続く才能
「流石亮くんだ!」
「そうですね、まだ最初ですからこれからが楽しみですね!」
『家族』の配信時間から3時間が経った頃に福本さんと奥田さんにそう言われた。3時間で、SNSの総再生回数23万回だった。侑李さんのMVより2倍ぐらい多い。今の侑李さんは増えているが最初の頃と比べたらそう言える。
「音楽サイトでのトレンドも入っているな!」
そう福本さんは笑っている。音楽サイトなどを合わせて前SNSに配信していたから音楽サイトのトレンドも分かるのだ。今は50位以内に入っている。流石に早い気がするな。
「うちの事務所では初めての快挙だな」
福本さんがそう言った。音楽サイトではリリース数時間後で、ランキング50位以内の人は老若男女誰でも知っている歌手が数人いるだけだ。
「ネットでも凄い事になってますよ!」
奥田さんがそう言いながら携帯を見せてきたので見てみると俺は驚いて声が出なくなっていた。
「凄いな!」
福本さんは褒めながら笑っている。俺からすると初めてな事すぎて笑い事じゃないけどな。どのサイトでも俺の名前がトレンド入りしているし、侑李さんより良いってコメントも見かけるがこれは申し訳ないな。そう思っていると福本さんが声を出した。
「携帯が鳴ってるが大丈夫か?」
「違います」
奥田さんは否定するので俺は携帯が入っているポケットに手を当てると揺れていたので自分のだと気付く。それを見た福本さんは出てと言わんばかりのジェスチャーをしているので俺は携帯に耳を当てると聞いた事のある声がした。
「気にしなくて良いからね!」
「何の事?」
「亮くんの事だから僕より良いって意見の人がいる事気にしてそうだからね?」
電話の相手は侑李さんだった。エスパーなのか?何故違う場所にいるのに分かったんだ……
「僕より上手いの分かってるから勧めたんだよ」
そう侑李さんが言って電話は終わった。特に用事もなくそれだけ言いたかっただけなのか。
「亮くんの才能に嫉妬なんてないさ、それにその才能の持ち主が作詞作曲してくれてるんだ、最高に嬉しいだろう」
福本さんはそう言ってくれているがそこまで言われる程なのか?
「MVのコメント欄です」
そう奥田が俺の目の前にスマホを置いたので見ると凄い、コメントが来ている。歌が上手い以外のコメントを注目してみた。
歌もだけど作詞良くね?
曲調がいいから落ち着いて聴ける
歌が上手いだけじゃなく他の所にも手が込んでるのが分かります!
何で、曲提供してるんだろ?この人が出した方が売れる気がする……
「亮さんが音痴と思っていても、他の人は違うんです、それに大体の人が歌声に元気を貰ったって人が多いです」
そう奥田さんが言った。『家族』以外の曲はMVにはなっておらず、音楽サイトにだけ配信しているので、ネットで調べて俺にそのコメントを見せている。確かに、歌もだが作詞作曲も褒めてくれる人が多い。歌が上手いだけじゃなく他も良いから嫉妬的コメントの様なアンチは少ないのか。
「アンチは何処にでもあるから気にするな」
そう福本さんは言った。俺はわかりやすいのか。
「亮さんは顔に出やすいですし、今見てるページがアンチに関してだったので分かりますよ」
そう奥田さんが説明してくれた。
「では、私はやる事があるので失礼します」
そう言い奥田さんは去った。福本さんが咳き込みをして話し出した。
「奥田くんはテレビの仕事を取りに行った」
「侑李さんのですか?」
俺の質問に福本さんは、大爆笑している。
「亮くん、君のだよ」
え、俺の?
「君はまだ、理解してない様だ」
「理解?」
意味が分からなかったのでそのまま繰り返した。すると、真剣な目をしていた。
「君の魅力は作詞作曲力だけじゃなく、歌唱力もだ、侑李くんと亮くんは表現の仕方が、全くちがうんだ」
そうなんだ。俺は自分の事だからどんな歌い方は分からないな。今も自分の声を聞くのが嫌だから聞いてないしな。
「2人とも表現力が素晴らしいんだ、侑李くんはがなり声で熱く、亮くんは落ち着いた感じだね、
しかもこの曲は侑李くんに合わせて低く作ってないかい?」
「はい、声的に低い方が楽かと思ったので」
今回俺が作った曲は全て音域が平均より少し低い。侑李さんの歌を聞いてると高い曲を歌ってるのが少なかったからだ。
「自分が歌うと思って一曲作ってくれないか?」
「分かりました」
断る理由がないので了承した。俺的には最初はこの波に乗った方がこれからが楽だと思った。どうせすぐに終わる流れだろうし。
この考えが甘かった事を後々知る俺である。
「では、レコーディング場所は前と同じで頼む!」
そう言われたので今話している場所にレコーディングスタジオがあるので今日もそこを借りて曲を作る予定だ。多分高くて歌えない曲になりそうだが大丈夫なのかが心配だ。カラオケランキングには入らなそうな曲だな。
「嘘をつかないでください!」
「ついてませんよ」
「証拠はあるんですか?」
「はい」
今母は、福本さんに電話した。今は、高校に俺が音楽活動をする事を言いに来ているが嘘だと思われている。
「大変申し訳ありませんでした」
福本さんの説明で分かってくれたようだ。母はこうなる可能性を考えて福本さんと連絡先を交換していたんだな。
「こちらでフォローしますのでよろしくお願いします!」
その後、普通の会話をして終わった。そして俺は今日もレコーディングスタジオに来ていた。曲を完成させるためだ。作詞は出来たが曲調が、分からない。自分の音域が分からないからだ。カラオケに行き、音域を調べながら地道にやって行こう。
次の日から俺のカラオケ生活が始まった。とりあえず歌える曲を歌い自分の音域を知った。高い事が分かった。女性曲を余裕で歌い、最高98点だった。これは加点込みの点数だ。カラオケが上手いだけという可能性もあるので要注意だな。
そして数日が経ち自分の音域も分かり曲を作って行った。そして高校の入学式の日になっていた。上村も同じ高校の為に一緒に登校した。その日は何もなく終わった。教師も俺の事は言っている為に特に何も言われる事はなかった。
「よし、やっと出来た!」
入学式から数日が経った今、やっと曲が出来た。いつもより時間がかかった気がする。自分の中では満足出来たが他人の評価はどうなんだ?
ちなみに、奥田さんがテレビの仕事を取りに行ってたが無理だったみたいだ。あの曲は侑李さんが歌うのが良いみたいだ。やはり俺では無理だったのか。まぁ、思っていた事だが悔しいな。
『家族』は歌詞と俺の表現力が合ってないみたで、評価は落ちている。
しかし、今回作った曲が俺の考えを変える一曲で人生も変動させる事を今の俺は知らないしそんな事無いと思っているのである。




