第三十四話 三速激走その3
この話、意外と伸びてしまっている。そろそろ新しい話をしたい。
前回のあらすじ
今まで寝ていた谷相が乱入し3人となった五雹ドーム。邪魔をされた谷賢は相も敵として考えて『能力解放』による短期決戦を選択する。木戸と相は利害の一致で谷賢を殺すことで一時的に共闘するが、それでもなお谷は善戦し木戸は距離を空けその時に相は攻撃するが、能力のリロードの隙で相はピンチに陥る。
(やっぱりそうせざるおえないか)谷はこの事を読んでいた。最後の反撃をされないよう距離を置く。
沈みゆく相を見届けながら、1人ドームに立っている。やがて相は完全に背を地面に接して倒れた。倒れた場所から段々と体から血が流れている。
(もうじき死ぬか)谷は一歩ずつ近づく。既に、戦闘は終わったと確認した。
解除 そう言わずとも能力が解除される。
谷は能力が体から強制的に力が抜けていく感覚が伝わる。勝負あり確実に手ごたえを感じ刀を鞘に納める。
能力の解放は一度発動すると能力の100%を発揮する代わりにしばらくの間、能力が使用不可になる。そのため必殺技などのこのタイミングで勝つために発動するのが一般的である。
逆に考えると、能力の必殺技を耐えればその能力者は、ある意味丸腰となる中で、それを気にせず一歩ずつ近づき言う。
「お前の能力は、自分が貯めたいる溜めを開放してフルスピードを発揮する貯蓄タイプだ。その反動で溜めが無くなったらお前の身体にラグが発生する。お前が本来なら木戸のすぐ後に銃弾を2発、一度に撃てるのに間があったのはそれが原因だ」
(……やっぱり、ばれていたのか…………)相も自分自身の弱点を知っているが、兄の賢には言ったことはない。
「そして俺たちleftにはそれぞれタイプがある。俺の場合、フルスピードしか出せない木戸と比べたら簡易的な能力だ。それにしてもあの時は、危なかった」
やっぱり、兄は強い。兄に勝る弟はいない。全くもってその通りだ。だが、
「まだ終わっちゃいないィ!!」声を振り絞り再び自分の足で地に立った。既に、攻撃を受けての大きく裂かれた服とその部分以外にも血が染まっているため正直言って限界に近かった。
ぽたぽたと、体に染み付いた血が床へと落ちていく。その周りは倒れた時の血が池のようになり余計に酷いことになっている。
「……これ以上やるのか……」少し予想外の行動を見て谷はそう言った。本当に実の弟を自分の手で殺す。今まで、この瞬間を待っていたのに何故か躊躇してしまう。
理由はわからないが自分の勘が止めている。再び交えるか少し迷うが歯を食いしばる。
「やるか………………」これはある意味チャンスである。鞘に納めている刀に手をかけ寄ってくる。
理由は二つ。一つは、近距離戦での谷の刀のリーチの長さ。もう一つは、お互いに能力解放によるクールタイム。
(だが、クールタイムにも個人差があるがもう少しで使えるようになる)
そのため条件を見るとこちらに分がある。
「死んでも文句なしだ、!クソ兄」
「分かってるよ、弟!」お互い、天井を塞がれたドーム内で、にらみ合う。
さいしょの一歩を踏み出し『能力発動』!!!
谷の2歩目の加速で一気に相の間合いに入る。
(確実に殺れる…!)谷は最初からフルスピードの『スピード』で首めがけて刀を抜刀する。まだ相は、動いておらず反応すらしていない。そこから話は速かった。
抜刀をし、切られた本人が首を切った事を知らずに切る。この一瞬の出来事では、どんな人間でも反応できないため、彼の能力が可能な抜刀技の一つである。そのまま刀を納めて勝負はついた。
この瞬間約一秒未満である。
「すまないな……弟、お前さんを……………… 振り返りながら死んだ弟に向けて言ったがそこには切られたはずの相は居なかった。
(まてどういうことだ⁉)彼の目には確かにその場にいたはずの相は消えていた。
「馬鹿な!クールタイムの時に確かに切ったはず何で」警戒して、また刀に手を伸ばす時、彼の耳元から声が聞こえた。
―それ残像だよ―
⁉とっさに頭で考えるより背後を向けて切る。
そのはずだったが、
「え?」そういう間もなくいつの間にか視界が全て逆の方に見えて地面に落ちた。
「首………切らせてもらったよ」刀を手元に持ち谷が使っていた刀で切っていた。
「あ、でも聞こえないか」斬首の死に方で死人には聞こえない。意識はもうないのだから。刀に付いた血を、はらい奪った鞘に納めた。
谷賢 弟の相に首を切られ死亡。
「確かに兄さんの読みは当たってたよ。だけど、僕の場合、ここ数年の溜めを開放する事で光速に近づくとこができた。僕はまだ、能力を解放したままだったからできた技だ」刀を腰辺りに上手いことバランスで保っている。
「……ところで………………木戸、だっけ?」谷から散弾を撃たれ、倒れて動けない木戸にとどめを刺そうとこちらに歩いてくる。隻腕で血を体内から血を吐き出していてもまだ立っている彼に果たして勝てるのか?木戸の脳内で考察を繰り返し自問自答の回答をする。
だがすぐ前に相は、心臓を突き刺す体勢になる。
「終わり」相は木戸の心臓に向けて刺す。
だが、少し風が全身に感じたがそれは風ではないとすぐに分かった。
「流石に1人は、やらなきゃな」相の横に立ちナイフを持っている。満身創痍の中でも立ち上がる。
「お互い、限界だな」相は横の木戸に体を合わせ向かい合う。
『能力発動』
「準備は済んだな」その言葉に頷く。
「じゃあ、始めよう」その掛け声で、2人は、構える。
一触即発の状態。「ファイナルラウンドだ!」
相の声と同時にドームの天井が崩壊する。二人は動きを止めて上を見上げる。
((一体なんだ!))崩壊する最中、木戸の目に確かに見えたものがあった。落ちていく瓦礫の中に人が混じっていることに。
最初に一番大きい瓦礫が地面に落ちそれに続き破片が続いていく。この崩壊から芋づる式に更に崩壊が拡散している。
(第三者?敵?味方?)この状況で、その余裕があるのか分からないがとにかく警戒しなければならない。
(如何やら気付いたか…)木戸に焦点を当て体を捻る。
(なら話は早いな)空中の瓦礫を踏み台にして向かう。
『能力解放』
落ちていく男は体を龍となり地面に衝突する直前すれすれで体を動かし自分に向かってくる。
(!?どういうことだ)2対1もしくは1対1対1を考えてたが、龍はすでに自分を担いで空に昇っていく。
「逃がすかよ!」下を向くと真下に相が尻尾めがけて、とびかかってくる。だが飛んだ高さが足りず拳1つ程の隙間を空け、掴めず落ちっていった。
「危ない奴だ、それより大丈夫かい?」龍は聞く。
「龍が喋るの!?」短い手で掴まれている木戸は驚く。
「悪いが詳しい話は後だ……って今で意識を失ったか」今までの負傷で限界の木戸はこの事も重なり意識を失った。出血している部分から跡をたどられないよう自分の手で押さえる。
(とはいえ早く運ばなきゃ、これは重症だな)太陽が照らし雲がない快晴の中、一匹の龍はその場から離れていった。
15秒前―五雹ドーム
「どうやら作戦失敗かい?」龍を掴めずに落ちた相を杉元が覗き込む。普段よくする制服の姿のため、意外だった。むしろ軍服を着るのかと思った。
「いやむしろ良い結果だよ」大の字で仰向けの体を起こす。
「中国軍の弱体化に成功したからな」
「それはそうとあの時何で刀で龍にしがみつかなかったんだ?」
「あ、」
「やっぱり、そうか」杉元が予期してた反応となった。
「というか、見てたのか」
「見えるだろあんな龍がここから出たら」少し間を空け再び話す。
「お前は、まだまだだが、今後とも必要となるんだ、やるなら完璧にだ。行くぞ」相は杉元のもとまでゆっくりと歩いていく。
「悪い、やっぱ先行っててくれ」何かを察したか軽く頷いてドームから出ていった。
(こいつを回収しないと)谷の死体から出ていたLeftを回収し、自分に取り込む。その時、Leftは光輝きオーブから粒子状のつぶとなって段々体に染みついていった。
「兄さんのは俺が扱う」
そうつぶやき杉元が破壊したであろう部分に向かい出ていった。
(まだ昼ぐらいか)ドームの外に一歩踏み出し杉元の後を追うため力を足にいれる。
「あ、やべ」今までの傷の影響で意識を失った。
こうして三人の戦いは谷賢の死亡と2人の意識を失うことにより終わった




