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Spring Storm  作者: 五円玉
12/21

parallel story -01

『お父さんとお母さんはちょっくら、富士の樹海まで夜逃げしてきます。探さないでね春吉(*^_^*)』


「…………」


ある春の朝、俺がベッドから起床し、台所へ行ったら……


上記のような手紙が机の上に置いてあった。


「…………は?」


……俺、寝ぼけてんのかな?

これ幻覚?


俺は寝ぼけている頭をゴツンっ!

ちょっとグーで殴ってから、再度その手紙を見てみる。


……そこには、やっぱりその手紙が。


「……意味分からん」


さっそく意味不明な展開だ。










俺の名前は木山 春吉。

今年で高校2年生の16歳。

イエーイ青春。


現在俺は、机の上にあった両親からの置き手紙とにらめっこ中。


「……夜逃げ?」


展開が急すぎる。

ちょっと待とうぜ俺!


とりあえず冷蔵庫から牛乳出して、ゴクッと一口。


そして棚からパンを一つ取り、パクり。


うん普通の朝だ。


しかし……




俺はパンを食べながら、家の中を捜索。


二階へ行ったり、トイレ行ったり、物置小屋や押し入れ見たり。


途中階段に足ぶつけてもがき苦しんだ場面は省略で。


「……マジかよ」


そして俺は気付いた。


……昨日までいた両親の姿が、見当たらねぇ!


どこにも見当たらない!


「嘘だろ……何このパターン!?」


物語第一話にして、両親まさかの夜逃げ!


「ちょ、ちょっと待とう! 一旦落ち着こう俺!!」






と、とりあえず居間へ来た俺。

はい一旦座って。


……さっき家の中を回った時、両親の荷物や私物は消えていた。


そして、両親の姿はない。


「……はぁ」


ちょっと不安だ。


これ、どっきりとかじゃないよね?


「……マジでどこ行ったんだ、あの二人?」


手紙には富士の樹海と書かれていたな、夜逃げ先。


……え?


「富士の樹海?」


俺はもう一度手紙を凝視。


……行き先、富士の樹海と書かれていた。




不謹慎だけど、俺の富士の樹海イメージは……


自殺の名所


「うっそぉぉ!?」


まさかの!?

俺、ちょっと跳び跳ねた。


ちょ、ちょっと待てよ!!


富士の樹海に夜逃げてアンタ……変なフラグ立ってないか!?


マジでか、マジなのかオイ!!


ちょっと焦る。


「くそっ……ま、まさか本当に……」


なんだよ!!

第一話から重すぎだろコレっ!!


「……そういや」


焦っていた俺、ちょっと昨日の事を思い出す。









ウチは両親の中は微妙だったと思う。


気弱な父に、気の強い母。

亭主関白って言葉はウチには無い。


たまに喧嘩したり、言い争っていたりしている所を、度々目撃した事もあったし。




息子は俺だけ。

一人っ子や。


まぁ、気ままに暮らして早16年。


たまにそんな両親の仲介役なんかをしつつ、普通に生きて来たのであって。


本当に至って普通で。




しかし昨日、俺は見てしまったのだ。


たまたま机の上にあった1枚の紙。


白い紙に黒インクの文字。


そこには、返済って文字が書かれていた。










「……もしや」


昨日は何も気に止めていなかったが、よくよく考えると……


返済と書かれた紙。


……借金?




ちなみに息子の俺は何も知らんぞ。


借金なんて聞いてないし!!


「……これは、きっと俺の思い違いだ」




きっとこれ、両親はどこかに旅行にでも行ったんだ!


きっとそうだ!


多分ジョークとかで夜逃げとか書いたんだ!


そうだよきっと!


じゃないとやってやれないよこんなのッ!!


「……はぁ」










結局、俺はこう言う結論にたどり着いた。


両親は今、きっと旅行へ行っている(多分……いやきっと)


そしてその事をジョークで(ここ重要)で夜逃げと書いた。


富士の樹海も真っ赤なウソ(じゃないとマジやべぇよ!!)


つまり、そういう事だ。


「……全く、なんて両親なんだ」


俺は制服に着替えながら頭をポリポリ。


手紙には旅館のおばあちゃん家に行けとか、そんな事は書いて無かったから普通に学校へ行かないといけない。


ってかウチのばあちゃん家、普通の農家だし。

旅館じゃねぇし。


「……まぁ、生活費はバイトで何とかなるか」


そう呟きながら、俺は身支度を終える。


時刻は……午前7時50分過ぎ。


……え?


俺はもう一度時計をチラッ。


時刻は……


「50分!?」


やばい!!


ち、遅刻だッ!!

電車がッ!!


俺は大急ぎでカバンを持ち、靴をはき、家を出た。




空は晴れて、雲一つない青空。


俺はとにかく、走るしか無かった。

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