45話 100分の1
今回も黒沼視点です。
探索者協会の宮崎支部に来た。
正直探索者なんてのは底辺職なのだが、当たるとデカい。実際に年間収入が億を超える者もいる。優秀な俺が探索者になればそれくらい稼げるのも容易だ。
入り口の扉を潜ると若者で溢れかえっている。卒業を期に探索者の登録をするつもりなのだろう。
そんな中で俺の様なエリートが混ざるのは心外ではあるが、将来コイツらを顎で使う事になると思えば気が楽だ。
「なんかおっさんが混じってるな」
「スコおじの影響かな?」
「けどあの人イケてない?」
「うんうん、イケおじって感じ」
「なんだよ、あんなおっさんが好みなのかよ」
「そういう訳じゃないよ。けどナイスミドルのおじ様で素敵だなって思っただけ」
女共がうっとりしている。男からは嫉妬と蔑みの視線を感じるが。
ま、俺のイケメンっぷりは歳を経て、より磨きがかかった様だな。若い女にそう思われるのは悪い気はしない。寧ろこの中から気に入った娘を俺好みの女に調教するのも良いな。
美沙の様なバカ女は論外だが、俺が一から教えていけばいい。
しかし人が多いと適性検査も時間がかかるな。詳しくは知らないが迷宮に入るにも適性があるらしい。そしてスキルだ。中村はスコップなんてダサいスキルを引き当てたが、俺には素晴らしいスキルが備わっているのだろう。
「黒沼英治さん、どうぞ」
お、やっと俺の番か。中村の迷宮適性はSSらしいから、俺はSSSか?
機械に通され、出された結果は。
……は?
「迷宮適性F……だと?」
俺の呟きが聞こえたのか周囲の奴等がヒソヒソと囁き出す。
「適性Fだってよ」
「うわぁ、可哀想」
「見た目はあんなにカッコいいダンディなイケおじなのに……」
「お近づきになりたかったのに、残念」
「けど100人に1人はFだからそれ程珍しい訳じゃないよな」
「けどさ、あの人めっちゃ自信満々な顔してたじゃん。ひょっとして適性S以上かと思ってたんじゃね?」
「うっわ、それは恥ずいわ……」
周囲から投げかけられる憐れみの視線。
「おい! 納得いかんぞ、なんで俺がFなんだ!? 機械の誤作動なんじゃないのか? もう一度検査しろ!」
「納得いかないからって……ダサ」
「おい、誰だ今俺の事をダサいと言ったのは?」
だがそいつは出てこない。そんな奴が大成するとは思えんな。陰でコソコソと誹謗中傷する様なカスは。
「ふん、所詮はカスか。表に出ずに他人の悪口しか言えない……やはり探索者はその程度か」
「ハッ! 適性Fが何言ってやがる。俺の適性は……」
「ならかかってこい。俺を捩じ伏せられるほどの実力を持っているのだろう?」
「言われずとも!」
と掴みかかってくるカス野郎だが……悪いな、これでも柔道をやってたんだ。素人の攻撃など当たらんし、寧ろ逆に制圧も出来る。そいつの体勢を崩して背負い投げで床に叩きつける。
「ガハッ!?」
「正当防衛だからな、悪く思うなよ」
検査の為の職員も何かしてくる訳でもなく、ただ見ていただけなのは、ひょっとしたらこの程度の事は日常茶飯事なのかもな。それにあの程度の挑発に乗って暴力を振るう、しかも陰でコソコソしてる奴が探索者としてやっていけるとは思っていないのかもしれん。
その後、俺に投げ飛ばされた彼奴は職員に厳重注意を受けていた。俺にもあまり挑発しないよう言われたが、それだけだ。投げ飛ばした事については何のお咎めもなかった。
さて、再検査だ。聞いた話、中村も適性Eだったがそれは誤診だったらしいしな。なら俺も……
「適性Fですね」
結果は変わらなかった。
***
何故かここの支部長に呼ばれた。別に悪い事はしてないぞ。
ただ、俺以外にも3人呼ばれている。1人は筋骨隆々で何か格闘技をやってるような体格をしている。1人は女だ。というかギャルだ。残り1人はこれまた如何にも解りやすい陰キャオタクだ。
そしてもう1人。
「呼び立てて済まないね。僕は陳政徳、ここの支部長をしている」
丸眼鏡をかけた糸目の男だ。なんとも胡散臭そうな奴だ。
「さて、ここにいる君達だけど、適性検査でFと出た者達だけど……なんで迷宮に入れないのか納得出来ないよね」
「そうだ! これでもオレはレスリングでインハイ本戦出場経験者だ。いくら適性Fでもやっていける筈だ!」
「あーしはFなのが納得いかないんだけどー」
「僕は……無理矢理連れてこさせられただけだから寧ろFの方が良かったかな。だって怖いじゃん、迷宮」
「うん、そこの君はちゃんと理解してるようだね。そう、迷宮は怖い。命の危険が常につきまとう。それが表層だとしても。そして適性Fなら尚更だ」
「何が言いたい?」
支部長とやらが真面目な顔をして言った。
「少し体験してもらおう。勿論表層だけど」
***
市内郊外にある迷宮に連れてこられた。正しくは暗く渦巻く迷宮門の前だ。
「さ、みんな入ってくれ。襲ってくる魔物は僕が処理するから危険はないよ」
まずは俺達を促す支部長が中に入る。そして次にレスリング経験者の男が。
「へっ、適性Fがなんだってんだ」
次にギャルが。
「おい、行かないのか?」
「や、僕は探索者になる気はないので……」
「そうか」
そして俺が足を踏み入れる。
入った瞬間、身体が重く感じる。頭痛と吐き気がする。立っていられない。
先に入った2人もまともに立つことも出来ないようだ。
「なんだっ、これは……っ」
「ぎも゛ぢわ゛る゛い゛ぃ゛」
「これが適性Fが迷宮に入れない理由だよ。適性E以上なら身体能力の強化なり恩恵を得られるけど適性Fの人間は寧ろ逆なんだよ」
「く、そっ……巫山戯んな。俺は中村以下だったのかよっ」
「ん? それって中村浩士サンの事かな? ……あぁ、確かキミは黒沼って苗字だったね。嘗ての中村サンがいた会社の上司だったかな」
なんで知ってやがる。
「中村サンとの確執とか最初の配信でバレてるからね。まあそれとは関係なしに探索者の道が閉ざされた訳だ。なんで探索者になろうとしたのかは敢えて聞かないけど、探索者以外の道を見つけるべきじゃないかな?」
支部長の目には嘲りも憐れみも感じられない。只々事実を述べているだけだ。
「さて、残りの子は入ってこないのは粗方知ってたからかな? 賢明だね。それじゃ出るとしようか。無理そうなら手を貸すよ……てみんな無理そうだね」
支部長が1人ずつ迷宮の外に出していく。
なんで俺がこんな目に。俺はエリートの筈なのに……
中村め、アイツのせいで俺の人生は転落しっぱなしだ。
意識を失う寸前に、支部長の手によって俺は迷宮から放り出された――
本編で迷宮適性と言ってますが、正しくは魔素適性です。適性が少しでもあれば有用なのですが、適性が無ければ魔素は寧ろ毒となります。迷宮内は魔素が溢れているので適性がない者は本編の様になります。
次回から中村ァ視点に戻ります。
「フウウウウウ〜〜〜
わたしは…子供のころ……小説家になろうの『妻子に裏切られ、会社をクビになったアラフォーおっさん、スコップ一本でダンジョン無双』ってありますよね……あの作品…なろうで読んだ時ですね
あれ……初めて読んだ時……なんていうか……その…下品なんですが…フフ……
評価pt………入れちゃいましてね…………」(第4部のあの人)




