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第43話 絶対的不可侵の領域

 前を走るのは、王の側近である灰白の猫。

 それを追うようにして、王の猫を抱えた猫の紳士は、シェルターへと続く通路を足早に駆けていた。

 もう一人の王の側近である縞三毛の猫は、王の衣装が汚れぬよう布の端を抱え、猫の紳士の後をぴったりついてきていた。

 通路の分かれ道に差し掛かったところで、灰白の猫は一度立ち止まり、少し薄暗い方の通路を指し示した。


「伯爵様、こちらでございます」


 猫の紳士はコクリと頷き、その通路を進んだ。

「シェルターとは、如何様なものなのだ? 数年前に訪れた時は確か、そんなものなど無かった」


 猫の紳士はその足を止めることなく、前を行く灰白の猫に尋ねた。


「はい。シェルターが完成したのは、1年ほど前になります。その仕組みは私の理解を遥かに凌駕(りょうが)していて、よくわかりません……。ですがそのシェルターは、ほんの数時間程度の効果ではありますが、黒き者にとって絶対的不可侵の領域になるそうです」


 すると後ろを走る縞三毛の猫が、続いて口を開いた。


「伯爵はん、ここ最近の城の情勢知らへんのん? 大災害の話とか、黒き者の話とか」


 猫の紳士はそのクセの強い口調に、少しむずがゆくなった。


「うむ。前回のお役目を終えてから、次のお役目までにかなり期間が空いていたのだ。だからわたしは、期間契約で水先案内人をして、そのいとまを過ごしていたのだ」


 後ろの縞三毛の猫は、それを聞いて納得したように頷きながら話を続ける。


「あぁーそうやったんや。ほんなら知らへんのもしゃあないわ。その辺の話は一応、機密事項扱いやねん。せやから城外には一切洩らさへんようになっててん。なんかヒトには全く影響ないらしくてな。いらん情報流して混乱させて、暴動とか起きてもかなわんやろ?」

「なるほど、確かに。だから城外や町にはそんな情報が一切入ってこなかったのだな」


 猫の紳士はなるほど。と合点がいったような表情をした。


「せやねん。まぁ簡単に説明するとやな、大災害が起きた後、城の北にある森から『黒き者』っちゅうバケモンが現れよってん。そいつがまたエラいめんどくさいやつでな。ちょいちょい森から出てきて、猫たちを次々と食い散らかして行きよんねん」


 後ろの縞三毛の猫がそう言い終えると、今度はまた前を行く灰白の猫が話し始めた。


「もともとこの国には、唯一無二の存在である英知にあふれた博士が一人おりまして。その博士の積み重ねた研究の成果によって、黒き者を凌ぐためのシェルターが開発され、城の東側に建築されたのです」


 前と後ろで交互に話す側近の猫たち。猫の紳士はきょろきょろと落ち着かない。次に口を開いたのは、妙に猫の紳士に馴れ馴れしい後ろの縞三毛の猫だ。


「わいはあんまり頭がアレやからアレやねんけど、その博士はリンネサイクルのプロセスカイゼンってのに貢献したっちゅう、我が国を誇るあらゆる学問の権威らしいで。城の西側にはその博士の研究施設があるんや。ほんでな――」


 まだまだ縞三毛の猫の話は続きそうだったが、前を行く灰白の猫が突然、堅牢そうな扉の前で立ち止まった。

 両開きの大きな扉の右側には、手のひらサイズの液晶パネルが怪しく光っていた。


「このパネルは、猫の肉球にしか反応しないようになっているのです」


 そういうと、灰白の猫は肉球をパネルにかざした。


 ゴゴゴゴゴゴゴッ…………。


 大きな唸り声をあげながらその扉は開く。


「着いたで。ここがそのシェルターや」

 縞三毛の猫はどや顔でそう言った。

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