れていたり、四則演算を大学でやるというトンデモな状態では

ない。前世の日本とほぼ同様な教育内容だ。

 なので数学等の理系科目は前世に学んだ内容がそのまま応用できた。


 識字率は限りなく百パーセントに近く、四つの国に面した環境であるため、四つの

国の言葉が必須科目となっている。

 高校で必須だった日本語と英語の知識が邪魔をして、言葉は覚えづらかった事もあ

り、前世知識チートと呼べる程度の恩恵は無かったと思う。


 デルシータ第一王子の成績は上位貴族としては平凡であった。

 デルシータの弟である第二王子の成績は、一学年下の首席であり、第三王子は三学

年下の首席である。兄弟全てが学年首席なのに、デルシータは上位貴族の中くらいだ。

 

 当然の事ながら第二王子や第三王子を王にしたいという派閥は存在する。


 BLゲー『バレ乙』の中では、婚約者のロアナが上位貴族とは思えない底辺の成績で

俺に教えるためにデルシータ王子が自分の勉強をする時間を取れない、という扱いに

なっていた。


 ロアナが居なければ、自分の勉強をして優秀な成績になれるだろう。という推定優

秀評価だったため、第二王子や第三王子を持ち上げる派閥は存在しなかった。


 え?俺の成績……?勿論首席ですが何か?

 前世の俺は片手の指までの上位大学へ全員が進学していた高校の生徒だったからな。


 アホな(ロアナ)の面倒を見ているから、という言い訳ができないデルシータ王

子が可哀想。


 そういう第二王子や第三王子を持ち上げようとしている派閥を抑えてデルシータが

王子になるためには、学園首席の成績である婚約者の(ロアナ)のサポートと公爵家

の後ろ盾は手放せない。


 デルシータ王子にしては良く考えているじゃないか。

 俺と公爵家の後ろ盾は手放さず飼い殺し、か。


 罪を認めてしまった俺は、王子の決定を断る事はできない。

 ゲームのシナリオを信じて考える事を放棄していた俺のミスだ。


「仰せのままに……。本日は気分が優れないため、ここで失礼させて頂きます」

 俺は俯き了承した。作戦を考えなければ。


 城から出た中庭に、見覚えのある愛くるしい美少年が立っていた。男爵令息

ピットだ。


「ロアナ様、いや……。ロアナ、僕を可愛がってくれたお礼がしたいんだけどね」

 愛くるしい美少年は、顔を歪め俺を睨み付けた。

 美少女にも見えるピットの顔も、上位貴族であり嫌がらせをしていた俺が下の立

場になった事で愉悦と恨みからおぞましく醜悪に見えた。


「ロアナは色々と僕に嫌がらせしてくれたよね。ああ、最近だと靴を隠されたっけ」

 シナリオ進行上に必要だった靴を隠す嫌がらせの事だろう。

「それがどうかしたか?」

 ピットの知人に隠した場所をすぐに告げたため、困ってはないはずだが、と俺は

訝しげにピットを睨み付けた。


「僕が靴なら、僕より下の立場の君は服かな?」

 そう言ってピットが合図をすると、数人のガラの悪そうな男達が現れる。


「っ!?や、やめろ」


「辞めなくていい。王子の後ろ盾は僕にあるから」


 バレ乙の受けキャラである俺も、少女のような顔立ちをしている。

 特に女子が存在しないこの世界の貴族階級にとって、【やおい穴】付きの俺は前世

で言うと女性のような立場にあたる。


 女性の服を剥ぎ取るような卑劣な行為をさせ、愉悦の表情を浮かべるピットを俺は

睨み付けた。


 足を開かれ、俺は屈辱でピットを睨み付ける。

「いいねえ一。僕みたいな可愛い顔じゃなくて、ロアナは美人って感じなんだよな」

 俺の足を開かせ、秘すべき身体の隅々までを撫でまわし、撮影した後で、ピットに

付き添っていた男達に俺を放すように指示する。


 写真をちらつかせ、ピットはいやらしく笑った。

「僕はデルシータ王子にされるのも好きだけど、ロアナみたいな美人にするのも好

きなんだよね。虐められてたけど、実は少し興奮を覚えてたりもしたんだよね」

 上気した頬でピットは俺を笑った。


「ロアナが正式に第七妾妃となったら僕も可愛がってあげるよ、王子と王妃両方から

寵愛を受けられるロアナは幸せ物だね」


 ピットが去った後俺は服を着て、ロアナの表情を思い出して嘔吐した。

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