parallel story -02
parallelシリーズの説明は、8月6日投稿の活動報告ページを見て下さい。
今回は第2話です。
なんか3人のヒロインの中で、楓は何故かあんまり評判が良くないんですよね。
何故だろう?
「なぁ春吉、暇なら一緒に帰ろうぜ!」
「ん、ああ、別にいいぞ」
葉城高校、放課後。
自分のクラスで波動拳大会に勤しんでいた俺に話を掛けてきたのは沢那 楓。
モロ体育会系のボーイッシュ少女だ。
「お、春吉。お前自ら大魔人に付いて行くとは……地獄行きになっても知らんぞ?」
こう言ってくるのはマイバカ友の重原権三朗くん。
葉城高校顔面偏差値の底辺だ。
「大丈夫だよ、今は機嫌いいみたいだし」
裏を返せば、機嫌悪い時には大魔人化すると言う意味。
だから機嫌悪い時の楓には近づくべからず。
「何してんだ春吉? 早く行くぞ!」
廊下から聞こえる楓の声。
「ああ、今行く」
俺は波動拳大会の勇士達に別れを告げ、いそいそと廊下へ。
楓とは幼稚園の頃からの仲だ。
実家が柔道場という環境で育った楓は、小さい時から喧嘩っぱやい性格。
見た目も黒髪ショート+日焼け肌+低身長って事で、結構やんちゃ系
まぁ、黙ってりゃそこそこ可愛いんだが。
「最近さ、部活の連中が軟弱でさ、ちっともやる気ってモンを感じないんだよなぁ」
学校からの帰り道。
空には既に沈み掛けた太陽が輝いている。
そんな中、楓は何やら部活の事を話し出す。
ちなみに楓は柔道部所属。
「軟弱って……そりゃただ単にお前が強すぎなだけじゃ……」
幼稚園の時から楓の【幻の右】を喰らい続けている俺には分かる。
コイツが強すぎて、絶対仲間が付いていけてないんだ。
絶対そうだ。
「強いって……そんな事ないよ。だってまだ部長には勝てないし」
「じゃあ何? 部長以外には全員に勝ったの? それを強いって言うんだよ沢那くん」
「そうかなぁ」
「そうじゃなきゃ何なんだよ、お前に負けたヤツが全員ザコみたいになるじゃねぇか」
ちなみにだか、葉城の柔道部は結構強い。
葉城高校運動部3強の1つでもあるし。
残りの2つはテニス部と弓道部だったりする。
「でも……」
「何だお前、そんな実力あんのに自信はねぇのか? なんつー贅沢なヤツっ!!」
「う、うるせぇな!」
なんだかなぁ。
コイツは基本真っ直ぐな人間で、そんなにくよくよする事が少ないヤツだ。
むしろ真っ直ぐ過ぎて直視出来ない事も多々。
けど、たまにだけどコイツにも悩む時があって。
その時のコイツの顔は、本当女の子みたいな顔して……なんか、ほってはおけなくなるっつーか、何つーか……。
「……アタシさ、もしかしたら次の大会、大将のポジションやるかもしんないんだ」
「……は、大将?」
突然、ボソッと呟くように言った楓。
その顔はまさに、不安に怯える女の子の顔だった。
「何て言うか、まだアタシには大将は早いって言うか、向いてないって言うか……」
いつもは見せない、ウジウジした楓。
ちなみにいつもの楓は、
『春吉! 何か腹減ったから食べ物ちょーだい!!』
『食べ物!? ってか今俺何も持ってないんだけど……』
『えー! お腹減ったんだけど!』
『知るかっ! ……あ、そういや権三朗がスルメイカ持ってたような……』
『え、マジで? あ、権三朗いた! おーい権三朗ぉ!!』
『……女子高生がスルメイカに引き寄せられるって、どうなんだよ』
こんな感じ。
基本ウジウジしないで、周りの事も気にしないで(つまり空気読まないで)、本当に真っ直ぐ我を行くって感じなのに。
今日の楓にいつもの覇気なし。
「やっぱりさ、大会とかの大将って部長とかがやるべきだよね」
「……俺は、お前でもいいと思うけどな」
実際強いんだし。
「でもアタシ……」
弱気な楓の瞳は、まるでビー玉みたい。
何か女子っぽいって言うか。
まぁ実際女子なんだけど。
「……よし」
俺は何か大将っていうプレッシャー? に負けかけている楓の覇気を取り戻すべく、作戦を立てる。
コイツがくよくよするなんてガラじゃねぇ。
コイツにはいつでもウザイくらいの真っ直ぐでいてもらわないと!
そうじゃないと、何かこっちが気持ち悪い!
「なぁ楓」
「……何?」
「今からケーキでも食べに行かね?」
「……ケーキ?」
俺は道路の向かい側にあるケーキショップを指差す。
「ほら、最近改装したっていう、あの店だよ」
あの店は以前、とんでもなく床の凸凹が多いっていう理由で苦情が殺到し、それだけでまさかの閉店間際まで追い込まれたという伝説の店。
最近になって新たに改装し、凸凹がなくなり歩きやすくなったと評判。
ちなみにケーキの味は普通らしい(美羽談)。
「でも、今ケーキって気分じゃ……」
「スルメイカに反応してたヤツが何言ってんだ! ほら、ちょっとならおごってやるから、行くぞ!」
くよくよした時や、落ち込んだ時は甘いモノ食べて元気出す!
これ鉄則!
「…………」
相変わらず俯き気味の楓。
「ほらっ!」
俺はそんな楓の腕を取り、ちょい強引に店の方へ歩き出す。
「うわっ、ちょ、春吉っ!!」
「だーいじょうぶ、俺の財布を信じなさい!」
「そ、そうじゃなくて……」
「だーいじょうぶ、店内の凸凹はもうないって美羽が言ってたし!」
「……そうじゃ、なくて……その」
「だーいじょうぶ、お前に大将は出来るよ」
「……えっ」
その時、楓は顔を上げた。
「大丈夫だ、俺が保証する。お前は強い! だって幼稚園時代、この俺を唯一泣かせた女だしな!!」
相変わらず楓を引っ張っている俺。
視線は前。
「それに、お前は部活サボってないし、家でも柔道やってんだろ? そんなお前が大将だなんて、ピッタしすぎるだろ!」
「……でも」
「くよくよすんな、自分の力を信じろ!」
俺は力強く言った。
「お前が大将だって、顧問や部長が決めたんだろ? つまりそれは、顧問や部長がお前の力を信じてるって事なんだよ」
「…………」
「なのに、当の本人が自分を信じなくてどうすんだよ。せっかく大将って役割を与えて貰えたんだから、精一杯大将やって、頑張って来い!」
「春吉……」
「自分を信じろ、楓!」
俺、良いこと言ったんじゃね?
なんか主人公っぽかった?
「……春吉」
「ん?」
俺が振り返ると、そこには後ろを見ている楓の姿が……って、
「春吉、もうケーキ屋過ぎてるんだけど」
「……あ」
行くはずだったケーキ屋、既に遥か後ろに見える……。
か、語りに夢中でケーキ屋見逃したッ!!
は、ははは恥ずかしいぃ〜!!
ってか俺のバカっ!!
こんなの……こんなの主人公としてダメだぁっ!!
うがあああぁぁぁぁぁぁっ!!
って嘆いていると。
「……なんかふっきれた」
ボソッと、楓が呟いた。
「……春吉、お前ケーキおごってくれるんだよな?」
もう、この時の楓の顔にはくよくよなんて無かった。
「あ、ああ……」
「だったら山盛り食ってやる!」
「山盛り……って、え?」
もう既にいつものニコニコ笑顔に戻っていた楓。
今は逆にその笑顔が怖い。
山盛りって何だよ?
「さぁ〜て、腹いっぱい食うぞぉ!」
そう言って、ケーキショップへダッシュする楓……ってか、
「ちょ、ちょっと待て! 俺は少しおごるって言っただけで、全部はおごらな……」
「春吉、ゴチ!」
そう言って、あっという間に店内へ入っていく楓。
「だああああぁぁぁぁぁっ!!」
俺は財布の中を思い出す。
確か、英世が3枚……
……ヤバい。
「か、楓! 待ってぇ〜!!」
こうして、今日俺の財布から英世3人が消えるのでした。




