23話 探索者協会の偉い人達
月間ローファンタジーランキング1位!
結局のところ。美沙も黒沼もこちらからの要求を全部のんだ。
他にも接触禁止とかも条件に付けたがそれものんだ。接触禁止に関しては破った場合1回につき20万の追加だ。これは美沙と黒沼だけでなく、陽茉莉も対象だ。
後日慰謝料がしっかりと振り込まれたが、どうやって捻出したのやら。
美沙は実家を頼ったのだろうが、そうなると土地を売っぱらったのだろう。義両親に罪はないし、美沙のような娘がいる事には同情するが、仕方のない事だろう。
黒沼は奥さんへの慰謝料が増額されたらしい。そりゃそうだ、美沙以外にも不倫相手が3人もいたんだから。しかもうち1人は既婚者だからさらに払う額が増えている。
陽茉莉に関しては泡手さんが陽茉莉の鑑定書を出してくれて、その事で発覚した虐めの件を学校に報告した。学校側も驚いていたが、実際に陽茉莉の虐めの被害者がいたからな。被害者宅へ謝罪しに回ったよ。こちらの事情も話して、謝罪を受け入れてくれたが、肝心の美沙と陽茉莉は謝罪に行かなかったらしい。なんか被害届を出す家庭もいた。鑑定書によれば肉体的苦痛よりも精神的苦痛を与える虐めだったので、目立った負傷はないものの、心を病んでしまった子がいるらしく、結局美沙は更に慰謝料を払う羽目になった。
ま、美沙も陽茉莉も黒沼も、針の筵だろうな。
で、自分はというと……
***
「改めて自己紹介しましょうか。日本探索者協会研究部統括、泡手愛莉よ」
「あ、はい。存じ上げております。中村浩士です」
つい癖で名刺を差し出そうとしたが、そもそも今の自分はそんなもの持ってなかったな。代わりに握手を交わす。
因みに、場所は弁護士事務所ではない。あれから拉致られ……もとい、連れられ、以前陳さんと話した協会の応接室にいる。あと陳さんもいる。苦笑いしてるな。
しかしその格好なんとかならんのか? 目に毒だ。いやどちらかというと眼福か。
「あの、どうでもいい質問なんですが……まさか白衣の下は?」
「何も着てないわよ。なんなら見せましょうか?」
「いえ結構です!」
なんだかなぁ。クールビューティな研究員かと思ったらまさかの変態だったよ……
一応自分にも性欲はまだあるからな。本能よりも理性が遥かに優ってるだけで。
「全く……いくらその白衣が便利だからって、ちゃんと服くらい着たらどうなの?」
「いいじゃないの。別段困る事もないし。色々と便利よ、裸は」
「裸が便利って……」
男装の麗人が泡手さんの服装について突っ込みを入れるものらりくらりとかわす泡手さん。
「防弾防刃防寒防熱機能付きの白衣よ。おまけに汚れない。これ着とけば充分じゃないかしら? 貴方もそう思うわよね?」
「いや自分に聞かれましても……」
どう反応すればいいか解らん。
「それに二斗さんも昔は対○忍みたいな格好してたじゃない」
「言うなーーーーー!!」
大絶叫する男装の麗人。なんという黒歴史。それは知られたくないだろうな。
「泡手研究部統括、それ初耳なんですが!? けどちょっと見てみたい気も……」
「政徳さん?」
「あ、いえなんでもありません、はい……」
男装の麗人さん、笑顔だけど目が笑ってない。陳さんが萎んで見える。
「えーっと……」
「ああ、ごめんごめん。愛莉が黒歴史を掘り起こそうとするからつい。私も改めて自己紹介するね。日本探索者協会会長、伊倉二斗。よろしく、7人目の適性Exの中村浩士さん」
と右手を差し出す男装の麗人改め伊倉さん。というか……
「か、会長!? 若っ!」
「はは、実際中村さんより年下だよ。因みに愛莉も中村さんより年下だね」
なんとぉ!?
年下で見た目も若いとは。会長というのは脂ぎったご年配の方とかだと思ったのだが、想定してなかった。
「因みに私で4代目なんだけど……それまでの会長は多分中村さんが想像してた会長像とほぼ同じだよ」
心でも読んだのか?
実際協会が立ち上がった時の会長は政治家の天下りで、あまり良い印象はなかった。しかも数年で更迭されるのだが、当時魔石や素材の買取料の6割を税金で取られ、それを不満に思った探索者が迷宮に入らず、暫く魔石が回らなかった。そういった経緯があり初代会長は責任を取らされ更迭、それ以降税金は減税されたのだが……
どうも先代までの協会長は税金の一部を着服していたらしい。屑である。というかどこの悪徳代官だ?
で、数年前に会長として就任したのが彼女、という訳だ。日本最高峰の探索者で現場の事も理解している。しかも美人であれば人気も高い。まあ、それまでが屑揃いだったからその分人気があるのだろうが。
しかし何でこのタイミングで自分と接触してきた? いやいつかは会うかもしれないとは思っていたがこうも早いとは。
その事を尋ねてみたら。
「これでも遅いくらいだけどね。ちょっと所用で海外に行ってたから」
どうも他国の探索者協会の会長と会議中だったらしい。そんなのリモートで行えば良いのでは? と思わなくもないが、重要な話し合いなのでそれで済ませる訳にもいかないだろう。交流という面もあるだろうし。第一今でも国連や国会で代表や議員が集まるんだから、各国の協会の偉い人が一堂に会するのは当然と言えば当然か。
「で、私達が接触した理由だけど……中村さん当人からの鑑定士の依頼があったからね。タイミングが良かった。だから今こうやって接触出来た。それと会わせたい人がいてね」
と、伊倉さんがスマホをテーブルに立てる。
『こんにちは。そして初めまして。僕は万能、君を含めて7人の適性Exのうちの1人だ』
スピーカーモードにしていたからか、スマホから声が聞こえた。
男性なのか女性なのか、ボイスチェンジャーを使っているから解らないが、なんとなくだが口調から男性だろう。
同席している陳さんが驚愕の表情を見せる。さもありなん、とんでもない人物が電話越しとは言え目の前にいるのだから。
「はあ、中村浩士です、よろしくお願いします」
『口調からするにあんまり驚いてはいないようだね。僕もそうだけど適性Exはみんな肝が据わってるね。ま、その方が僕としても話しやすいし気が楽だ』
「恐縮です」
そんな訳ない。めっちゃ驚いてるよ。
『本当なら同じ適性の者どうし、もっと友誼を深めたいところだけど、僕はともかく二斗を不在にしておくのはまずい』
「泡手さんは良いので?」
『彼女の場合いなくても研究部は回るよ。で、本題なんだけど、君の二つ名が決まった。『坑夫』だ、解りやすいだろ』
「はあ、そうですか……そうですね」
ディガー……Diggerか。まんまだ。変な二つ名じゃなくて良かった。
『それと適性Ex専用のチャットルームがある。詳しくはそこで語ろう。アドレスを今から送るよ』
とスマホからメールの通知が来た。送り主は『万能』。本題にアドレスが書かれている。
てどうやって自分のアドレスを知ったんだ!?
『因みにそのアドレスから入れるのは適性Exの者だけで、他の人達は入るどころか見つける事すら出来ない。そういう仕様になってる。まあ以前どこかの国のハッカーが探ってきて見事に返り討ちにあった事もあるけど』
尚、そのハッカーは突き止めるどころか身バレしてハッカー業を引退する羽目になったとか。更にはそれを指示した国の偉い人もこれまでの悪行が全世界にバレて文字通り吊るされたとか。怖や怖や。
「何でそんな事が出来るんですか?」
『制約のスキルだよ。これをアドレスに仕込んでいて『探ろうとすれば指示した者含めて破滅する》という制約を課した。因みにだが……二斗も使えるよ』
なんでも美沙や黒沼が署名した誓約書に書かれた事は必ず守る様『制約』がかかっているらしい。かなり強力な制約で破ろうにも破れないそうだ。つまり自分にふっかけた冤罪を、ふっかけた当人が必ず暴露する羽目になった訳だ。
怖や怖や(二度目)。
『僕からの用事はこれで終わり。二斗、早く戻ってこないとよからぬ事を考える奴が出てくるからね、早く戻ってくる様に。愛莉は……暫くそこにいて良いよ。何かと必要になるだろうから』
「「解ったよ(わ)」」
そこで通話が切れた。
「という訳だから私は戻るね」
「そういう訳なので、中村さん、ついでに支部長、宜しく」
「はあ、宜しく」
「僕はついでか……」
室内に陳さんの声が虚しく響いた。
キャラクター紹介
伊倉二斗
30代後半。シャギーカットのショートヘア、切れ長の瞳。スレンダー体型。男物のスーツを着ている男装の麗人。外見のイメージは某天王星の人。
探索者協会の4代目会長。数年前、それまでの会長が天下りだったのに対し、現役の探索者が会長に就任した。人柄もよくこれまでの会長と比べても人気が高い。
また、意外と家庭的であり、料理が上手い。泡手と知り合いでよくつるんでいる。
迷宮適性SSS、スキルはラーニング。日本における最強の一角(万能と中村を除く)。二つ名は暴食(別に大食漢という訳ではない)。
汚嫁間男托卵娘の転落はまた後ほど。暫く話が開くと思います。
まず迷宮の方をなんとかしないと……
「あれはメ◯ゾーマではない……メ◯だ」(どっかの大魔王様)




