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56.リテラシー&デリカシー

*****


 アキラっちはもちろんのこと、さっちんとみゆきちとを含めた寄り合いみたいなもん。

 そないな感じなんやけど――さっちんは今日もアキラっちの後ろから、バインバインを惜しげもなく揉んでやる。

 到底、手におさまらんくらいデカい胸はある意味、罪や。

 アキラっちはなんとか喘ぎ声を漏らさへんように耐えてる印象、ほっぺ、赤らめてな。


 ったく、愛らしいなぁ。


 今日は動画撮るんやめたった。

 揉みしだいてやろうってんなら、オレかていつでも可能やさかいな。


 さっちんは定位置に戻り。

 解放されたアキラっちはホッとしたみたいに「ふぅ」って深々と吐息ついて。


 みゆきちが唐突に、「最近、ここに来ることについて、カレシはあんまり快く思ってないみたい」とか言うた。

 それは大問題や。

 オレはみゆきちとの関係――それはある程度、親密なもんかもしれへんけど――そこにはまったく他意はないんやさかいな。


「せやったらみゆきち、オレが誘っても断れや。オレはそれでええさかい」

「でも、断るって、なんだか悪いでしょー? 愛想無しでしょー?」


 ヘンなところで気ぃ遣いやるんや、きゃぴきゃぴのくせに、みゆきちは。


「せやけどなぁ――」

「っていうか、そんなことすら許容できないんだったら、器が小さいと思うよぅ」


 うーん、それは正しい物の見方やなぁ。


「もう別れようかなって」

「えっ」びっくらこいた。「なにはともあれ、みゆきち、ラブラブや言うてたやんか」

「男なんていくらでもいるでしょ? 人類のおよそ半分」

「それはそうかもしれへんけど」

「リテラシーとかデリカシーがない男に用はないの。だってそれって自分からアホさを謳ってるってことだから」


 みゆきちってばみゆきちらしくもなく、なんともキツいことを言うてくれた。


「後悔後悔。なんであんな奴に抱かれたんだろう。減るもんじゃないって思ってたけど、自尊心が削がれたよぅ」


 オレはふんふんって頷いたんやけど、アキラっちにいたってはコーヒー吐きそうになったみたいや。

 抱くとか抱かへんとか、そのへんについて敏感なアキラっちらしいリアクションやな。


「みゆきちよ、私、前から言ってたじゃん。あんな奴、くだらないって」ちゅうたのはさっちんや。

「でもさ、ところどころで、ほんとうにイイ男だったんだよ?」

「ところどころでっていうのが大問題じゃん。常にイイ男じゃないといろいろ委ねてやる理由にはならないよ」

「むぅぅ……さっちんが言うならそうなのかなぁ」

「イクミくんはどう思う?」


 いきなり話、振られたわけやけど、さっちんが求めてる答えはわかる気がした。


「さっちんの言い分はわかる。せやけど、みゆきちの一生懸命さっちゅうか、健気さは否定できへんな」


 みゆきちが横から抱きついてきた、「やっぱりイクミくんはイイヤツだよぅ」っちゅうことらしい。


「でもさ、みゆきち、別れるんでしょ?」

「だから、うん、そのつもり」

「時間、無駄にしたね」

「さっちんはひどいよぅ」


 それはそのとおり。

 ちっとは慰めてやれや。


 それにしても――。

 さっちんとみゆきちがユニゾンした。


「アキラはいいよね」とか、さっちん。「イクミくんは超が付く優良物件じゃん? そんなのを捕まえられたとか」

「ホント、そうだよね」とか、みゆきち。「イクミくんがアキラちゃんにぞっこんじゃなかったら、私は絶対に狙ってたよぅ」


 アキラっちは目を白黒させて。

 べべべっ、べつにあたしが望んだわけじゃ――とか、激しくどもりまくって。


 否定のしようがないな。

 まるっきり、一方的に、オレのほうから惚れて、オレのほうからアプローチしたんやさかい。


「まあ、コイバナばっかじゃ疲れるよね。そこでだ、イクミくん」

「なんやろうか、さっちん閣下」

「おなかすいたから晩御飯作ってよ」


 さっちんってば、えっらい不躾で、とことん遠慮ないな。


 オレは腰を上げつつ、「パスタくらいしかあらへんよ?」って口利いた。


 パスタ大好き!

 さっちんとみゆきちが、またユニゾった。



*****


 妬けたぞ、正直。

 おまえはさっちんとみゆきちとの距離が近すぎるぞ。

 アキラっちにそないなふうに文句言われた。


「いや、でも、べつになびいたりはしてへんやろ?」

「それでもえっと……ジェラシーだっ」


 ジェラシーか。

 プライドの高いアキラっちからそないな言葉を聞かされるってな。


「抱き締めたろか?」


 もはや二人きりになった空間、オレはいつでもそうできる立場にある。


「いいいっ、いい、断るっ。おまえはあたしに触り始めるとキリがないからなっ」


 それは事実。


「しっ、質問だ、イクミ」

「おぉ、唐突になんやろ?」

「一応かもしれないけど、おまえは小説家じゃんか? SNSでそれなりに発信もしてる。アンチはいないのか?」


 オレは左方にこてんって首傾げた。


「そんなんオレの『X』見ればわかるやろ?」

「ななっ、なんだか見れないんだ。怖くって」


 なんや優しいな。

 とにかくそないなふうに思わされた。


「アンチの方はたくさんおるけど、気にしたことって、正直ないなぁ」

「アンチがいたら、あたしは正直、凹むぞ?」

「バインバインやのにか?」

「バ、バインバインは関係ないっ」

「寛容性って言葉があるやろ?」

「あるけど、それがどうかしたか?」

「オレはその権化ってことや。いちいち目くじら立ててたら心臓、擦り減らしてまうわぁ」


 アキラっちはビックリしたみたいに目ぇ丸くしてから納得したように、「まあ、そりゃそうだよな……」――。


「不寛容なニンゲンすら認めるのがホンマの寛容やろ? あるいは多様性やろ? そのへん、アホどもはわかってへん」

「おおぉ、おぃっ、そんなの言ったら輪をかけてツッコミ入れられるぞ? 燃料の投下だぞ?」

「オレはオレやさかいな。どうやかてええわ」

「そんなんじゃあ、いつか凹むことになると思うけど……」

「そんときゃアキラっちに相談するわ。せいぜい慰めたってくれや」

「そ、それだってやぶさかじゃないけど……」


 アキラっちは照れくさそうに頬を桃色に染めやった。


「アキラっち」

「ななっ、なんだよ、またやぶからぼうに」

「ちょいこっち来いや」

「な、なんだよ、偉そうに」

「まあ、来いってば」

「おまえのほうから来いって話だ」


 そりゃまあ、ごもっとも。

 オレはすっくって立ち上がると、ちゃぶ台を回り込んで、アキラっちの後ろで腰下ろした。


「ダダ、ダメだぞ?」

「何があかんねんな?」

「せっ、セックス、だ――」

「オレがバックで突っ込むと?」

「ばばばっ、馬鹿野郎! そんなんじゃないやいっ!!」

「せーへんよ。いつでもできるさかいな」言うて、オレは後ろからおなかのあたりを抱き締めて、それから両腕を上げた。


 アキラっちの胸を持ち上げる格好――。


「ややっ、やめろぉ、めっちゃ恥ずかしいだろうがぁぁ」

「ホンマにやめてええのん?」

「じ、じつはそうでもないんだけど……」

「重いなぁ、アキラっちのバインバインは」

「やめろぉっ、いちいちそういうことを言うなぁぁっ」


 オレは「ベッド行く?」って訊いた。

 そったらアキラっちは「いつでもできるって言ったろ……?」――。


 いっそう、後ろから回した両腕でバインバインを持ち上げたる。


「うううぅぅっ、ううぅっ――っ」

「なんや? どないした?」

「お、重いだろ?」

「それがエロいんや」

「ししっ、死ねっ、死んでしまえっ」


 とか言いつつも、アキラっちは「はぁはぁ」とか荒い息遣いで、オレに身体預けてきた。


 キスしたったら、「もういいよ。好きにしてくれ……」とか言いやった。


 楽しいな。

 恋愛ってのは、ホンマに楽しいもんや。


 オレは恵まれた。

 七尾アキラっちゅう女のコに恵まれた。


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