13話 呆れるおっさんと視聴者。そして表層探索。
あ、ありのまま今起こった事を話すぜ!
日間ランキング、ローファンタジー2位(3月5日朝時点)になってるかと思いきや、週間も4位になってやがった。
な……何を言ってるのか分からねーと思うが俺もどういう事か分からなかった……
頭が(嬉しさで)どうかなりそうだった……
気がついたら日間1位(3月5日夕方時点)になってた!
もう訳分かんねー!!
“えぇ……”
“ないわー”
“助けてもらったのにその態度はないわー”
視聴者ドン引きである。かくいう自分も呆れ返って何も言えない。
「そうよ! 江藤君の言う通りよ!」
「救援とか言いながらアタシ達が弱らせたところでを倒していくなんて!」
彼は江藤君というのか。しかし、彼女達もこんなだとは……
“うーん、類友?”
“だねえ”
“誰がどう見てもピンチなのに、それをまあこうも都合のいい解釈するとはね。どーゆー頭をしてんだ”
“しかもバッチリライブ配信してるからな”
“江藤君とその取り巻きが非常識な件”
“江藤君の常識、一般人の非常識w”
“切り抜いてSNSにアップしとこ。非常識探索者江藤君、助けてくれたおっさんに横殴りと因縁をつける、と”
荒れてるねえ。しかもおもちゃにされてるな、江藤君。
あと切り抜きは兎も角SNSにあげるのはプライバシーの侵害だからやめときなさい。ちゃんと記録してるから。然るべき所に既に上がってるから。
「そんな訳でこの魔物の魔石もドロップアイテムも全部オレ達のもんだ」
「いや流石にそれはおかしいのでは?」
「おかしくねえよ! いいかおっさん、誰が倒そうが先に見つけたモンの物だ。こんなの探索者の常識だぜ、知らなかったのかおっさん」
“そんな常識はない”
速攻で否定のコメントが返ってきましたが。ただ、生憎と視聴者のコメントは彼等には見えていない。自分には目の前に表示されてて見えるんだけどね、何故か。
「まあそんな訳だ。これ全部いただくから」
「残念だったねぇ、お・じ・さ・ん」
「横殴りなんかするからよ」
“うわー”
“うわー”
“盗っ人猛々しいとは正にこの事か”
結局、江藤君達は全部の魔石とドロップアイテムを取ってしまった。
まあ自分としては迷宮の異変の方が気になるのだが。
「それで、江藤君達はこれからどうするんですか?」
「あぁ? 戻るに決まってんだろ。ケガもしちまったし、何よりおっさんへのクレームを協会に伝えなきゃいけねえからな」
「そうですか。しかし……その抗議、通りますかね?」
「あ? どういう事だ?」
「だって……ほら」
ドローンの方に目をやる。江藤君達もドローンが浮いてて、絶賛配信中なのに今更気付いたようだ。
「なっ!? てめえ、横殴りの次は盗撮かよ!」
「盗撮ではありません。念の為に記録として撮っているだけです」
「それを盗撮って言ってんだよ!」
いや迷宮内での撮影は寧ろ推奨されてるんだが……あ、確か寝てたな、江藤君達。
「講習の時寝てたから聞いてないのでしょうが、迷宮内では――」
「うっせえ! この盗撮魔!」
そう言うと江藤君はあろうことかドローンを剣で地面に叩き落とした。
「へっ! これで盗撮出来なくなったな! 感謝しろよ、おっさん。犯罪者にならずに済んだんだからな!」
と、高笑いしながら江藤君達はこの場から去っていった。
……
“はい江藤君犯罪者確定〜”
“協会のドローン、頑丈なの知らないんだな”
“なにせゴーレムが踏んでも壊れない、ドラゴンのブレスでも溶けない、だからな”
“ばっちり一部始終映っちゃったね。終わりだね江藤君”
コメントが流れる。何事も無かったかのようにドローンが浮かび上がる。
ちゃんと講習を聞いていれば解る筈だ。彼はやらかしてしまったのだ。
この後彼等は協会に行くんだろうが、果たしてどうなる事やら。
いやそれよりも迷宮だ。
「……さて、一旦戻るかこのまま進むか。堅実なのは戻る事ですが、異変を調べる必要性もありますし」
“それはベテランの探索者の仕事では?”
“けどこのおっさんならイケそうな気がする”
“それはそう”
“でも先ずは報告だろ”
“そんなん配信してるんだから協会の方も見てるだろ。それで報告してるようなもんだ”
視聴者も先に進む方の意見に流れつつある。
それに少しでも異常がないか確かめる必要もある。
「とりあえず表層のボス部屋までいきましょう。上層から下はベテラン探索者に任せる事にします。協会の方、もしこの配信を観てらしたら至急応援をお願いします」
やはり1人では出来ない事も多いし。
***
“アルミラージいるし”
“新人殺しか……表層にいちゃいけない奴ぅ”
アルミラージはホーンラビットの上位種にあたる。ホーンラビットよりも角が長く、その尖端は鋭い。この角で貫かれ、数多の新人探索者が死亡した事からついた渾名が『新人殺し』だ。
ただ……
「攻撃パターンがホーンラビットと一緒なんですよね……」
突進して角で貫く。角が長いか短いかでやってる事は変わらない。突進と同時に横に避ければいいだけの話だ。
しかもそのまま突進して迷宮の、ここでは洞窟の壁にまともに当たって昏倒する事もある。そうなれば後は簡単だ。遠慮なくスコップで叩いて終了だ。
「しかし、ホーンラビットの突進ならまだ可愛げがあるんですけど、アルミラージは角のせいで危険極まりないですね」
“それはそう”
“面もね、なんかね……”
“ちと凶悪というか”
“ぶっちゃけ可愛くねえ”
そう言えば、テイムのスキル持ちの探索者がホーンラビットをテイムしてモフってるとかどうとか。まあ女性には人気ではある。可愛いから。
凶暴だけど。
さておき、ドロップアイテムである。魔石の他に一角兎の角が落ちてた。
「確か武器の素材になるんでしたっけ?」
“短剣だな”
“ミセリコルデとかスティレットとか、そういう刺突用の短剣の素材”
“どっちも鉄製があるけどな。一応別の名前だった筈”
“ホーンドダガーやね。初心者御用達の”
売ればそこそこの値段になる。当然拾った。
あと肉は出なかった。残念。
***
表層なのに遭遇した上層の魔物は以下の通り(レッドキャップとアルミラージは除く)。
・ヒュージバット
バット、ケイブバットの上位種。翼を広げると軽く50cmを超える。攻撃力以上に回避能力が異常。大蝙蝠の牙、大蝙蝠の羽をドロップ。
・ウルフ
狼。現実でもあまり遭遇したくない犬科の生き物。ウルフ系はこいつが最弱なのだが、それでも上層に出現する。まあ下手なゴブリンよりも強いしな。狼の牙、狼の肉をドロップ。
・ポイズントード
凡そ30cm程の大きさの毒蛙。蛙系だとこいつが最弱だが、上層ではかなり危険。毒性は即死するような強い毒ではないが、準備を怠り、毒に侵され死亡する探索者もいる。アルミラージと双璧をなす『新人殺し』。蛙の頬袋、蛙のモモ肉、毒腺をドロップ。
……しかし頬袋って何の素材に使うんだ?
・ゴブリン○○
ゴブリンソルジャーやゴブリンアーチャーといった、なんらかの職種が名前についてるゴブリン。本来はこいつらが正統なゴブリン上位種。下手に武器を持ってるから普通のゴブリンより強い。特にゴブリンリーダーが一緒にいると統率が取れてて危険度が跳ね上がる。それぞれの職種に関する武器をドロップ。といっても粗末な剣とか粗末な弓とか探索者にとって実用性は皆無で、武器の素材になる。因みにリーダーは魔石以外何も落とさない。ふざけんなマジで。
“表層と上層の魔物がごっちゃになってんな”
“それに全部の上層の魔物が出るって訳でもないみたいだ”
“めんどくさいのいるけどな。毒蛙とか大蝙蝠とか”
“レッドキャップもあの時だけだったし”
“江藤君が全部持ってっちゃったんだよなぁ。結構良い値で買い取ってくれるんだっけ? 帽子もナイフも”
“確か血染めの帽子が2万、ブラッドナイフが1万2千”
“たっか”
まあ実際に彼らから買い取ってくれるかどうかは正直解らないのだが。今の配信も直接流してる訳ではないが、協会にリアルタイムで流れてるし。
さておき、地下5階、表層の一番下の階。階段を降りたら観音開きの大扉。ボス部屋に通じる扉だ。
「……それじゃあ、ボスに挑んでみようと思います」
“気をつけろよー”
“基本上層の魔物が出るんだけど、普通に出てきてたからな”
“一番多いのがゴブリンリーダーとソルジャー×2、アーチャー1、メイジ1の5体構成だっけ”
“それもう普通に遭遇してんじゃん”
“がんばえー”
“大丈夫、余程のことがない限り、このおっさんなら勝てる!”
“フラグ立てんなし”
何気に同接増えてる。10人は越えてる。勿論観ている視聴者の期待に応える為にも勝つつもりだ。スコップや安全服、異常がないか確認して。
「では、行きます」
観音扉を開けた。
キャラクター紹介
江藤朗、備前育美、椎名うるか
中村と同じ日に探索者になった3人組。大学生。江藤は髪を金髪に染めたチャラ男、備前は黒ギャル、椎名は白ギャル。
所謂陽キャ……なのだが、発言や態度を見る限り陽キャというよりDQN。
探索者を馬鹿にしていたが、同じ学部にいる探索者がそこそこ儲けている事を知り、探索者の道へと走った。
尚、3人ともまともに講習を聞いておらず、武器や防具がレンタル出来るのを知らずに武器を購入し、それで金が尽きてしまい防具を買わなかった(椎名だけは外套を買った)。当然記録用ドローンも借りていない。
3人とも迷宮適性はD、スキルは江藤が片手剣、備前が短槍、椎名が火属性魔法。
次の話で三馬鹿のざまぁまでいけるかな……




