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<地球来訪1年>

 地球に来てから1年も経過すると、地球での生活にも慣れた宇宙人は中野に頼らず自分なりに考えてブイチューバーとしての活動を行なうようになっていた。


 その日の地球来訪1周年と銘打った7月7日の配信、いつもなら横に長い長方形の画面で始まる宇宙人の配信は黒い背景の中央に上下いっぱいに広がった白い丸が映った映像から始まる。


 テクテクテク


 そして突如として白い丸の中に全身が映るほど遠くを右から左へと歩いていく宇宙人の姿が映し出される。その光景はまるでカメラに写っていることに気が付かないかのようであるが、白い丸の中央へと来た瞬間・・・。


 「ズキューン!」


 突然カメラの方を向いて腕を突き出しそう叫ぶ宇宙人。どこぞの外国ドラマのオープニングの再現である。


 「さて、お遊びはここまでにして・・・」


 そうして不思議な配信に一段落がつき宇宙人はカメラの前へとやってくるが、先ほどの白い丸に合わさるようにして『ぽぽちゃん』の丸顔が顔出し看板のように綺麗に丸に収まった状態で配信が続く。


 「実はぽぽちゃん前々から思っていたのですよ。カメラのレンズは丸いのにどうして画面は四角なのでしょうかって」


 レンズは丸いのに画面は四角い。今回の配信はそんな疑問を持ったぽぽちゃんによる丸形配信であり、これは配信する内容を自分で考え撮影の準備も宇宙人1人でやるという中野の手を離れた独り立ち配信であった。


 「そうそう、今回一発芸を考えてきたのですよ」


 そしてそう言うと、宇宙人はやっていることを口に出しながらパソコンの配信画面を操作していく。


 「まずは画面に映る丸の部分を少し小さくして、


 それからその丸を皆さんから見て少し左寄りにして、


 黒い縁取りを青色にします。


 そして丸の中にいるぽぽちゃんが後ろを向いて丸い画面を埋め尽くすと、


 パラオ国旗!なのです」


 ・・・配信や一発芸の出来栄えはともかくとして、これが独り立ちした宇宙人の配信であった。



・・・・・



 別の日、その日も宇宙人単独で考えられた配信が始まることとなるが、その日行なわれたのはゲーム配信だった。


 今までの経験から雑談は配信、ゲームはクリアまで撮影をしてから投稿という方式を確立したはずであったが、何もゲームオーバーがあるゲームばかりではない。


 「今回は『配信者、コンプラテスト』というクイズゲームをやっていくのです」


 というわけで宇宙人に選ばれたゲーム。それは配信者のコンプライアンスを問う選択式のクイズゲームだ。全100問のうちランダムに出題される10問の二択問題に答えるといったゲームで他の配信者を見れば低くても4問ほどは正解をするというゲームである。


 しかし・・・。


 「全問不正解ってどういうことなのですか!?」


 それはこちら(視聴者)のセリフである。これならサイコロの偶数と奇数で二択のどちらかを決めた方が正解率が高そうである。


 だが、この様子を見ていた中野からすれば仕方のないことである。むしろ地球人と宇宙人という同じようなところがほとんどないことを考えればこうなるのは必然なのだ。


 「そもそも貨幣損傷等取締法って何なのですか。硬貨を別の用途に加工し直してはダメなんていまさら言われても10円玉とか50円玉をたくさん宇宙船修理の材料にしちゃいましたよ」


 宇宙では遭難時の宇宙船修理の材料として硬貨を加工して使うことが認められており、中野も宇宙人に法律は適用されないからと考えて言われるがまま銀行で両替をしてきた硬貨を宇宙人に渡したのである。


 そのため日本でも硬貨を好き勝手にしていいと思っていたようで図らずも配信で法律に違反したことを自供することとなったが、いつも通り宇宙船の存在など設定としか考えていない視聴者がそのような法律違反を信じることはなかった。


 それどころか全問不正解すら設定としての一環であると考える視聴者も出てくるほどであり、こうして『ぽぽちゃん』の宇宙人としての存在はキャラクターとして受け入れられつつ順調に独り立ちしたブイチューバーとしての道を歩んで行っていくこととなるのであった。





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