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美少女に囲まれてタコパ

「あの、綾瀬あやせくん。真弥まやが私と綾瀬くん三人で遊びたいって言ってるんだけど」

「え、木村さんが?」


 この間の件があって木村さん(真弥)とは少し気まずい感じになっていたんだけど。

 木村さんから遊ぶ提案をするなんて……なぜだ!?


「それがさぁ、綾瀬くんにこの間のこと誤りたいってうるさくて……」

「そ、そうなんだ」


 後々考えたら木村さんがあんな声を出したのには理由があると思うのだが俺はまだいまいち分かっていない。

 それはもしかしたら俺の手が木村さんの胸にあたったせいであんな声を出してしまったのではないかということ。

 木村さんではなく俺が悪いという可能性も……なきにしもあらずということなんだけど。


「実川さん。それっていつ遊ぶの?」

「明日の日曜日」

「え、早くない!?」

「でも今日は家の用事があるらしくて、来週の休みまでは待てないって言うからさー」


 明日って、心の準備がぁ……


「それで、何して遊ぶの?」

「わかんない」

「え!?」

「家の住所教えてって言うから教えといただけなんだけど……」


 まさかこの部屋で遊ぶってことなのだろうか。

 それと実川さん、俺の家の住所勝手に教えちゃったんだ……

 彼女はクールで頭も良くて美少女なんだけど、たまに抜けてるところあるよなぁ。


「そういえば綾瀬くんって友達と遊んだ事あるの?」

「あるに決まってるでしょ!?」


 まぁ俺の友達と遊ぶというのは中学からの数少ない親友、高谷遊矢たかやゆうや限定なんだけど。


「外に遊びに行ったりとかするの?」

「いや、俺とか遊矢って陰キャだから大体中でゲームしたりアニメ観たりくらいかな」


 なんか俺たちって、The陰キャって感じだな……

 陽キャなら外でサッカーとかして遊ぶのだろうか。陰キャで体力のない俺には到底むりだな。三十分で体ボロボロになりそう。


「私はこっちの学校に転校してくるまではずっと家の中で外にもあまり出してもらえなかったから皆が羨ましいな」

「なんかごめんっ……」

「いや、私が聞いたんだから綾瀬くんは悪くないよ。だからこれから沢山思い出を作って今まで空いた分の穴を埋めて行きたいんだ」

「そっかぁ。なら俺も協力するっ!」


 今までずっと自由に生きてきた俺が言うのも変なんだけど。

 やっぱり有名大企業の社長令嬢ってのは彼女にとって少し窮屈だったんだろう。

 でもやっと自由になれたんだからこれからは目一杯楽しんで欲しいと思う。

 俺も実川さんの思い出の一部になっているのだろうか……


「ありがとう!だったら私も綾瀬くんを幸せにできるように頑張らないとなっ!」


 俺は実川さんにいつも幸せを沢山もらっているから大丈夫かな。




           ◆




 翌日の朝。


 俺は窓辺から入ってくる温かい光を浴びて目を覚ました。

 干しておいた洗濯物の隙間から細かい光が差し込んでいて綺麗に見える。

 実川さんは休みということもあって静かな息を吐きながら隣のベットで寝ている。

 改めて見るとやっぱり美少女だよなぁー。なんで俺みたいな奴がこんな子と一緒に暮らしてるんだろう……

 俺はそんなことを考えながらキッチンでコーヒーを作っていると。


 コンコンっ!


 朝からうちのドアをノックする音。

 その瞬間俺の顔がどんどん青くなっていく。


「実川さん!まずいよ、起きて!」

「ん〜。まだ8時だよぉ……どうしたのぉ?」

「もう木村さんが来たんだって!」

「えぇ!?」


 待たせると怪しまれると思った俺は玄関へと走りドアを開けた。

 そこに居たのは、やはり天然デカパイ美少女。

 何やら右手に大きなポリ袋を持っている。


「おはよぉー綾瀬くんっ!この前はごめんね。実はアレ……」

「ゴクリ……」

「綾瀬くんが私の……」

「言わなくていい!」


 慌てて俺は木村さんの話を遮り実川さんに聞こえないようにした。もし俺が木村さんの体に触れていたと知ったら長いお叱りを受けそうだから……


「じゃぁ、上がらせてもらうねー」

「えっ……今は、ちょっと」


 俺は木村さんお引き留めようとしたのだがスラリとかわされ、あっさりと中へ入れてしまった。俺は後を追ってリビングへ移動すると木村さんが目を丸くして実川さんをじっと見ている。


「ねぇ……綾瀬くん。なんで紗希がパジャマ姿でここに居るの?」


 これはもう誤魔化しようがない。

 でも一応……


「実はついさっき実川さんも家に来たんだけど、私服が今ないからってパジャマ着てるらしいんだぁ〜……」


 こんな作り話、信じるわけ――


「そういうことかぁっ!」

「「え?!」」

「早く来てるんだったら言ってよぉーもぉ」


 ウソだろぉ……こんな小学生でも分かるような嘘を信じてしまった……

 それにあのほわほわした表情は全く疑っていない。

 多分彼女は、天然じゃなくてただのおバカだ。

 実川さんもあまりのおバカさに腰を抜かして口を開けたまま動かない。相当衝撃的だったのだろう。


「それで木村さんが持ってるその袋はなんなの?」

「うん。今日は皆でタコパしたかったからスーパーでたこ焼きの材料買ってきたんだぁー」


 木村さんがなんで俺の住所を聞いてきたのかがやっと分かった。

 多分、たこ焼きをしたかったからだ。

 それにしてもタコパってあのリア充(勝ち組)がするたこ焼きパーティーのことだよな。俺みたいな陰キャがそんなものに参加してもいいのか!?

 実は俺も気づかない間にリア充になっていたとは……


「でもうちにはタコ焼きを焼くプレートがないけど」

「あぁーそれは大丈夫。スーパーでついでに買ってきたんだぁー」

「へっ?」


 まさか今日たこ焼きをするだけのために数千円するたこ焼きプレートを買ってきたのか……。

 俺がリア充の生体について考えている間、女子二人はキッチンで野菜やタコを刻み始めた。

 やることのない俺は、今のうちと思い実川さんがこの部屋に住んでいる痕跡を消す。

 リビングに帰ってきた時にはもうテーブルの上に沢山の具材が並んでいた。


「ねぇ、これってチョコレートだよね……」

「うん。タコパだから」

「でも生地にダシが混ざってるのに大丈夫なの?」

「大丈夫でしょ」


 具材の中にはチョコレート以外にもウインナーやキムチにエビなど沢山用意されているのだが肝心のタコが一番少ない。

 これがリア充がするタコパというものなのだろう。

 実川さんがタコ焼きをひっくり返すのに苦戦する中、隣の木村さんは手際よく進めている。まるでたこ焼き奉行。


「綾瀬くん。もうできたから食べていいよ」

「うん。でもどれにタコが入ってるのか分からないんだけど……」

「それがタコパの醍醐味だいごみなの!」

「はぁ」


 俺は言われるがままに何が入っているか分からない爆弾を箸で挟み口へと運ぶ。


「ゔ〜。チョコだった……凄い微妙」


 流石に作ってもらった側なので不味いとは言えない。

 味は微妙だけど食べる前のイメージと全然味が違い面白いと感じた。

 二人も楽しそうに食べているのでこれはこれでいいと思う。


「実川くん、次はこれ食べてみてぇー」


 木村さんが俺の皿に置いたたこ焼きは見た目はなんの変哲へんてつもないたこ焼き。安心しきっていた俺はたこ焼きを口に入れた瞬間、舌に激痛を感じた。


「ゔぇーごれ、なにいでたのぉ……」

「タコにタバスコかけて焼いたぁー」

「食材で遊ぶなっ!」


 実川さんと木村さんはキッチンに水を何度も汲みに行き苦しむ俺を見て吹き出している。

 それでも俺はこの空気が嫌いじゃないし、二人が笑う姿が何よりも嬉しいと思った。









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