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義理チョコキングと頑張り屋さん ~心優しい二人が寄り添っていく、幸せに包まれた半同棲生活~  作者: バランスやじろべー
第三章前編 恋の自覚

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第92話 友人への相談 ~桜季ver~

「くみちゃんせんせーっ! 買ってきたよーっ!」


「ありがとーっ! ああっ、このカツサンド、食べたかったのよねー」


 昼休み、桜季と美鈴は購買で購入したパンを手に久美子の教員室を訪れていた。

 これから話す内容は他の人には聞かれたくない、しかし手頃な人気の少ない場所というのに心当たりがなかったので、美鈴の提案により久美子の教員室を使うことにした。

 ちなみに久美子に対しては、美鈴が午前中の休み時間の内に『くみちゃんせんせーっ! アタシとサッキーで内緒話があるから教員室使わせてーっ! 前に食べたいって言ってたカツサンド買ってくるから!』という交渉が行われたわけだが。


「いただきます」


「いただきまーす!」


 昼休み、桜季と美鈴は二人、久美子の教員室で昼食を食べ始める。

 普段であればもっと大勢で食べるのだが、今日に限っては相談の為に二人と教員室の隅にいる久美子だけだ。

 いつも食べている友人達も、事情が分かっているのかニコニコと送り出してくれた。

 これから話す内容は他の人には聞かれたくない為に、久美子の教員室を借りることにした。


「サッキー。その肉団子、一つちょうだい」


「うん、いいよ」


「ありがとー。お礼に後でアップルデニッシュ少しあげるね」


 ちなみに桜季は蓮と共に作った弁当だが、美鈴の方は購買で購入したパンだ。

 二人で美味しく昼食を食べる。

 一見すればなんてことない昼食。

 普段とは一緒に食べる人数が違うことくらい。

 食後に待っている重要な話を前に、緊張の無い空気が作られていくことは桜季にとっては有難い。

 食後のお茶を飲んで一息つくと、美鈴は桜季の方へとずいっと体を乗り出して来た。


「それでそれで! サッキー、蓮さんのこと……!」


「うん……。好き……。わたしは、蓮さんのことが、好き…………」


 恥ずかしさで顔から火が出そう。

 それでもしっかりと自分自身の言葉で、目の前の友人へとそう伝える。

 言い終わると同時に顔が熱くなり、思わず両手で覆ってしまう。

 指の間から美鈴を見ると、美鈴はぱあっと顔を輝かせてよりこちらへと迫って来た。


「うん! サッキー、やっと自覚したんだ!」


「や、やっとって……?」


「いや、だってサッキー、ずっと前から蓮さんのこと好きっぽかったもん。自分では気付いてなかったんだろうけどさ」


「え…………!?」


 美鈴の言葉に、桜季は顔を覆っていた両手を離し、目を見開く。

 自分で自覚したのがつい昨日、それよりも前から自分でも気が付いていなかったこの気持ちを美鈴は知っていたということ。


「うぅ…………。わたし、そんなんだった……?」


「うん。もうすっごく分かりやすかった!」


「そ、そんなに……?」


「そんなに!」


 ニコニコと頷く美鈴。

 桜季としては確かに恋心を自覚したのは昨日だが、美鈴に言われてみれば、それはもっとずっと前からだった気がしてくる。

 蓮に笑いかけて貰って嬉しかったり、エマが蓮に抱き着くのを見て嫌な気持ちになったり。

 ずっとずっと自分を隣で支え続けてくれた優しく大切な人。

 恋に落ちるには充分だった。


「……うん。わたし、蓮さんのことが好き…………」


 再び繰り返して口にする。

 すると美鈴はうんうんと満足そうに頷きながら、桜季に抱き着いてきた。


「ちょ、ちょっと美鈴!?」


「あはは。サッキー、可愛い!」


「か、可愛いって……!」


 美鈴に言われても嬉しくはない――わけではないのだが、その台詞はやはり蓮から言われたい。

 蓮に可愛いと言ってもらうことをつい想像してしまう。

 とたんに頬が緩んでしまい慌てて引き締めようとするが、それよりも早く美鈴はにんまりとした笑みを浮かべていた。


「あれ、どしたんサッキー。蓮さんに可愛いって言われるの想像しちゃった?」


「な…………!」


 エスパーか、そう思わずにはいられない。


「話を戻すとさ、自分の気持ちに気付けたのは良かったと思うよ」


「うん。わたしもそう思う」


「それでさ、サッキーはどうするの?」


 その言葉に室内の空気が変わった。

 楽しそうで、それでいて真剣な問いかけ。

 少し考えて、桜季は自分の思ったことを口にする。


「…………どうしようかなって悩んでる」


「どうしよっかなって……。蓮さんに告白するんじゃないの?」


 意外そうに首を傾げながら聞いてくる。

 とはいえ桜季としても、それはまだ早いと思っている。

 なにしろ恋心を自覚したのがつい昨日のこと。

 そこから今朝一緒に登校するのでさえ緊張で一苦労したのだ。

 正直これから先の考えなど頭の中には一切ない。


「えっと、その辺りのこと、相談して大丈夫?」


「うん! 何でも言って!」


 そう言って美鈴はどん、と胸を叩いた。

 その時に揺れた美鈴の胸を見て、少しだけ嫉妬してしまう。

 やはり、美鈴やエマのように、胸が大きい方が男の人にとっては魅力的なのだろうかと。


「サッキー?」


 自覚無い美鈴が不思議そうに問いかけてくる。


「あ、うん、ごめんね。その、告白について、考えはしたんだけど……」


 昨晩、ベッドの中で考えた。

 蓮恋人同士になりたい。

 恋人として同じ時を過ごしたいと。

 その為に必要なのは、自分の想いを伝えること。

 しかし――


「蓮さんが、わたしのことをどう思っているのかって考えると――」


 胸に手を当て、服の上からネックレスに触れながら考える。

 自分は蓮のことが好きだ。

 しかし蓮がこちらに対しどのような想いを抱いているのかは分からない。


「わたし、ずっと蓮さんに助けてもらってばかりだったから」


 出会ってからずっと、蓮には助けられてきた。

 それが、積もり重なって恋心を抱くまでになった。

 だが――


「わたしがそんな事言ったら、蓮さんを困らせるだけじゃないかって…………」


 自分で言って胸が痛む。

 自分が蓮を好きになるだけの理由は充分すぎるほどある。


「一方的に蓮さんの優しさに甘えるだけで、わたしは蓮さんに何も返せていないから……。そんなんじゃおこがましいんじゃないかって……」


「ねえサッキー」


「え?」


 気が付けば美鈴は不満げに口をとがらせて、軽く睨むような視線を向けていた。

 そしてびしっと指を突き付けてくる。


「あのさ、蓮さんがそういうこと思うような人だって思ってるの?」


「そ、それは……」


「蓮さんがさ、優しさの貸し借りなんて考えるような人じゃないのはサッキーだって分かってるでしょ?」


「そ、それは……うん……」


 これだけ助けてやったのだから、こちらにも同じだけの対価をよこせ。

 そう主張する人は確かに存在するが、蓮が逸れに当てはまらないのは桜季にも充分すぎるほど分かっている。


「サッキーがさ、今告白しても、蓮さんが受け入れてくれないんじゃないかって不安になるのは分かる。でもさ、与えられた物と同じだけの物を相手に与えなきゃ、何て考えは駄目!」


「…………」


 美鈴の言葉に、桜季は黙り込んでしまう。

 そんな桜季に、美鈴は優しく笑いかける。


「ねえサッキー。蓮さんはさ、サッキーと一緒にいる時どんな顔してる?」


「…………どんな顔って」


 突然の質問に、桜季は戸惑ってしまう。


「アタシはさ、サッキーといる時の蓮さん、凄く楽しそうだと思うよ」


 美鈴の質問に、桜季はこれまでの蓮との時間を思い返してみる。

 一緒に料理をしている時。

 家庭科部で活動している時。

 部屋で話をしている時。

 蓮はいつも自然な笑顔を浮かべていた。


「蓮さんも、サッキーといる時間を大事にしてると思うけどな」


 その言葉に桜季は少しだけ胸のつかえがとれた気がした。


「……ありがとね、美鈴」


「にひひ。どういたしまして。それで、心の内は決まった?」


「うん……。いきなり付き合うとかじゃなくて、今よりももっと蓮さんの近くにいる努力をする。蓮さんが楽しめるように、安らげるように」


「うん。それで充分だと思うよ」


「……頑張ってみる」


 小さく、しかし確かな声でそう宣言した。


「うん。応援してる」


「アドバイス、ありがとね」


「また何か悩みあったら言ってね。こんな風に話すだけでも楽になるしさ」


「うん。頼りにしてるね」


「まっかせて! まあアタシはそもそも恋愛経験ないんだけど」


 あはは、と二人で笑い合う。

 すると、昼休み終了を告げる予鈴が鳴り、二人で席を立つ。


「サッキー。頑張って」


「うん。頑張る」


 そう言ってコツリと拳を当てる。

 そう、まずは蓮の近くに。

 そこから始めよう。



 ✿



「ねえあなた達、私の存在忘れてない?」


 教員室の隅からぼそりと久美子のツッコミが入る。


「いやー、くみちゃんせんせーはなんだかんだ言って信用してるし」


「はい。先生になら聞かれて困ることでもないですし。……恥ずかしいですけど」


 駄目な所もあるが、なんだかんだで人としては信用しているのだ。

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― 新着の感想 ―
同じアパートにこういう暮らしているが! くみちゃんはアパートでの絡みは徹夜して寝込んだ時だけ サキ達側との絡みは無いっていう点が、、、、
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