王都への道
王都行きの馬車は、朝焼けと共に出た。
サイファの門を抜ける。
振り返ると、街が小さく見える。
「四日か」
俺が呟くと、向かいに座るアクセルが窓の外を見たまま答える。
「長くはない」
長いだろ。
ここちゃんは俺の膝。
むぎは胸ポケット。
ノアは背筋を伸ばして座っている。
無駄に姿勢がいい。
⸻
半日ほど走る。
森が途切れ、平原に出る。
街道は広い。
王国の中心へ続く道だ。
「中央大陸は広い」
ノアが外を見ながら言う。
「精霊大陸より人の密度が高い」
「向こうは森ばっかりか?」
「ほぼ」
即答。
アクセルが鼻を鳴らす。
「森は落ち着く」
ノアが小さくうなずく。
価値観が合ってるのが地味に怖い。
⸻
馬車が揺れる。
ここちゃんがぴょん、と跳ねる。
ノアの膝へ。
またか。
ノア、無言。
だが、拒否しない。
自然に手が動く。
そっと撫でる。
ほんの少し口角があがる。
「……毛並みが整っている」
言い訳の声。
俺は笑う。
「そこ評価ポイントか?」
ノアは目を逸らす。
「観察だ」
むぎがキュ、と鳴く。
からかい過ぎたようだ。
⸻
夕方。
野営。
騎士団の護衛が周囲を固める。
火を囲む。
俺は簡単な煮込みを作る。
アクセルが肉を焼く。
ノアは黙って薪を組む。
妙に自然だ。
「巻き込まれただけなのに、王都か」
俺が火を見ながら言う。
アクセルが肩をすくめる。
「現場にいた。それだけで十分だ」
ノアが静かに言う。
「転移は偶然ではない」
一瞬だけ空気が変わる。
俺は顔を上げる。
「断定か?」
ノアが答える。
「推測だ」
火がぱち、と弾ける。
ここちゃんが丸くなる。
むぎが胸ポケットで静かになる。
夜は静かだ。
火のはぜる音が、やけに大きく聞こえた。




