第008話「派遣勇者路銀稼ぎをする」
第一章【レグナ王国編】
第008話「派遣勇者路銀稼ぎをする」
「林の中から何かが来ますね。」
「なに!魔物か!?」
「たぶんこの速度だとシルバーウルフかもしれません。」
「さっき倒したゴブリンの死骸を漁りに来たかもしれないな…。バリーズさん!荷馬車の陰に隠れてください!」
「は、はい!」
「ザスマン!ルルムンド行けるか!?」
「俺はシンキチさんのおかげでピンピンだぜ!」
「俺は魔力が回復しきっていない…。少しまずいな。」
林から出てきたのはやはり六匹のシルバーウルフだった。
(これくらいなら余裕だな…。)
「“五月雨”の皆さんはお疲れでしょうからこいつらは俺が相手しましょう。皆さんはバリーズさんを守ってもらえますか?」
「ルーもやる。」
「いいけど、シルバーウルフは素早いからちゃんと距離を取るんだよ。」
「ん。」
「アンタ!そんな子供をシルバーウルフと戦わせるのかい!?」
「大丈夫ですよ。この子は魔法使いですから。俺もそれなりに鍛錬してますしね。」
シルバーウルフは此方を確認しているものの、ゴブリンの死骸が気になっている様なので先手を取らせてもらう。
「じゃあ、ルーやってみようか。」
「ん、〈シルフ〉。」
そういうと強い風と共にシルフが顕現する。そしてルーは召喚したシルフに攻撃命令を出した。
シルフはシルバーウルフめがけて〈風の刃〉を放つ。それが数匹に命中するが倒したのは一匹のみ。
(召喚された精霊は術者のレベルに依存するからこんなもんかな?)
遠距離から攻撃を受けたシルバーウルフ達はコチラを完全に敵と認識したようで、残りの五匹が向かってくる。
「ルー、初めてにしては良くできてたよ。」
「ぶい。」
誇らしげにVサインを見せてくるルー。
「おい!シルバーウルフのやつら向かってきてるぞ!」
「じゃ、今度は俺が良い所見せないとな!」
同時に飛び掛かってくるシルバーウルフを一閃し、首の落とされた五匹の死体が地面に落ちる。
「こいつはすげぇ…。」
「まさかこれほどとは。」
戻ってくる俺にラムダが尋ねる。
「この辺の有名な冒険者の名前は知ってるが、シンキチさんの事は聞いたことがない。シンキチさんは騎士様だったり、他の国の冒険者だったりするのかい?」
「いえいえ、腕に少し自信のあるただの旅人ですよ。」
「ラムダ、話は後にして剥ぎ取りや処理しないとまたシルバーウルフのやつら来ちまうぜ。」
ザスマンに促されて、俺たちは倒した魔物の処理を始める。
“五月雨”のメンバーは倒したゴブリンの鼻を削いで袋に入れていく。
「その鼻はどうするんですか?」
「これは冒険者ギルドに討伐証明として提出するんだ。少しばかりだが謝礼が出る。たとえばゴブリンやオーガ、オークなんかの人型は鼻。シルバーウルフやキラーマウスといった獣型は尻尾だな。証明部位の事を知らんとなるとシンキチさんは本当に冒険者じゃないんだな。」
「あはは…。ちなみにそれ以外の部位は持っていかないんですか?毛皮とか肉とか。」
「まあ、シルバーウルフの毛皮はそれなりに売れるから持って行けるときは持っていくぜ。リザード系なんかの鱗とかも高く売れるしな。」
「リザード系は強さのランクも高いしこの辺じゃ出没も聞かないけどな。」
「シルバーウルフはシンキチさん達が倒したんだから、尻尾と持って行けるなら毛皮も剥ぐといい。肉は美味くないらしいからあんまり買い取ってもらえないけどな。残った部分はこっちで一緒に埋めるから終わったら持ってきてくれるかい?」
俺はルーに荷馬車で待ってもらい、倒した銀狼の尻尾と毛皮を剥ぎ取る。
(毛皮が売れるなら、ルーを助けた時のやつも剥ぎっておけばよかったかな…。)
残った部分は“五月雨”の人達が林の近くに作ってくれた穴に埋めた。
「さてと、まずはザスマンを治してくれたお礼を払わなきゃな。もらってくれ。」
そう言ってラムダから銀貨三枚をもらう。
「オカコットでのポーションの相場は銀貨一枚銅貨五枚だがシンキチさんがザスマンを治してくれなかったら今頃俺達はシルバーウルフと苦しい戦闘になってだろう。これはそのお礼分だ。」
「倍額なんていただけませんよ。」
「いいんだよ、ザスマンの回復が遅れてシルバーウルフと戦闘になっていればポーションの補充は四本以上必要になった可能性が高い。受け取ってくれ。」
他のメンバーも納得してくれている様なのでいただくことにした。
「これは私からの謝礼です。」
バリーズさんからは銀貨二枚と銅貨五枚を渡された。
「貴方のおかげで計画通り村へ行商に行けます。オカコットで何か買うものがあったら私の店に来てください。サービスしますよ。バリー商店って店です。」
「皆さん、ありがとうございます。」
「お礼を言うのはこっちだぜ。俺はシンキチさん程腕の立つ人は初めて見たぜ。」
「娘さんも凄かったですね。あれは精霊魔法というやつですか?初めて見ました。」
「ちげーねー!ルルムンドと交換してほしいくらいだぜ!」
「やっぱ強いやつの子供は強いんだなって思ったよ。」
不意に褒められて恥ずかしかったのかルーはモジモジしていた。
「じゃあ私たちは村に向かいますので。お店で待ってますよ。」
「またオカコットで会おうぜ!」
「お嬢ちゃんもまたな!」
「お気をつけて!」
「ばいばい。」
手を振るバリーズ“五月雨”一行と別れを告げオカコットへ向けて歩き出す。
(思わぬ収入が入ったな。今日中にオカコットに着けそうだしこの収入で宿に泊まれるかな?)
「ここがオカコットだね。日暮れ前に着けて良かったよ。」
数時間歩いて夕方に到着したオカコットはそこそこ活気のある町のようだ。人もアドナ村と比べるとずいぶんと多い。何より“五月雨”の人達のように装備を付けた人達も見受けられる。
「すいません。旅の者ですがこの町の宿屋はどこにありますか?」
「おや、子連れかい?それならイザベルさんとこの宿の方がいいかな。この先の広場を右に曲がった所に“ひまわり亭”ってのがある。花の看板がついているから分かるはずよ。」
話しかけた女性に教えてもらったように進むと教えてもらった宿を見つけた。
「いらっしゃい!」
中に入るとふくよかな四十代くらいの女性が元気な声で迎えてくれた。
「食事かい?泊まりかい?」
「泊まりを希望してますが、おいくらなんでしょう?」
「ウチは素泊まりが一人銀貨二枚、夕飯を付けると銀貨二枚の銅貨三枚だよ。親子なら子供の方は半分だ。」
「なら食事付きでお願いします。」
「あいよ!銀貨三枚の銅貨四、銭貨五だ!」
銀貨三枚と銅貨五枚を渡し、銭貨五枚のお釣りをもらう。
(あとはシルバーウルフの討伐褒賞と毛皮代がどのくらいになるかだな…。)
女将さんに案内してもらい、本日の部屋に入る。
「夕飯は下の食堂になるからね。日暮れ頃過ぎには食べれるだろうから部屋でもう少し待ってておくれ。」
そう言って女将さんはせわしなく下の階へ降りて行った。
「つかれたー。」
「流石に今日は魔物との戦闘があったしね。御飯の時間までゆっくりしてようか。」
外套を脱ぎベットの上で足をパタパタさせているルーを見て重大なことに気が付く。
(外套着たまま食堂でご飯食べるわけには行かないかも…。)
ルーの耳を隠せるようなものは外套のフード以外持ち合わせていない。
(完全に盲点だった…。)
散々悩んだ挙句、今日の所は「娘が旅でずいぶん疲れているから部屋で食べさせてほしい。」とお願いして料理を部屋まで持ってくることで事なきを得た。
(明日は帽子とかも買わなきゃいけないかもな…。)
次の日宿を出た俺たちは女将さんから聞いたこの町の冒険者ギルドに向かうことにした。
冒険者ギルドに入ると、中には随分と冒険者が来ている様だった。
(とりあえず朝一に依頼を見に来る感じなんだろうな。)
「おはようございます。見ない顔ですが登録でしょうか?」
受付へ行くと優しそうな受付嬢が応対してくれる。
「旅の途中で魔物を討伐したのですが、そこでお会いした方に魔物の討伐褒賞が貰えると聞いたもので。」
「なるほど、討伐褒賞は冒険者に登録していただいた方にお出ししています。なのでまずは登録が必要になりますが、他の町のギルドでの登録はされていませんか?」
「初めてですね。実を言うと冒険者ギルドの仕組みもあまりよく分かっていなので教えていただけると…。」
「わかりました。では登録をするのにお名前をコチラの用紙にご記入いただけますか?」
(早速この前覚えた名前の書き方が役に立ったな!)
練習したこの世界の文字で名前を書く。
「シンキチさんですね。まず、冒険者登録は一度していただければ他の街や国に行ってもそこに冒険者ギルドがあればどこでも仕事を請け負うことが出来ます。ただ冒険者にはその実力や実績に応じた階級がありますのでその階級に合った依頼しか受けることは出来ません。階級は下から〈アイアン〉〈カッパ―〉〈シルバー〉〈ゴールド〉〈ダイアモンド〉となります。」
「なるほど、ちなみに階級はどうやって上がるんでしょうか?」
「各階級で依頼をこなしていただくと、階級ポイントというモノが貯まります。これが貯まると昇格試験として一つ上の階級の依頼が三回受けられます。それを三回とも成功させると昇格になりますね。」
「だいたいわかりました。討伐褒賞だけでなく魔物の素材もギルドで受け取ってもらえるんですか?」
「そうですね。魔物の素材に関してはギルドでも買取してますし、商談に自信があればお店の方へ直接売りに行ってもかまいません。ただ、皆さん面倒臭がってギルドで買い取ってもらうことが大半みたいですけどね。」
「なるほどなるほど。では登録と一緒に討伐褒賞と素材の買い取りをお願いできますか?」
「わかりました。討伐証明部位と売りたい素材を出していただけますか?」
俺はシルバーウルフの尻尾と毛皮を魔法鞄から出す。
「これはシルバーウルフ…。お一人で討伐されたんですか!?」
「え?えぇ…。」
「そうですか…。とりあえず認識票を作成と報酬の計算をしますね。三十分程待っていてくれますか?待っている間あちらの依頼板を見ていてもらってもいいですので。」
受付嬢から説明を受けて早速依頼板を見に行く。
「ルーも一緒に依頼見てみる?」
「うん!みる!」
フロアの椅子で待っていたルーに話しかけて二人で依頼を見に行く。
「アイアン階級の依頼はっと…。薬草とかの採集や野犬や獣の狩猟ねぇ…。本当に初心者向けなんだな。報酬も銀貨一枚が良いとこか。その日暮らしみたいな感じだな。」
「シンキチ、みえない。だっこ!」
「あぁ、ちょっと待ってね。」
ルーを肩車してあげる。
「ルーはどんな依頼がしてみたい?薬草採るのと獣狩りがあるみたいだけど。」
「んー。魔法がつかいたい。」
「今の階級だと魔法使うような依頼は無いかなぁ。」
「そっか。ざんねん。」
依頼板を見ていると受付からお呼びがかかった。
「シンキチさーん!受付まで来てくださーい!」
(随分と早いな…。)
ルーを肩から下ろして受付へ向かう。
「なんでしょう?」
「先ほど素材を確認したんですが、これはシンキチさんが討伐したので間違いないですね?」
「えぇ、私と娘で倒したシルバーウルフですが。」
「娘さんも!?まぁ、わかりました。また少しお待ちください…。」
(もしかして、アイアンくらいだと倒すのが難しい魔物だから死んでいたシルバーウルフから剥ぎ取ってきたとか思われているのかなー。)
その後受ける依頼もなかなか決まらず、ルーと椅子に座って待っていると。
「シンキチさーん。お待たせしましたー!」
「はいはい。シンキチです。」
「まず、先に討伐褒賞と毛皮の買い取り額ですね。シルバーウルフ六匹討伐となりますので銀貨九枚です。あと毛皮なんですが、五匹は傷がほぼないので銀貨五枚。残りは傷が一、二か所ありますので銅貨五枚です。全部で銀貨十四枚銅貨五枚になります。」
(おぉ!これでしばらく宿屋に泊れるな!)
「あとですね、これがアイアンの認識票です。」
渡された認識票は手首に巻くブレスレットタイプで鉄のプレートにシンキチと名前が型押ししてある。
「あと本来はアイアンの依頼を幾つか達成してから試験になるのですが、シンキチさんはシルバーウルフを討伐できる実力をお持ちのようですので、カッパ―の昇格試験をこのまま受けていただきます。」
「えっ?良いんですか?」
「はい。シンキチさんがお持ちいただいたシルバーウルフの毛皮はほぼ傷がありませんでした。あの魔物は群れで行動する上に非常に動きが速いので、傷をほとんど与えず倒すのは難しいんです。あのレベルの毛皮は熟練の冒険者でもなかなか持ってこれないですから。先ほどの毛皮を見たウチの上司がカッパ―昇格試験をすぐ受けてもらって大丈夫と。」
「そうですか。ならカッパ―階級の依頼を受けて大丈夫なんですね?」
「はい。依頼板をみて決めてください。」
ルーを連れて再び依頼板へ向かう。カッパ―階級となると弱めの魔物討伐がメインの様だ。
(今回の稼ぎでもう何日かは宿で過ごせるわけだから、今のうちにルーに色々な魔物との戦闘をやらせておきたいな…。)
「ルー、魔物と戦う依頼にするけど魔法も使えるしいいよね?」
「おっけー。」
依頼板の中から目についた一枚の依頼書を取り外して受付へ持っていく。
「この依頼でお願いします。」
こうして冒険者としての初仕事を始めることになる。
初執筆作品です。
一応は四、五日ペースで更新予定です。
確認はしていますが誤字脱字等ありましたら気軽に教えてください。
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