56話 クエスト
前話の補足。
中村が砂を掬ってましたが、他の人も手で掬う事は出来ます。ただ、その砂が秒で無くなります。魔素になって元の砂として補充されます。また足跡なんかもつきますが、これも秒で元に戻ります。そのせいで雪原や砂漠の迷宮では暑さ寒さだけでなく、遭難する可能性もあり、層に関わらず極めて危険です。逆に澄んだ池の水や湧き水とかは掬って飲む事が何故か可能です。迷宮内なら水筒に入れて保管も出来ます。地上に出ると無くなりますが。
パームトレントを倒して以降魔物の出現が止まった。クエストを受けるには最低限これくらい倒せないといけないのだろう。因みにパームトレントのドロップアイテムはヤシの実だった。何に使えと。
青島神社の本殿のある場所まで歩を進める。
「なんカ、パームトレントのちっさいヤツが沢山あるナ」
「ビロウですね。動かないからただの木ですね」
このビロウ、海から流れてきたものが自生したものと言われている。中には樹齢300年のものもあるらしい。
そんなビロウの密林を進むと、神社の本殿に辿り着く。そしてそこにいたのは一組の男女。
男性の方は美豆良頭で、麻布の服を着ている。背には弓。顔立ちが整っており、かなりの美形だ。
女性は男性の一歩下がって控えている。こちらも埴輪なんかで見る様な上着の衣とスカート状の裳を着ている。しかも色が鮮やかだ。
「おお、これはこれは美しい女性ではないか。そちらの小さき女子もなんと愛らしい。私は火遠理命、後ろに控えているのは豊玉姫」
と、満面の笑みを浮かべ、火遠理命は自分を無視して龍さんの手を取る。一方の豊玉姫は静々と頭を下げる。
「うわ、馴れ馴れしいねコイツ」
露骨に顔を顰める龍さん。
「あのー、自分は……」
「君はなんという名前かな? 是非聞かせて欲しい。そちらの女子も」
:スコおじ完全無視w
:いや完全に無視してる訳じゃないぞ。スコおじに対しては露骨に嫌そうな顔向けていた。
:男と女で態度が変わるのか……
:てかさー、今コイツ火遠理命と言ったよな。
:せやで。山幸彦。弟の方やな。
:そして豊玉姫……山幸彦の嫁さん。
:神さまじゃねーか!
:厳密には半神半人だな。てか迷宮に神様いるんだ。しかも普通に喋っとる。
:神は喋るぞ。他の迷宮にもいるけど軒並み喋る。
:あと一応魔物……らしい。
:まぁ迷宮内の神様自体変異種の様なものだしな。
一説にはその土地の伝承やら神話やらを迷宮が読み取っているとかどうとか。もしそうならすでに消失した生目古墳1号墳ダンジョンのボスが卑弥呼っぽかったのも頷ける。事実あのまま迷宮が真っ当に(?)成長していれば本来の中層のボスと入れ替わっていただろう。因みに変異するまで中層ボスはグリフォンだったらしい。
それはさておき。
「あのー、自分達は……」
「はあ、君には聞いてない。話しかけないでくれるかな? それよりもそちらの麗しき女性だ。名前、教えてくれるよね?」
:うわぁ
:うわぁ
:そりゃ見た目だけは良いけどさ……
:見ろ、後ろの豊玉姫が顔曇らせているぞ。
「夫が申し訳ありません。あなた方は私達の依頼を受けに来た、という事でよろしいのでしょうか?」
「あ、はい、そうです」
「おい、そこの男! 私の妻と喋るな。豊玉姫も私だけ見ていれば良い」
あ、なんだろう。コイツから黒沼と同類の臭いがプンプンするな。いや、黒沼もアレで多少の節操はあった。けどコイツはこっちの言う事を聞こうともしない。
「やはり自分ではこうなるか。仕方ない、龍さん、話を聞いてもらえるかな?」
「ひょっとしテこの為にワタシを連れてキタネ?」
「マンドラちゃんでも良かったんだけどね……守備範囲外かもしれなかったから」
実際は守備範囲内の様だが。この男、ストライクゾーン広すぎやしませんかね?
「ハア……仕方ナイネ。こんな男大嫌いなんだけど。中村、貸し1ネ」
その貸しがなんだが凄く怖い。
「えと、ワタシ、龍美麗ネ。中国カラ来たヨ」
「中国……確か大陸の国であったな。つまり……この私に会いに態々遠い所から来てくれたのだな」
うわぁ、うんざりした顔してる。恐らく本土でもこの手の男性からナンパとかされていたのだろう。幾ら元々とは言えど、そりゃレズに走るわ。因みに火遠理命は気付いていない。
龍さんは無理矢理笑顔を見せる、
……思い切り引き攣ってるな。
「そ、そうネ。何か困ってルそうだから来てやったヨ」
「そうか! それはありがたい! 実はな、家宝の玉が無くなってしまってな。潮満珠と潮干珠という2つの玉なのだが」
これまたとんでもないアイテムの名前が出てきたぞ。簡単に言えば満潮と干潮を司る玉だ。海幸山幸の話にもしっかり出ているアイテムで、兄の海幸彦を懲らしめる為、潮満珠を使って潮を満ちさせ海幸彦の軍勢を溺れさせ、その後に潮干珠で潮を干かせ、兄を従わせている。
「ソレは、どーゆー経緯で無くなったネ?」
「いやそれが、いつの間にか無くなっていたのだ。あれはとても大事な物なのだ。是非とも見つけ出して欲しいのだ」
「ふーん、失せ物探しのクエストか。期限はいつマデ?」
「君が探してくれるなら期限は設けないよ。それで、どうだろうか」
「報酬ハ?」
「私の嫁にして「ソレは要らない」アッ、ハイ」
秒で断られたな。と言うか豊玉姫がめっちゃ火遠理命を睨んでいる。
「ではこれをやろう」
と、火遠理命が豊玉姫から小箱を受け取り、開ける。中に入っているのは3個の勾玉が付いた首飾りだ。流石に八尺瓊勾玉ではないだろうが。
「これは命が危険に晒された時に身代わりになってくれる物だ。勾玉の数だけ身代わりになってくれる」
これはまたとんでもないお宝が出たな。自分や龍さんだと、そうそう命の危険は起きないだろうが、持っているに越したことはない。自分と龍さんは顔を見合わせ、頷く。
「ソレでイイヨ」
「ありがたい。では頼む」
これでクエストを受ける事が出来た。問題は。
「デ、いつ頃無くなったネ? 何処かに落としタ? ソレとも盗まれタ? ソレに形状ハ?」
そう、無くなったなら原因はこの2つしかない。ここのクエストを受けた他の探索者はこの迷宮内を隈なく探したのだが、見つける事が出来ず、断念している。もし盗まれたのなら今度は誰が、ということになるのだが。
流石に探索者が忍び込んで盗んでいった、という事は無いだろう。
「盗まれた……ひょっとして」
「何カ心当たりガあるのカ?」
「ああ、1人いる。兄の火照命だ。そうだ、私に恨みを持った兄が盗んでいったに違いない!」
「兄……火照命。で、ソイツ何処にいる?」
「解らん」
「コイツ使えネー」
正直本当に火照命が盗んだのか解らないが。
「自分、彼の居場所知ってますよ。少なくともこの迷宮にはいない」
「だから君は喋るなと……待て、居場所を知っているのか?」
はあ、漸く会話に加われた。
「ええ、まあ。絶対とは言い切れませんが。ただ確実に言えるのはこの迷宮内にはいないという事です」
「そうか……なら兄から取り戻してこい」
「迷宮から出てクエスト失敗とかにはならないですよね」
「しないしない。解ったらさっさと行け。あ、美麗さんはここに居ても良いからね。そこの女子も」
「殴るヨ、グーで」
「鼓膜破るですよ」
「はは、なんとも過激な女性達だ。痛いのは嫌だからそこのむさ苦しいおっさんと一緒に行ってくるといい」
青島という事で海幸山幸を予想していた読者いましたがその通りです。因みに火遠理命の喋り方はなんか鼻につく喋り方をします。某国民的アニメの花○君みたいなw
火遠理命「ところで、この後私とスイ⤴︎ソ⤵︎水⤴︎でも飲みに行かないかい?」
龍仙「本気で殴るゾ」
追記。この作品に汚嫁以外の寝取られはありません。
K「い……入れるのか!? 僕は(評価ptを)入れるのか!」
死神「そうだ、40秒で入れる。もう決まりだ」




