↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
義理チョコキングと頑張り屋さん ~心優しい二人が寄り添っていく、幸せに包まれた半同棲生活~  作者: バランスやじろべー
第二章後編 お菓子を作る理由

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/101

第71話 ウチに泊まるか?

「はーっ、美味しかったなあ」


 店を出ると、蓮は満足げに呟く。


「うん! もう大満足!」


「はい。とても美味しかったです」


 エマと桜季も同意するように笑顔で頷いた。

 食べたスイーツはどれも美味しかった。

 甘い物は別腹というか、気が付けばお腹がいっぱいになるよりも先に、制限時間が来てしまった。

 時間の経過を早く思えたのは、スイーツだけではなく三人での楽しい会話のおかげであったとも思うが。

 スイーツバイキングの後は三人で周辺の店を見て回る。

 雑貨店をはじめとした駅ビル内の店を覗いているうちに、あっという間に時間が過ぎていく。

 気が付けば外の景色は茜色に染まり始めていた。


「もう夕方ですね」


 桜季がスマホで時刻を確認しながら呟く。


「ほんとだ! 時間経つの早すぎない?」


 エマが外の景色に驚きの声を漏らす。

 蓮としてもそれは同感だ。

 こうして三人で過ごしていると、本当に時が経つのが早い。


「それじゃあ今日は終わりにするか」


「そういえば、エマさんはこの後どうする予定なのですか?」


 すると、桜季がふと思いついたかのように疑問を口にした。


「ん?」


「遠くから来られたのですよね? 帰りの時間は大丈夫ですか?」


「あー、今日は帰らないよ?」


 桜季の質問に、あっけらかんと答えるエマ。


「一泊して明日帰る予定!」


「そうなのですか」


「うん! 明日はレンが働いてるエクラ・デュ・マタンに行く予定!」


「ああ、なるほど」


 蓮の働くエクラ・デュ・マタンのオーナー兼パティシエである陽翔は大きな実績を持っている。

 エマとしては、本日のスイーツバイキング以上に楽しみだと言っていた。


「でも、一泊するにしては荷物が少ないんじゃないか?」


 エマが手にしているのは近場に外出する程度の大きさのバッグのみ。

 着替えや諸々、もっと必要な物があるだろう。


「それは大丈夫。駅のロッカーに預けてるから」


「ああ、なるほど。で、どこ泊まるんだ?」


 泊まる場所によってはここで別れるか、それとももう少し自分達と一緒にいるか。

 そう思って問いかけた蓮だが、エマの答えは予想外の物だった。


「まだ決めてない!」


「は?」


 即答したエマに、思わず蓮は固まってしまう。

 隣を見ると、桜季も目を丸くして信じられないというような表情をしていた。

 いや、事実信じられないのだろう。


「決めてないって、どうする気だ?」


「んーっと、適当にホテルでも当たろうかなって」


 その回答に、蓮は思わず頭を押さえてしまう。

 思い込んだら猪突猛進な所があるのは知っていたが、まさかここまでとは思わなかった。


「エマ、お前未成年だろ? 基本的に未成年一人でホテルに泊まるのは無理だぞ」


「えっ!? そうなの!?」


 基本的にはそうだろう。

 保護者の同意書でもあれば話は別かもしれないが、この様子ではそれも怪しい。


「両親は良く許可したなあ」


「あー、それがね……今、ワタシの両親海外。そっちの方で材料の交渉中。まあすぐに戻るはずだけど」


「店は大丈夫なのか?」


 エマの両親が洋菓子店を経営していることは蓮も知っている。

 このゴールデンウィークという大盛況間違いなしの期間に大丈夫なのだろうか。

 そう思ったのだが、エマは笑って首を横に振った。


「うん。お店の方は職人さん達で充分だって。それ以上にちょっと仕入れの方で色々あるみたいで」


「なるほどな」


 フルーツをはじめとする材料は、日本国内では手に入りにくかったり、素材をこだわって海外から輸入するというのは不思議ではない。

 現にエクラ・デュ・マタンでも同じようなことをしている。


「ワタシはそっちについて行く必要なかったから日本に残ったんだけど」


「マジかよ……」


 蓮はどうするべきかと頭を悩ませる。

 一方でエマも顔から笑顔が消える。


「……ネットカフェに泊まろうかな?」


「未成年の深夜利用は無理」


「マジで?」


「マジだ」


 蓮の言葉にエマは分かりやすく肩を落とす。

 どうやら本気で何とかなると思っていたらしい。


「その、随分と大雑把な計画だったのですね……」


 微妙な表情で、言葉を選びながら桜季が呟く。

 蓮に言わせれば、それは大雑把を通り越していると思うのだが。


「だって何とかなると思ってたんだもん!」


「なるわけないだろ」


「ううーっ。じゃあ駅のホームで――」


「却下」


 エマのような美少女がそんなことをしていては、良からぬことに巻き込まれないとも限らないので即座に否定する。

 唸りながら頭を抱えるエマ。

 その様子に蓮は、小さくため息を吐く。


「仕方ないな。ウチに泊まるか?」


「「え?」」


 蓮がそう提案すると、桜季とエマ、二人の声がハモった。

 しかしその声色は明らかに違う。

 希望に喜ぶエマと、驚愕する桜季。


「いいの!?」


「まあ、一応ねーさんに確認してからだけどな」


 今、蓮は一人暮らしをしているが、決して自立しているわけではない。

 実質的な保護者である旭の保護下で生活している。

 泊める相手が凜なら問題はないのだが、エマを一晩泊めるとなるとさすがに先に話を通した方がいい。

 事情を話せばおそらく反対はされないだろうが。

 スマホを手に取り旭へと連絡。

 幸いなことにすぐに通話は繋がった。

 事情を説明すると、旭はすぐに許可を出してくれた。


「いいってさ」


「やった! それじゃあ蓮、早く行こう!」




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 喜ぶエマとは逆に、桜季は不安に駆られてしまう。


(え、ええっと……つ、つまりエマさんは蓮さんの部屋にお泊まりするってこと……?)


 こともなにも、それ以外にないだろう。

 その事実に胸が締め付けられる。

 蓮はただ親切心から提案しただけ。

 そう、それこそ以前自分を助けてくれたように。

 しかし――


「桜季? どうしたんだ?」


 少し先を歩いていた蓮が振り返って尋ねてくる。


「あ、いえ……。すみません」


 桜季は慌てて二人の後を追う。

 胸の奥のもやもやは、より一層強くなっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。