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派遣勇者の世直し観光記  作者: あおまる軍曹
第一章【レグナ王国編】
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第042話「派遣勇者と古代の遺物」

第一章【レグナ王国編】

第042話「派遣勇者と古代の遺物」




 「安全確認の取れていない領域に足を踏み入れるのは危険すぎます。確かに新しい発見があるかもしれませんが、リスクが大きすぎます。」


 「そうです!主任の言う通りです。開け方は分かったのですからまずは王都へ戻り、十分に準備をしてから向かうべきなのでは?」


 ルードルの忠告にヘレナも同調する。確かに少数で来ている上に戦闘可能人数も少ない現状ではそれが最も安全だろう。オブジェの魔物除けもこの扉の先まで効力が出ている保証はない。


 「しかし…。この先のエリアで新しい発見や研究所の皆さんが調べている例の杭に関する何らかの手がかりもあるかもしれないのですよ?」


 研究員達の忠告にも難色を示すユルト。考古学の専門家である彼としては少しでも早く、遺跡の新たなエリアを調べたいのだろう。遺跡に来るまでもそうだったのだがユルトの考古学に対する知識欲は非常に強いようだ。


 研究員側とユルトで意見が分かれ、なかなか埒が明かなくなってきていたので提案を出すことにした。


 「では私が先頭に立ち索敵を行いながら進みます。索敵に外敵が引っ掛かったり、敵と遭遇したり、皆さんの安全を脅かしそうな事態が発生したら、直ちに探索を中断して王都へ帰還すると言うのはどうでしょうか。当然未確認のエリアとなるので敵との衝突は避け、撤退を優先しつつ進むのであればリスクは低くなるのではないでしょうか。」


 俺の提案にユルトは同意してくれた。


 「まぁ…。そうですね。例のオブジェに杭の手がかりはそれほど無さそうでしたし、撤退優先で安全を確保しながらなのであれば…。」


 そう言ってルードルも渋々ではあるが同意してくれた。


 「それでは私を先頭、ルー、アルメイ、シロは後方に配置してルードルさん達を挟むように進みましょう。安全が確認できるまでは調査等は一切せず隊列を守ってくださいね。」


 全員が了承したところで俺達は扉の向こう、遺跡レグライム・クルスに現れた新しい領域に足を踏み入れる事にした。

 


 扉の向こう側は地下へと続く階段になっていた。ジャックスが明かりを灯す魔法〈点灯〉を唱えると下へと続く階段が真っ直ぐと照らし出される。


 「先は…見えませんね。」

 「えぇ。索敵に敵影はありませんが、このスキルは生物にしか反応しません。生命体以外のトラップ等もあるかもしれません。十分に気を付けていきましょう。ルー達も後ろを頼んだよ。」


 「「「おー!」」」


 俺達はゆっくりと階段を降り始める。数段降りると足元で魔力を感じ、その瞬間床が光り暗がりだった通路はあっという間に明るくなった。


 「なんだ、これは!?」

 「まさかここのエリアはまだ生きているのか…。」

 「そんな…。三百年以上経っているんですよ!?」


 「あの魔物除けのように魔力を供給するサイクルを使用しているなら機能が停止していないのも説明できるが、これほどの規模が未だに魔法の力で動いているのならこれは凄まじい発見です。」


 興奮と困惑を隠せない研究員とユルトに対しウチの三人は「綺麗で便利」とか「部屋に欲しい魔法」とか呑気な感想を言っているのが聞こえてくる。


 そうこうしている内に階段の一番下まで辿り着く。通路は十字に分かれていて壁にはそれぞれこの世界の言語で【研究員寮】【魔法科学施設】【資料管理室】を記載されている。


 「シンキチさん。現状で索敵に引っかかるものは無いですか?」

 「えぇ、現状では三方向共に分かる範囲で生物の反応は出ていないですね。」


 「では資料管理室に行きましょう!施設や資料が生きているなら間違いなく新発見が待っているでしょうから!!」


 ユルトの提案で俺達は資料管理室と記載された通路を進む事にした。


 通路は階段同様に明かりが灯っているものの、壁は窓や扉などが一切なくただ一直線に続いている。注意深く進むと通路の先は少し広い部屋にたどり着いたのだった。

先頭を歩いていた俺は何となく嫌な感じを覚えたので部屋には入らず部屋の入り口手前で覗き込む。円形のその部屋は全く何もない空間だった。


 後ろを歩いていたルードル達も俺の横から部屋を覗き込む。


 「ここが…。資料管理室なのか?」

 「それにしては何もなさそうな部屋ですが…。」


 「向こう側に扉があるからあの先が資料管理室なんじゃない?」


 同じく覗き込んできたアルメイの指差す先には扉が見える。俺のマップ能力で確認してもあの扉の先はさらに大きな空間となっているようだから資料管理室はあの先なのだろう。


 「だとしたらこの空間はなんなのでしょうか…。」


 「俺はこの空間は侵入者を駆逐するための戦闘領域だと思います。」


 俺の一言で全員に緊張が走る。


 「ここは迷宮ではないのですが…。」

 「そうだよシンキチ。一応人が住んでいたエリアなんでしょ?」


 「たしかにここは迷宮ではない。でもここに来るまで外敵をことごとく拒む様な作りだっただろう?それにここは合言葉が分からなければ入ることも許されない言わば重要区域のはずだ。入った後も外敵への備えがあってもおかしくはないよ。」


 「シンキチ殿の言う通りですね。私もこの先に進むのは正直気が引けます。」

 「たしかに何もないこれだけの空間に我々だけで足を踏み入れるのはなんだか怖いですね…。」


 俺の説明にルードルを始め研究者とルー達三人もこの先へ進む事への不安を感じているようだ。


 「し、しかし…。もし侵入者対策があったとしても撤退すればいいのではないですか?」


 ユルトは知的好奇心と不安がせめぎ合っているのかまだこの先へ進む事への活路を考えているようだ。


 「正直このような作りの場合は撤退できなくなる可能性があります。まずここは我々が想像できないレベルの魔法技術を擁した文明の重要エリアです。一度侵入者と検知した際に逃亡する事ができなくなるような仕掛けがあってもおかしくない。しかもここは地下です。入り口は今の所俺達が入ってきた扉のみ。そこが開かなくなれば退路はありません。」


 「それにアタシ達が通ってきた通路もそれほど広くなかったからね。」


 「…。撤退しましょう。ユルトさんもいいですね。」

 

 「そうですよ!十分に準備をして安全が確保されたら思う存分調べれば良いじゃないですか!」


 「うむむ…。ここで命を落としてはもったいないですからね…。皆さんに従いましょう。」


 全員の意見が一致したところで俺達は来た道を戻ることにした。帰り道は寄り道せずにまっすぐ入ってきた扉を目指す。扉は時間が経って閉まっていたが、開けるときと同様の魔力充填と呪文(?)で無事に開いた。


 「私達のオブジェの調査は大体終了しましたし、新たなエリア開拓を国に報告しなくてはなりません。少し予定よりも早いですが王都へ帰還しましょうか。」


 結局護衛任務は戦闘の一つもなく終了したのだが、それをルードルに確認すると「元々緊急時に戦ってもらう」というニュアンスで護衛任務を依頼したので依頼料は支払われるとのことだった。


 (遺跡観光してお金が貰えるとは…。なんともラッキーなお仕事だったな!)


 帰り道では今後の国の動きをルードルが話してくれた。


 「我々がレグライム・クルスの新領域を発見したことで、国はその新領域を開拓することに全力を尽くすでしょう。まずは新領域の安全確認を行うために軍が動きます。騎士団の内のどこか一個師団が派兵されて新領域内を隅々まで探索します。」


 「それほどの事なのですか?」


 「えぇ…。皆さんも見ていただいた通り、あの遺跡は今の我々にとって失われた高等魔法や技術が眠る非常に価値のある場所なのです。今回レグライム・クルスで私たちが発見した地下の領域は地上の遺跡に比べ機能の維持が非常に良好の様ですし、国としても最優先で動くでしょうね。」


 「その探索に皆さんは付いていくんですか?」


 「主任を含め私達三人は間違いなく同行することになると思いますよ。」

 「!?」


 「その同行者の中に私も是非入れてくださいませんか!?」

 「えぇ…。まぁ研究所の所長には伝えておきますね。」


 「おぉ…!お願いします!」


 その後もなんとか先遣隊に加えてもらおうとルードルに懇願するユルト。


 (知識欲に支配されていて周りが見えなくなっているといえ貴族のルードルにここまで食らいつくとは…。冷静になった後に後悔しないといいけど。)



 王都に到着した俺達は朝の集合場所であった貴族街区入り口前で解散となった。


 「依頼料のお支払いは近日中にお渡しします。国がどのくらいの速度で先遣隊を出すかによりますが、間に合いそうであればヘレナがお持ちすることになるでしょう。」


 「気長に待っていますのでお気になさらず。先遣隊への同行頑張ってください。」

 「今回はありがとうございました。」


 「ヘレナさん達も頑張ってね!」

 「ヘレナがんば。」

 「お気をつけて!」


 「ありがとね、ルーちゃんアルメイちゃんシロちゃん。頑張るね。」


 たった一日ではあったが、三人とヘレナは随分と仲良くなれたようだ。俺達は宿へ戻りゆっくりすることにした。

なかなか物語が進まなくてすいません…。

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