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妻子に裏切られ、会社をクビになったアラフォーおっさん、スコップ一本でダンジョン無双 〜配信したら何故かバズったのだが〜  作者: 紅瀬良
中村浩士、バズる

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53/60

53話 おっさんにスポンサーが付いた件

『前略 中村浩士様』


 そのDMは普通の手紙の挨拶から始まった。

 ある日、自分の配信チャンネルにDMが届いた。内容は以下の通りだ。


『唐突のDM失礼致します。

 新緑の芽吹く季節、いかがお過ごしでしょうか。

 初めまして、私、天光院財閥総帥、天光院大牙の娘、天光院麗華と申します。常々中村様の配信を拝見しております。

 此度DMを送りましたのは中村様とスポンサー契約を結びたく思い、お送りした次第です。

 もし興味が御座いましたら、返信をお願いしたく存じます。


 草々 天光院麗華』


 ……これ本人なのだろうか。


 天光院麗華。日本でも有数の大財閥、天光院財閥のご令嬢だ。

 その天光院財閥の事業は多岐に渡り、その全てにおいて成功を収めている。特に探索者関連の事業においては協会と提携し、武具や探索に必要な道具を卸している。というかシークマンの出資元だ。

 そして、その成功の裏側にはいつも彼女、天光院麗華が関わっていると噂されている。

 そんな彼女が一探索者にDMを送るとかあり得るのだろうか。それもスポンサー契約したい、と。


 こんなん詐欺を疑うわ。

 しかし送り元を見ると『天光院財閥令嬢 天光院麗華』とある。

 いや、そう騙っているのかもしれない。

 こんな時はあの人だ。裸族……じゃなかった、泡手さんに聞いてみよう。


 ***


「本人ね」

「マジですか?」

「マジよ」


 泡手さんにこの事を尋ねてみたら送り主が天光院麗華本人だった事が判明した。勿論送られてきたDMを見せた結果だ。

 それにしてもこの人の鑑定ってなんかバグってないか?


「で、当人なのは解ったのですが……どうすればいいですかね?」

「中村さんの好きにすればいいんじゃないかしら? 少なくとも損はしない筈よ。あっちのとは違ってまだ真面だし」

「あっち?」

「こっちの話よ」


 泡手さんは天光院麗華……彼女の事を知ってるのだろうか? 


「泡手さんは彼女と知り合いなんですか? 為人とか」

「いいえ。直接会った事はないわね、多少は知ってるけど。為人については……こればかりは直接会って確認した方が良いんじゃないかしら? 少なくとも悪人ではないわ。善人でもないけど」


 泡手さんが意地の悪そうな笑みを浮かべる。一体なんなんだ?


「うーん……一応返信しておきます」

「スポンサー契約結ぶのかしら?」

「そのつもりです」


 お金は大事である。生活費は勿論、マンドラちゃんの肥料とかスコップの予備とか念の為の回復薬とか。あとジムの費用とか。何かと入り用なのだ。まあ貯まってきてはいるのだが、マジックバッグを購入するにまで程遠い。

 タワマン購入しなければ買えたかもしれないのに……おのれ元嫁。


 いや自分の防犯意識が微妙だったのも問題か。それにタワマンを購入した事に別段後悔はしていない。マンドラちゃんを守る為にも防犯設備がしっかりとしたとこじゃないとな。


 とりあえず、了承の旨を返信すると、すぐさま返事が来た。詳しい事は直接会って取り決めたいとの事で、日時に関しては自分の時間がある時という事なので、配信日以外なら大丈夫の旨を伝える。場所に関してはあちらがこっちに来るそうだ。渡したい物もあるという。


 結局、彼女と会うのは1週間後となった。


 ***


「指定された場所って、ここだよな……」


 待ち合わせ当日。時間は12時前。

 そこは海沿いにある牛肉専門の店である。宮崎の高級和牛を出す事で有名な焼肉、ステーキ専門店だ。当然高い。渋沢さんが何枚も、最低でも1枚は財布の中から消えて行くくらいに高い。

 ドレスコードがいらないのが救いだ。とは言え、今着ているのは嘗て営業回りしていた時に着ていたスーツである。流石に財閥のご令嬢と会うのだからラフな服装は出来ない。ツナギなんてもってのほかだ。


「いらっしゃいませ」

「あの、自分中村浩士といいます。天光院麗華さんが席を予約していたと思うのですが……」

「中村浩士様ですね。どうぞこちらへ」


 と予約していた席に案内される。今回は特別に個室を用意してもらったそうだ。

 因みにマンドラちゃんは泡手さんに預けてある。


「お待たせして申し訳ございませんわ」


 案内されてから席に座り、暫くして、1人の女性が現れる。

 冬物のコートを着た女性だ。その艶やかさから側から見ても高級ものだと解る。そして屋内にも関わらず何故か帽子を被っている。髪はまさかの縦ロール。日本人ではまずお目にかかれない髪型だ。顔立ちは美人だが何処と無くキツそうなイメージ、悪役令嬢という言葉がピッタリだ。


「ああいえいえ、自分もつい先程来たところですので」

「くすっ、まるでデートのやりとりみたいですわね」


 と微笑む女性。


「それでは改めまして。初めまして、天光院麗華と申します。中村様……いえ、スコおじ様には変態ネキと言えばお解りでしょうか?」

「……………………え?」


 女性……天光院さんが帽子を取ると、その頭には動物の、豚の耳が付いていた。


 ***


「まずはお食事を楽しみましょう」

「あ、はい……」


 料理が運ばれてくる。厚みのある霜降り肉のステーキだ。


 天光院さんのとんでもないカミングアウトに呆気に取られてしまった。

 今目の前にいる悪役令嬢が変態ネキ? いや全然見えねーよ!

 まあ、確かに。変態ネキもお嬢様っぽい口調の書き方してたけど。


「今日の良き出会いに乾杯」

「か、乾杯」


 グラスをチン、と重ねる。尚、中身は水である。

 ステーキにナイフを通す。スッと切れて口に入れる。噛めば肉汁が溢れ、蕩ける様に無くなってしまう。流石A5級の宮崎牛だ。味も絶品。


「うまっ」

「そうですわね」


 最近誰かと食事をするなんて事なかったな。家族と食事に行こうにも2人して断っていたからな。

 舌鼓を打ちながら食事を楽しむ。意外な事に天光院さんは配信時のコメントとは裏腹に礼儀正しく、また、ファミレスや有名な牛丼のチェーン店なんかも利用するらしい。なんなら昨日の昼は某ピエロがいる(妙に恐怖感を与えるが……)ハンバーガー店で昼食を済ませたとの事。高貴ながら変に庶民的なところがある。

 歳のせいか些か不安だったが、胸焼けする事なく美味しく平らげ、デザートまで食すと、契約の話になった。

 スポンサーと言っても、どちらかと言えばパトロンに近い。無論一方的にこちらが貰う訳ではない。財閥側にも見返りはちゃんとある。例えば採取した薬草の専売だろう。魔石に関しては協会が独占しているが、素材に関しては一部民間企業に卸している。特に武具やポーションなんかの素材だ。基本これらも協会経由らしいのだが、直接企業に卸す事で協会よりも高く売れる。自分の場合、天光院財閥傘下の企業に直接卸す事が出来る。自分の見返りは金銭の他にも様々なアイテムを譲り受ける事となった。

 因みに他県の探索者にもスポンサー契約を持ちかけているそうだ。うち1人は例の採掘配信していたあの娘だとか。

 それと傘下企業だが、全国チェーンのシークマンだけではない。中には完全オーダーメイドの鍛治職人の武具屋なんかもある。残念ながら宮崎にはシークマンしかないが、なんなら行ってくれれば特注の武器も作ってもらえるそうだ。


 と、まあそんなこんなで契約書にサインをする。決して悪い話ではない。少なくとも詐欺ではない。何よりその辺は泡手さんのお墨付きだ。

 それとお近づきの印にベルトポーチを貰った。ただのベルトポーチではない。マジックバッグだ。容量はだいたい8立米(立方メートル)。とんでもない物を貰ってしまった……


「それにしても意外ですね」

「何がでしょう?」

「だってあの変態ネキでしょう? なのに割と真面目で正直変な事言ってこないかドキドキしてましたよ」

「ビジネスとプライベートは分けておりますわ。今はビジネスの時間ですから真面目にしますわ。けど……」


 んん? なんか雰囲気が変わったぞ。というか天光院さんのバッグ(これもマジックバッグらしい)をガサゴソと。そして取り出したのは。


「ここからはプライベートの時間ですわ! さあさあスコおじ様、是非とも私にこの首輪を巻いて罵って下さいませ! ハアハアハアハア」


 リード付きの首輪。いやどうしろと。


「嗚呼、スコおじ様に蔑みながら罵られて逝ってしまう私……想像するだけで鼻血モノですわ! さあ、さあさあさあさあ! スコおじ様、罵って下さいませ! 蔑みの目で見て下さいませ! ハアハアハアハア」


 やっぱり変態ネキだった。


「えーと、この変態?」

「はうぅーん! 逝きます、逝ってしまいますぅ!」


 店員が白い目で自分と天光院さんを見ている。

 もうここには二度と来れないな……


 

 

 

キャラクター紹介

天光院(てんこういん)麗華(れいか)

長い黒髪を縦ロールにした悪役令嬢然とした美人。背は高いが胸は慎ましやか、というか貧乳。一人称は(わたくし)

亜人症、半豚獣人。

天光院財閥の令嬢にして後継者。その為か幼少時から厳しく躾けられ、それが口調に表れている。また豚の耳と尻尾を有した半獣人系亜人症で、その為か幼少時の頃から虐めを受けていた……のだが、その事で元来のドM性を開花させてしまい、虐められたり罵られたりすると感極まってしまう厄介な性格となってしまった。当然あまりにも厳しいマナー等の指導も悦んで(喜んで、ではない)受けていた。

親友にこれまた亜人症半獣人の娘がいるが、こちらは牛の半獣人で爆乳だったりする。彼女に虐められるのが何よりの幸福……らしい。


とうとう出してしまった、一番ヤバいヤツを……

面白……愉快……変態な大金持ちの悪役令嬢を今後ともよろしくwww





「諸君、私はブクマが好きだ

 諸君、私は★が好きだ

 諸君、私は評価ptが大好きだ」(少佐)


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― 新着の感想 ―
取り敢えず縄とか用意すればいいのか(´・ω・`)?
「リード付き首輪は着けたか?スコおじにお祈りは?部屋の真ん中で恍惚に震えて言葉責め乞いする心の準備はOK?」
もしもしポリスメン?(善良な市民として当然の対応)
感想一覧
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