48話 強欲さんのスキル講義
マンドラちゃんの実力はかなりのものだった。泡手さん曰く「状況次第だけど下層レベル」そうだ。
何でも、群れの場合だったりゴーレムの様な魔法生物、アンデッド、そして植物に対しては微妙だとか。確かにゴーレムには耳なんか無いし、アンデッドも死んでるから気絶なんかしない。植物もまた然り。ただ、逆にマンドラちゃんみたいに意思を持つような植物系には強いとの事。尤も、今度は『シードキャノン』が通るかどうかの話になるが……
後は相性もある。どうも火と雷に弱いらしい。その属性攻撃をする魔物との戦闘は出来るだけ避けたほうが良いだろう。尤も、それに関しては自分が相手をすればいいだけの話だ。
「ところで泡手さんが探してる素材って何の素材なんですか?」
「ポーションよ」
∶ポーションかー……ん?
∶え?
∶ポーションて作れるの!?
∶作れるぞ。ただその素材が激レア。
∶確か薬草と魔石の粉末だっけ? あと飲みやすい様に何か果汁を入れる事もある。
∶あと調合のスキルがいる。
∶問題は薬草が致命的に手に入らない。植物系の魔物からドロップする事あるらしいけど、あまり出ないんだよな。
∶だからポーションは高い。
∶同じ薬の素材のマンドラゴラの根なんかとんでもない値が付くからな。
成程である。因みにマンドラゴラの根は最高級ポーション、というか万能薬の素材だ。こっちは薬草よりも出回らない。というか買取値が3000万とか……そりゃ血眼になって探す人がいる訳だ。実際マンドラゴラの根を売ってちょっとした小金持ちになった者もいる。
マンドラちゃんをチラリと見る。
「ほえ? なんですか?」
何も解ってないマンドラちゃんがきょとんとし、そしてにばー、と笑顔を見せる。
……正直魔物よりも人間の方がヤバいかもしれない。
∶多分何も解ってないな。
∶ワイらでさえさっきのコメントだけで危惧しとるしな。
∶マンドラちゃん純粋やなあ……
∶純真無垢とはまさにこの娘の事を指すのだろうな。
∶まだ人間の悪意に触れてないから……
∶スコおじ、マンドラちゃんを守ってやれよ……
実際テイムした魔物を拐って金儲けする輩もいる。酷い場合は素材目的で殺す者もいる。というかそういう事を生業とする非合法集団も存在するとか。この事で伊倉さんは頭を抱えているらしい。勿論伊倉さん当人の弁だ。
うむ、とりあえずマンドラちゃんを狙う輩は処すか?
話が逸れてしまった。
泡手さんが欲しているのはドロップ品の薬草ではなく、地面に生えた薬草だ。だが、生憎と自分はその薬草がどれなのか、そもそもどんな形なのか知らない。完全に泡手さん頼りだ。
そして数分経った頃。
「見つけたわ。これよ」
と泡手さん。彼女が指をさす方を見ると、どこかで見た形状の葉をした草が生えている。
∶てかこれ……
∶ヨモギじゃーんwww
∶ヨモギ。キク科ヨモギ属の多年草。通称餅草。食草であり蓬餅に使われたり乾燥させて薬にしたりする。
∶詳しいヤツがいて草。
∶草だけに。
∶は?
∶え?
∶ん?
「それじゃ中村さん、掘って取り出して」
「デスヨネー。解ってました、こーゆー事だと」
と、ハンドスコップで薬草の周囲を掘る。ハンドスコップを持っていたのは決してご都合主義ではなく、これも事前に泡手さんに言われたから。いくらお馴染みのDIYホームセンターが夜10時までだからって急にに言われても困る。慌てて買いに行ったよ。それとハンドスコップもスコップなので円匙のスキルは確りと発動している。なので普通に掘れる。感覚で解るのだ。
掘って薬草を周囲の土ごと採取する。それから土を落として根を露わにする。
「これでいいですか?」
「ええ、ありがとう」
と薬草を受け取る泡手さん。そして自分をじっと見つめている。なんというか、観察してる?
「……これでよし。今度は中村さん1人で見つけて採取してちょうだい」
「え゛?」
変な声が出てしまった。自分に薬草を見つけろ、と?
「それと今度は掘らなくていいわ。一応根もいると言えばいるけど主に必要なのは葉っぱとか茎とかね」
つまり手で摘めと?
∶いや無理だろ!
∶葉っぱ1枚摘み取る事が出来ないんだぞ普通は!
∶強欲さん無茶を言いよる……
∶けどこれで摘めたら……
∶また迷宮の常識が覆るな。
「この辺くまなく探せば見つかるわよ。けど、今の中村さんなら容易く見つける事が出来るんじゃないかしら?」
何の根拠があって言ってるのだろうか。とりあえず、この周辺から探してみよう。
といっても、やはりそうそう見つかる訳もなく。移動しながら、魔物が出ればマンドラちゃんが処理しつつ探し回る。
そして。
「ん? 何か光ってますね」
∶え? どこどこ?
∶ワイには見えないんだが。
∶俺も見えない。スコおじ、目がおかしくなったんか?
「いやそこ、光ってません? だいたい10mくらい先のあそこ」
「?? マンドラちゃんには光ってるの見えないのです」
∶マンドラちゃんに同意。
∶スコおじ以外見えてないって事?
∶強欲さんは……どうなんだ?
とりあえず光って場所に行ってみよう。そこにはあったのは。
「ヨモギだ」
高さ1m弱のヨモギが生えていた。
∶うそーーーーー!?
∶なんかあっさり見つかった。
∶こ、こんな事が、あってええのんか?
∶とりあえずなんで見つけられたのか理由を求む。
「理由と言われても……なんか光ってたから、そこに行ったらあった、それだけですが?」
∶いやその光ってたの俺らには見えてないんだよ。そこら辺も説明してクレメンス。
「さあ?」
こればかりは自分でも解らない。チラリと泡手さんを見やる。泡手さんは腕を組みながら。
「後で説明するわ」
とだけ言った。
むう、謎が謎のまま残るのはモヤモヤするんだが。兎に角薬草を摘もう。
とりあえず葉と茎の付け根を指でつまみ……プチッと摘んだ。
「え?……は?」
∶はああああああああ!?
∶そんなバカなーーーーーー!?
∶あり得ねえ、えりえねだろ!?
∶アイエエエエエ!? 摘めた!? 摘めたナンデ!?
∶ドーモヨモギ=サン、スコ=オジデス
∶忍者殺しがいて草。
∶いや無理矢理草生やさんと混乱する。
∶既に混乱してる。
∶合成だよな? 合成なんだよな!? え、マジなの!?
合成を疑いたくなる気持ちはよく解る。当事者の自分だってこれには驚いてる。けど迷宮関連の動画はどういう訳か合成加工が出来ない。プライバシー保護の為のモザイクや規制音は出来るが。
「まあそうなるわよね。迷宮の常識の根底を覆すような事したもの。それじゃここで講義といきましょうか」
∶講義助かる。
∶裸白衣強欲さんのセクシィ講義が始まると聞いて。
∶裸じゃないんだなぁ。
「何故中村さんが薬草を見つけられたのか、そして採取が出来たのか。簡潔に述べると探索と採取のスキルが生えたからよ」
∶生えた!?
∶探索&採取「ニョキ!」
∶いや待て生えたってなんだよ。
「生えたというのはものの喩えだけど、まず採取は最初私が見つけた薬草、これを採取したからね。そして探索。まず目的の物を伝えた。そして目的の物がそこにあるかのように光って見えるようになった。それがアイテム探索の効果。無論そんな簡単にスキルを覚えられる訳じゃない。採取もまた然り。その理由はね、円匙のスキルにあるの」
「自分のスキルですか?」
「そうよ。その前に武技って知ってるわよね? その武器のスキルを使用してればいつの間にか覚えている技、アーツとも言うわね。そして魔法も同じ、何らかの属性魔法や回復魔法スキルを持ってれば初級の、簡単な魔法が使えるでしょ。そして使えば使うほど高威力の魔法を覚え、使えるようになる。実はね、武技と魔法って同じなの。武器スキルか魔法スキルの違いってだけで。けど円匙にはそんな武技なんて代物はない。そうでしょ?」
「確かに無いですね。確かにアーツというか必殺技とかいうのは全然思い浮かばないです」
「時々そんなスキルがあるのよ。で、そんなスキルの場合はどうなのか。武技のかわりに別のスキルを覚えるの。言わば副次効果ね。そして円匙は採取と探索のスキルが副次効果として得られた新たなスキル。因みにだけど……武器スキルの幾つかは何らかの副次効果を得る事が出来るわ。例えば、斧とかね」
更に聞くとあるスキルが発生してからは副次効果で得られるスキルが発生しだすという。今回の場合、採取と探索を持った探索者が現れることになるだろうとのこと。
「それともう1つ、中村さんの円匙のおかげで他にも似たようなスキルが解放されていくわ。鍬とか鎌とか……鶴嘴とか」
つまり自分のスキルが起点となって様々なスキルが解放されていくという訳か。
うーん、こんな事ならもっと早く探索者になるんだった。
∶なんかよく解らんけど何となく解った。
∶それホントに解ったんか?
自分もよく解らん。けどこれからは迷宮の資源が増えていくと言う事か。それはいい事なのだろう。例えば、薬草が採取で手に入ることでより多くのポーションが出回り、手に届く値段まで落ちればそれだけ危険度が下がるという事だから。
まあそれでも油断は禁物だが。
その後も採取と魔物討伐を行い、今日の配信を終えた。
尚、ヨモギがトレンド入りしてて思わず吹いてしまった。世の中何がトレンド入りするか解らんな……
なんかややこしい話になってしまった……
因みにスキルの副次効果は以下の通り。
武器戦闘スキル∶アーツ
魔法スキル∶魔法
強化スキル∶一極集中
特殊スキル(円匙もここ)∶派生スキル
但し、一部の武器スキルには武器以外の用途がある場合、やはり派生スキルがある(例、両手斧∶伐採)。また、強化に関しても、ブースト、限界突破という例外がある。
「◯子、それドロップちゃう、評価ptや」(もうそういう時期ですね……)




