終章(第2部・完)
第2部 完結です
終章
ガルド星に再び、銀河種族の代表達が集まっていた。地球から派遣された代表団も参加している。
今、彼らは、銀河種族間の相互理解と発展、そして平和の為に、各国代表者達によって運営される大きな組織を発足させようとしていた。
バリヌールを失い、多くの命の犠牲を払ったこの事件を深く痛み、人々はそうした組織の必要性を痛感したのである。
それが、無事産声を上げ、しっかり歩き始めるまでには、まだ暫く時間が掛かるだろう。
何しろ、例えそれが銀河内のことであっても、如何にも、宇宙は広いのだから。
予想を遥かに超える困難も多々あるに違いない。
しかし、それでも、銀河の諸世界は立ち上がり、遠大な目標に向かって歩み始めたのだ。いつか、全ての種族がともに手を携えて生きることができる世界を夢見て。
***
ライルは作業の終わったデータをサーババンクに記録すると、部屋の窓辺に立った。見上げる目に澄んだ大気にきらめく陽光が飛び込む。
宇宙士官アメリカ地区アカデミー――今は、アメリカNASA管轄から地球政府直属宇宙防衛軍の管轄化に入っていた。しかし、たたずまいも毎日の訓練も、そんなことには変わりなく日々続けられている。
彼の研究室がある建物の上にも、深まった秋の色が高く抜けるように青々と拡がっていた。鳥の影が窓を掠めて過ぎていく。モズが甲高く鳴いていた。
彼は体がショックから回復してくると、銀河の知人達に何の挨拶もしないで、真っ直ぐ地球に帰ってきてしまったのだ。背負い込んだ重責が彼を重く沈ませていた。
今は誰とも語り合いたくない。そのうち、また、宇宙に帰りたくなる時もくるだろう。だが、その時まで、暫く地上で静かにしていたかった。
新しく第一歩を踏み出し始めている地球政府は、まだ、様々な解決すべき問題を抱えていた。けれども賢明にも、バリヌール人ライル・フォンベルト・リザヌールに関しては、触れずにそっと自由にしておいた。
もちろん科学技術界は、驚異の知識を早く手に入れたいと矢の催促でひしめいていたが、ライルはそれらをあっさりと無視することでかわしていた。
そして、相も変わらずアカデミーと家――彼はアパートを出て、政府から与えられた研究室付きの一戸建ての家に移っていた――の間を往復している。
そこへ、毎日のようにミーナが世話を焼きに通ってくる。チャーリィや勇も、酒瓶片手に遠慮も無く押しかけてきた。
以前ならうるさいなと迷惑がっていただろうに、この頃は彼らの訪問をどうやら楽しんでいるらしい事に気づいて、ライルは不思議に思っている。
だが、今、窓から空を見上げている彼の眼はそうした日々のことを忘れ、遥か宇宙の深淵を見つめていた。あれ以来、彼の心に繰り返し続ける疑問。
あの意志の存在は何なのか? 何処から生じてきたものか?
正に対し負があるように、膨張する宇宙の反極に収縮する宇宙があるように、生命の存在に対し、それを否定する存在があるのだろうか?
宇宙は全てに対し、常にそれに反する対極を用意している。宇宙そのものが、葛藤する精神なのだろうか?
それは、生命が生まれた故に、それを刈り取る存在が生まれたということ。
『至上者』を支配したそれは排除できたが、命がある限り、また何処かでそれは芽吹き続けるのだろうか?
その小さな一片は、各生命の中で、今も芽を出しているのかもしれない。
その一つによって、バリヌールは滅ぼされたのだ。抵抗も無く、あっけなく。
なんと、脆く、弱々しい種族なのか。
自らを守る意志も本能もない種族。それは既に退化と言っていいのではないか……。
青空の果ての遠く彼方に、彼は今は無き故郷を見つめた。
お読みいただいてありがとうございます
第2部完結しました
次回からは、第3部 異次元界は侵略者でいっぱい をお届けします
現在、頑張って書いております>< 今後もどうぞ、よろしく(^▽^)




