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何かが壊れる音がした
なんだかんだで、彼の家に来た。
あんまり人が多いところに長時間いたくないらしい。
私は本来なら見知らぬ人の家になんて上がらないのに。
なんでかな。
「コーヒーがいい?紅茶がいい?」
ソファーに座らせられた私に彼が尋ねる。
「紅茶で…」
本当は私がお礼をしようと思っていたのに!
なんだか申し訳ない。
ソファーに並んでお茶を飲む。
初対面の人とは思えないくらい、のんびりとした、おっとりとした時間が流れた。
「カップ、洗うの手伝います」
二つのカップを台所に運ぼうとした彼に声をかける。
「いいよ、座ってて」
ね、と微笑まれた。
それから、すぐに彼は戻ってきた。
どうやら流しにカップを置きに行っただけのようだ。
後ろから足音がする。
私は振り返る。
そして、その瞬間。
触れ合ったそれを、私はなぜだか離す気には慣れなくて。
何かが壊れる音がした。




