72話 物欲センサー
前後編にするつもりが思った以上に長くなったのでもう1話。
「何故だああああああ!?」
迷宮内に自分の絶叫が響き渡る。
菱刈ダンジョン下層、地下17階。未だアイアンゴーレムとカッパーゴーレムの遭遇なし。遭遇するのはストーンゴーレムに竜牙兵、そして今しがた倒したミスリルゴーレム。
:草
:草
:草
:普通なら喜びそうなもんなんだがなぁw
:竜牙兵って強さ的にはそこそこなのにドロップアイテムが美味しいからなぁ。
:しかもスコおじ、ミスリルゴーレムに3回もエンカウントしとる。
:一般探索者「解せぬ」
:高価なドロップアイテムなのに外れとか。
:けどミスリルゴーレムとか高適性でも倒すどころか返り討ちにあうからな。
:ハイリスクハイリターンよな。
:しかしそれを平然と倒して、しかもミスリルのインゴットを手に入れとる。
:けど今のスコおじには無用の長物w
「まあ、なんだ。こういう時もあるさ」
「パパ、きっとそのうち出てくるのです! 気を落とす事はないのです!」
「はぁ〜、マンドラちゃんはええ娘やなあ」
マンドラちゃんに慰められる。荒んだ自分の心が癒される。
:何故関西弁www
:娘に慰められる父親の構図w
:しかしこうも出てこないのはある意味異常
:え、けど俺昨日そこに潜ったけど普通に出てきたぞ。
:なんならワイ、今この迷宮の中層にいるけどアイアンゴーレム何体か遭遇してるぞ。
:つまり物欲センサーが働いて欲しい(魔)物が出ない、と。
:草
:草
:¥50000
おハーブですわ
:草生やす時も高額スパチャ投げる変態ネキに草
コメントに生えまくる草。ここまで草が生えるのも珍しい。
それにしても本当に出てこない。なんでミスリルゴーレムと竜牙兵ばかり出てくるのか。
ストーンゴーレムもよく出るけど普通に外れじゃねえか。一番出てほしくない。にも関わらずかなり遭遇している。そもそもドロップアイテムの石とかなんに使うんだ……
あとコメントでこの迷宮でアイアンゴーレム倒して鉄のインゴット手に入れてる人がいるみたいだけど、交換してくれないかな。
「今潜ってる方で鉄のインゴット持ってる方、自分の持ってる素材と交換しません?」
∶無茶言うな
∶ミスリルのインゴットの値段知ってて言ってる?
∶同じ重さで迷宮産の鉄の100倍だっけ?
∶竜の牙は20倍。
∶そんなに持ってねーよw
デスヨネー。
「取り敢えず隅々まで探しましょう」
「だな」
嘆いても仕方がないので探索を再開する。
坑道は灯りは要らないが全体的に暗い。魔物が近づけば解るがなんの魔物かは近くまで来ないと解らない。
歩くこと凡そ10分。何かが近づくのを確認する。大きさ、シルエットからしてゴーレムだ。少なくとも竜牙兵ではない。
「今度こそアイアンゴーレム来てくれよ……」
エンカウントしたのは。
∶ク リ ス タ ル ゴ ー レ ム www
∶落とすアイテムはそこそこ良いんだけどなぁ。
∶割が合わないw
∶水晶って微妙に使い途ないよなw
∶硬くて強いからこの迷宮で一番会いたくない魔物w
∶スコおじ持ってるなあwww
「なんでだよ!?」
***
ゴーレムの倒し方は大きく分けて3つ。
1つ目は普通にぶち壊す。マッドマンやサンドゴーレムといった物理が効きにくいのもいるが。
2つ目はコアの破壊。以前倒したダストゴーレムがコレ。とは言え、そのコアを見つけるのが至難で、特に硬いゴーレムのコアをピンポイントで破壊するのは現実的にかなり難しい。まあサンドゴーレムやマッドマンなんかはコアを砕く方が早いが。
そして3つ目は何処かに掘られてる、或いは書かれている『EMETH』の頭文字を削る事。
まあ何が言いたいかと言うと。
クリスタルゴーレムは3つ目の方法で倒した。
当たり前だが自前のスコップで壊す事は勿論、削る事すら出来ない。借りているミスリルメイスで強引に削った。
「あー、割に合わねー」
∶スコおじやさぐれてて草
∶¥50000
やさぐれてるスコおじ様素敵ですわ!
∶ブレない変態ネキも草
今までの、例えば火遠理命と比べれば遥かに弱い。只々硬かった。
そう言えば伊倉さんが関節技を駆使して倒したという逸話がある。いやどうやって関節技極めたのというツッコミがあったが、神野君に聞いてみたところ、実話らしい。やべーなあの人。
それはさておきドロップアイテムは当然水晶。加工し辛く、鍛冶スキルで加工なんか出来ないからあまり嬉しくない素材だ。それ故割が合わない。
「ま、何も落とさないよりはマシだろ」
「確かにゴーレム系の魔物は魔石以外も必ず落としますけどね」
ゴーレム系の魔物が美味しいのはコレが所以。パペットゴーレムはその形に準じた物、例えばぬいぐるみだと綿を落とす。マッドマンは泥を落とすが美容に良いそうだ。サンドゴーレムの砂は建築素材に使える。ただ、ストーンゴーレムとフレッシュゴーレムのドロップアイテムは何に使うんだ?
「中村さん、もうあまり時間がない」
と神野君が言うので時計を確認してみると既に午後5時を回っている。
配信を始めたのが午前9時だから既に8時間が経過している。
ライブ配信の最大時間は10時間。食事とトイレの時はマンドラちゃんが視聴者と会話している為、中断していない。それにあまり長くいると今度は帰りが遅くなり、最悪高速道路のSAで車中泊だ。
別に配信を終わらせても協会に記録は残るからずっと潜っててもいいのだが……
「少し駆け足で行きましょう」
「了解だ」
駆け足と言ってもそのスピードは某世界最速陸上選手並みだ。
それでも遭遇するゴーレムは見逃さず、その都度倒していくのだが……やはり目当てのゴーレムは出ない。
そして、階を降りてすぐ。
「人影?」
通路の真ん中に佇む人影。
近づくとメイド服を着た女性が1人。はっきりいって違和感しかない。
立ち止まり警戒するも攻撃してくる様子はない。
「中村さん、アンタ何体変異種と遭遇してんだよ。コイツは自動人形、ゴーレムの変異種だ」
「これが自動人形。攻撃してきませんね」
「こちらが攻撃してこない限り襲ってこねえよ」
「そうですか、なら無視したほうが良いですね」
と自動人形の脇を通り過ぎようとした時。
「中村さん、これは俺からの提案なんだが、テイムしていかないか」
「え? なんで?」
「自動人形は役に立つ。強さで言えば下層に出る魔物相当。だがコイツの真価が発揮するのは迷宮の外、地上だ」
神野君が言うには、自動人形は地上でも迷宮内と同等の力を発揮するという。つまり護衛にはうってつけだ。
因みに七津見さんも自動人形をテイムしているそうだ。それも2体。
となれば、テイムしない手はない。
「一緒に来るか?」
自動人形に手を伸ばす。自動人形は頷くが動こうとしない。
「あー、中村さん。自動人形に関してはテイムする条件が判明しててな。自動人形の身体を地面に着けずに地上まで連れて行く事、それが条件だ」
つまり背負うなりなんなりして迷宮の外に出なければならないという事か。魔物と言えど生命体じゃないし、マジックバッグに入れていけば……
「あ、収納とかマジックバッグとかズルはできないからな」
先手を取られた。
この章、今のところゆるゆる展開ですが、ヤバい奴やヤバい団体が出てきます。そしてアイツらはどん底に落ちますw
★とブクマと感想が静かに眠る海の底〜♪(某アニメのOPのイントロ)




