1・死と転生
二番煎じどころか、三番、四番な気もしますが、異世界転生ものを投稿開始させていただきます。この作品は、月二回十五日と月末の更新になります。
作中に、『レーゲンボーゲン』の名前が出てきますが、『虹の架け橋』が未読でも読めます。
その日、ゴールデンウィークが終わった、五月の初め。仕事が定時で終わり、私、荒坂恵美子は、嬉々とCDショップに駆け込んだ。四月からは新入社員も入ってきたが、研修中なので、まだ定時で帰れる。その後、各部署に配置されて忙しくなるだろう。
こうして、足早にCDショップに駆け込んだのは、今日発売日のCDを手に入れるためだ。大好きなレーゲンボーゲンのCDが目的だ。予約もしていて後は受け取るだけだ。スマホにダウンロードしても良いのだが、好きなCDは手元に置いておきたい派だ。すべの楽曲はスマホにも入っているし、CDもDVDもすべて持っている。ライブにも、もちろん、行くつもりで、チケットは既に入手済みだ。ファンクラブにも入っているくらいの筋金入りのファンだと思っている。
大好きなレーゲンボーゲンという二人組デュオは、三月に活動を再開してくれた。そして、再開後初のCDが発売される。
嬉々として、購入出来たCDを大事に抱え込む。聞くのが本当に楽しみだ。しかし、購入したCDはすぐには、聴けないのでスマホにダウンロードしてある他のアルバムを聴く事にした。私にとって、仕事で疲れた頭と、心、体への最上級の癒しの時間だ。
それが、悪かった、いつものことだからと、油断した。横断歩道の信号は青、車両側の信号は赤、確認したはずだった。赤信号で突っ込んできたトラックは、止まる事なく私に向かって突っ込んできたのだった。避ける暇さえなかった。薄暗い一番見通しの悪い時間帯。人の多い交差点ではない、そのためにトラックの運転手も黄色から赤に変わった信号に気付きにくい状況だったのかも知れない。
吹き飛ばされた瞬間、私の意識は闇に落ちていった。
歩きながらのイヤホンは、今度生まれ変わる事があったら、絶対に止めようと思う。そして、新しいCDは聴くことも、ライブに行けないのも、動く姿を見る事さえ出来ないのが、本当に心残りだった。さようなら、私の大好きな人。ああ、浅生くん、さようなら、私の大好きな浅生くん。
* * *
ゆっくり覚醒すると、飛び込んできたのは見慣れない天井だった。自宅でも実家でも、病院でもない。頭には、鈍い痛みがあるが、手は動かすことが出来た。伸ばした手を見つめて、何か分からない違和感があった。
自分はあの時、交通事故に遭ったはずだ。ぶつかったのがトラックなら、体は即死を免れないし、痛みだって、相当なもののはずだ。それなのに、何かがおかしい。
綺麗な、手だった。どこも荒れていない、白い綺麗な手。自分の手ではない。私の手よりもずっと小さく細い。月一で手のケアはしているが、それでも、すぐに仕事で荒れてしまう。乾燥肌なので、保湿クリームが手放せない。そんな、手のはずだ。
「ああ! レミリアお嬢様、お目覚めになりましたか。お体の調子はいかがでしょう。今、お医者様をお呼びしますね」
どれほど、心配していたのか、ベッド脇で、その人は、瞳に涙を溜めながら、私に声を掛けた。今時見掛けない、それこそ、漫画の中でしか見たことない、メイド服を着た綺麗な人だった。いや、そこまで、詳しくは無くて、友人の受け売りだ。金茶の髪を頭の上で結い上げ青色のリボンが似合っている。何故、メイド服を着た人が私をお嬢様と呼ぶのだろう。
ゆっくりと、部屋を見回す、白を貴重とした、見慣れない家具が目に入る。どれも、高価な物ばかりでとても可愛らしい。しかし、見たことのないものばかりだった。
それと、手を動かした時に気付いた、さらりとした肌触りの良い服は、シルク製のネグリジェだろうか。ネグリジェなんて着たこともない。
少しずつ、状況が掴めて来た。今いるここは、私の死後の世界だ。転生っていうのかな。私は。すぐに転生する事ができたことになるのだろう。でも、ながら歩きを止めよう、という私の目標は立たれてしまったように思う。だって、この場所は違う。今まで、私が居た場所とはとてもかけ離れた場所。まるで、御伽話の中、ライトノベルの中、漫画の中のようなそんな世界だった。なんだろう、冷静に状況把握出来ているのは、ベッドの上だからなのかもしれない。それと、私に色々なことを教えてくれた友人の顔を思い出していた。
レーゲンボーゲンは、私の他の作品に登場する登場人物になります。『虹の架け橋』の方は、ファンタジー要素はありません。




