15話 予兆(ざまぁの)
前回の後書きで次回はざまぁと言ったが、あれは嘘だ!(ざまぁまでいかんかった……)
バグベアの金色に輝いていた体毛が元の黒毛に変わる。己の傷を見、自分の方を見て笑うと、バグベアはドサリと倒れ、黒い霧となって消滅した。
“うおおおおおおおおおおっ!”
“勝ったああああああああああああ!!!!!!”
“すげーーーーーーーーーーー”
“おっさんつえーーーーーーーーー!!”
“スコおじ最強! スコおじ最強!”
“おっさんかっけーーーーーーーーー!!!!”
“なんだよあれ! 何したんだよアレ!!”
“マジ見えんかった! 速すぎて全然わかんねー!”
おおう、絶賛の嵐だ。
まあ何をしたかというと、全速力でカウンターぶち込んだだけだ。すれ違いざまにバグベアのストレートを避けスコップの剣先で抉るような突きを入れた。自分の体感からは普通に時間が流れていたと思っていたのだが、実際には1秒にも満たなかったらしい。
それよりも、バグベア笑ってたな。アイツ、満足したのだろうか?
いや、そんなのアイツにしか解らない事だ。それ以前に迷宮の魔物って生物と言えるかどうかも怪しいし。
死んだら霧になって死体も残らず、魔石と時々アイテムをドロップする。だからこそ死を恐れない。しかしあのバグベアは何か違う、そう思うのは自分だけなんだろうか。
***
バグベアが倒れた所に直径3cm程の魔石と黒い帯状のものが落ちている。
黒帯? じゃないな。ハチマキか、これ。
「なんですかね、これ?」
“ハチマキ?”
“そうにしか見えん”
“けどバグベアってそんなもん落とすか?”
“少なくとも俺は聞いた事ない”
“ただのハチマキなのか、それとも何か特殊能力が備わっているのか……”
“呪われてる可能性もあるぞ”
“まあ帰って鑑定してもらえば解る事だろ”
“おーい、みんな忘れてるかもしれんが、ボス倒したら宝箱出てるだろ”
“あ”
“そーいやそーだ”
確かに。ボスを倒すと宝箱が出てくる。事実、部屋の真ん中にいつの間にか宝箱が出現している。
一応迷宮を徘徊してるボス以外の魔物を倒した時も稀に出てくるが。
「ボス以外の宝箱って罠がある事があるそうなんですが、ボス部屋の宝箱って確か罠かかってなかったですよね」
“ボスの宝箱に罠がかかってた事は俺の知る限り一度もないな”
“つかボス倒して罠付きの宝箱開けて死んだらシャレにならん”
“そんな迷宮誰も行かん”
デスヨネー。
そんな訳で少しワクワクしながら宝箱を開ける。実は罠がかかってて開けた瞬間毒の矢が飛んだり爆発したり拳骨が落ちてきたりしないかと疑ってたりしたが、勿論そんな事はなかった。
で、肝心の中身だが。
「ポーション?」
緑色の液体が入った小瓶がひと瓶。
“ポーションだな”
“ポーションやな”
“普通のポーションだな”
“普通のアイテムだった”
“つまらん”
“おいコラダンジョンもっとマシなもん出せやゴルァ!”
……何故か迷宮がディスられる件について。
けどポーションだとしても割が合わない、という訳ではない。何せこれで結構値がはるのだ。理由は単純、少ないから。
こうやって宝箱から出る以外にも調合で作られるものもあるが、肝心の素材がドロップ品以外なく、その量はあまりにも少ない。おかげで作れる量も少ない。結果ほどほどの回復しか出来ない最下級のポーションでさえ10万は下らない。
なのでこのポーションを売れば何もしなくても10日程は生活出来る。
まあ人によっては1日で溶かしてしまうだろうが……
ポーションを取ると宝箱が消えて下へと降る階段が現れる。
“その階段を降りたら次の層の入り口に通じる階段と迷宮の入り口に戻る転移の魔法陣があるぞ”
「ああ、確かそうでしたね。一応他の迷宮配信者の配信観てましたので」
流石にこのまま上層へ降りる、という訳にはいかない。武器も防具も破損した状態で階層越えは危ない。
「それでは今日はここまで、という事で」
“せやな。その方がいい”
“上層からはトラップあるからな”
“避ける方法はあるけど、準備してなさそう”
“何より武器がない”
“防具……と言っていいか解らんけど壊れたり破れたりしてるしな”
“魔石も溜まってるしドロップアイテムも結構な量になってるし”
「はい。そうですね。次の層……上層はまた次回という事で」
“お疲れ”
“登録しといたで”
“ワイも”
“俺も”
“次はちゃんと配信の予約しといてな”
“突発配信されて見逃すとかたまったものではない”
「はは、そうします。それと登録ありがとうございます。それでは」
ドローンの前でお辞儀をし、配信を終えた。
***
魔石とドロップアイテムの買い取ってもらう為に協会へと向かう。スライムゼリーは兎も角、兎肉や他のドロップアイテムはそこそこの値段で売れる筈だ。
協会の中に入ると何か騒がしい。その中心にいるのは江藤君達だ。
「買い取れねえってどういう事だよ! こちとら死ぬ思いして取ってきたんだぞ!」
「買い取れないとは申しておりません。これらをどこで得たのかを尋ねているのです」
「うっせえな、どこでもいいだろ!」
「どこでも良くないから尋ねているのです」
レッドキャップのドロップアイテムの事で揉めているようだ。
「それでしたら生目古墳1号墳の表層、地下2階ですね」
助け舟という訳ではないが滞っているし、自分のも早いとこ査定してもらいたい。何より鑑定しないと解らないものだってあるのだ。
「あ、横殴りのおっさんだ」
「うわー、さいてー」
「おいこら横殴りヤロー! なにしゃしゃりでてんだよ!」
横殴り横殴り五月蝿いな。それしか言えないのだろうか? けどそんな彼らを無視して続ける。
「表層に、ですか?」
「はい、ちゃんとこちらの記録用のドローンで記録してます。他にもアルミラージとか出てましたね。あとボスがバグベアの変異種でした」
「おいコラ横殴りヤロー! 無視してんじゃねーよ!」
「どうせそれも横殴りで得たものなんでしょ? ウチらに渡しなさいよ!」
「ほらほら、よこせよこせー。キャハハハハ!」
こいつら、陽キャじゃなくてDQNだったか……
周囲がどのような目を向けているのかまるで理解していない。あと横殴り横殴り五月蝿いから自分にも不審の目を向ける人いるし。しかし流石にこれには受付の人も注意せざるを得ない様で。
「あなた達五月蝿いですよ。静かにしてください。寧ろ迷宮の状況の方が重要です。あなたは確か……」
「中村浩士です」
「中村浩士様、ですね……あ。中村様に支部長からの呼び出しがかかってますね。恐らく迷宮の事についてだと思います。応接室までお越しいただけますか? その間査定と鑑定をしておきますので」
「解りました」
偉い人に呼び出されてしまった。
「それとそちらの方々……」
「江藤朗だ。あと備前育美と椎名うるか」
「ああ……あなた方にもお呼びがかかってますね。中村様と一緒に応接室までお越しください」
「んあ? いーぜ。おい横殴りのおっさん、恐らく俺らの正当性を認める為に態々支部長が呼んでくれたんだろーぜ。へへ、ザマァみろ。これでおっさんもおしまいだな、ギャハハハハ!」
さてさて、それはどうだろうか。寧ろ彼らの職員からの印象はかなり悪くなってると思うが。それにドローンの映像が証拠として残ってる。
おしまいなのはどっちかねえ。
次回こそ三馬鹿のざまぁ!
「(評価ptを入れた)俺の(作品の)名を言ってみろぉ!」(弟よりも劣る兄)




