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派遣勇者の世直し観光記  作者: あおまる軍曹
第一章【レグナ王国編】
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第043話「派遣勇者再び遺跡へ」

第一章【レグナ王国編】

第043話「派遣勇者再び遺跡へ」




 遺跡の護衛任務が終わって数日。報酬を持ってくると言っていた研究所からは何の連絡もない。俺達が帰ってきた日の翌々日には大規模な騎士団の移動があったと王都ではもっぱらの噂となっていたので、俺達に報酬を渡す暇もなく、例の遺跡へ行かなくてはならなくなったのだろう。

 その間も宿代は掛かるわけで俺達は冒険者稼業をしながら王都での生活を満喫していた。


 そんなある日、待っていた人物とは違う人が俺達を訪ねてきた。


 「こんにちはシンキチ殿。今からお時間はございますか?」

 「おや?ダックスさんとマイルさん。こんにちは。大丈夫ですがどうされましたか?」


 「ウチの団長がシンキチさんに用があるそうです。」


 そう言われて俺達はつい先日訪ねたばかりの第三師団の駐屯所に向かった。




 駐屯所へ着くと前回は入ることのなかった建物内へ案内される。


 「団長はシンキチさんお一人と話がしたいそうですので、お嬢さん方はこのロビーで飲み物でも飲んで私達と待っててもらおうかな?飲み物は何が良い?」


 そう言ってマイルはルー達を引き留めた。


 「団長のいる部屋までは私がご案内します。」

 (あまり良い予感はしないな…。)



 「ここです。団長!シンキチ殿をお連れしました。」

 「―――入ってもらってくれ。」

 「ではシンキチ殿、お入りください。」


 「失礼いたします。」


 扉を開け中へ入ると、正面の執務机に団長のジンが座っていた。

ジンは俺が入ってくるのを確認すると椅子から立ち上がり、こちらへ歩み寄って手前にある応接セットへ俺を誘導する。


 「急にお呼び立てしてすまなかったね。とりあえず座ってくれたまえ。」


 俺がソファーへ座ると、ジンは机を挟んで対面へ腰かけた。


 「さて、今回来てもらったのは君に伝えなければいけない事があるからなのだが…。」


 俺がゴクリと小さく息を飲むとジンは説明を始める。


 「先日君達がルードルと共に見つけた遺跡の新領域の件なのだが、何か聞いているかね?」

 「大きな規模の騎士団が王都を出たと言うのは噂程度に聞きました。」


 「遺跡から帰ってきて新領域発見の報告はすぐに国の有力者達に報告されたのだが、二日としない内に騎士団の第四師団が遺跡に派兵されたのだよ。とはいえ一個師団全てではなく大隊が三つほど送られたそうだ。」


 (ルードルが言った通り騎士団がすぐ派遣されたんだな。それにしても大隊三つというと最小でも千人程度、最大で三千人くらいだろうか。それほどの兵士をものの数日で動かすと言う事はそれほど古代の技術や魔法は国にとって重要なのだろう。)


 「だがね…。その大隊は壊滅したそうだ。」


 「!!」


 「新領域内に出現した魔物に約三千の兵が死亡または重体となり撤退を余儀なくされたそうだ。」

 「ちょ、ちょっと待ってください!」


 「…なにかね?」

 「私達が見つけた新しい領域は通路も狭くとても多くの兵士が一度に通れるような場所ではありませんでした。仮に出現したのが強力な魔物だとしても三千人が一度に遭遇した訳ではないはずです。となれば遭遇してしまった兵士はともかく、後ろに控えていた者達は強敵に対して撤退で来たんじゃないのでしょうか?それがなぜ全滅に近い状態に…。」


 実際七人でもそれほど余裕があるわけではなかったあの階段や通路をすし詰め状態で騎士団が進むわけがない。前半の部隊が被害にあったとしても大半は撤退出来たはずだ。

 俺の問いにジンは悲壮感と憤慨の入り混じるような表情で驚くべきことを話し始めた。


 「第四師団は…。団長を含めた隊長格が問題のある者ばかりでね…。どうやら犠牲が出続けているにもかかわらず強行したようなのだ。結果大隊全てが戦闘不能になるまで突撃し続けたようなのだ。」


 もはや開いた口が塞がらなかった。なんだそれは。


 「どうしてそんな事を…。」

 「レグナの騎士団は基本平民貴族関係なく試験に合格した志望者が徴用されるのだが、副団長以上の階級は貴族しかなれないのだよ。そして第一から第五まである師団の団長はその数字の順番がそのまま序列として認知されている。本来今回の様な新領域の調査はもっとも序列の低い第五師団が行くところだったのだが、第五師団は現在国境近くで演習に行っていてね。第四師団が行くことになったのだ。」


 「第四師団の戦闘力は第五師団よりも格上、我ら第三師団と同等位なのだが、団長や隊長格の能力と素行に難ありという事で序列は四番目に置かれている。彼らは前からそれに納得していなかった。だから今回の派遣で功を上げて上にアピールしたかったのだろう…。」


 (師団の昇格の為に多くの兵士を犠牲にするとは…。あれ?)


 「そういえば、派遣された第四師団には魔導研究所の研究員が同伴したのですよね?ルードルさん達は…。」

 「ルードル達なら心配ない。もともと安全が確認できるまで新しい領域には入らないつもりで同行していたから途中で連絡用の小隊と共に帰還しているよ。」


 「それは良かった…。」


 「しかし残念ながら国はこの件を諦めていないのだ。第四師団には引き続き新領域への派遣命令が出てしまっているのだよ。」

 (おいおい…。現状で三千人も犠牲が出ているのに止めないのかよ…。)

 

 「それほどの犠牲を出してまで手に入れる価値があるんでしょうか…。」


 「それは国の上層部にしか分からない事だが騎士団のトップであるウチの将軍はこれ以上無意味に騎士団員を失いたくないとお考えのようでね。将軍から私達第三師団にもある命令が下ってね。」


 「出撃ですか?」


 「王都にいる有力な冒険者達と協力して第四師団の後詰、もし第四師団の現存兵力が半数まで減った場合は持ち場を交代して討伐任務に当たる様にとの命令なのだ…。シンキチさん、我々と今一度遺跡へ向かい新領域の魔物を倒してくれないだろうか?」


 (正直三千人もの騎士団が返り討ちに合っている相手がいる所へルー達を連れて行くのは気が進まない。しかし俺一人で行くと言って皆が納得してくれるだろうか…。)


 ここで断ると言う選択肢は無い。

レグナ王国は遺跡の制圧の為なら犠牲を惜しまない事が分かっているからだ。ここで新領域の魔物を討伐しなければ今後も犠牲は増えるだろう。俺はそういう犠牲を減らして世界のバランスを保つためにこの世界へ来たのだから。


 「一つ聞いても宜しいですか?」


 「なにかね?」


 「ウチの仲間を前線に立たせずに後方支援に置くことは出来ますか?もちろん私は必要なら皆さんと共に前線で戦いますので。」


 「心配であれば我々と一緒に来るのは君だけでもこちらは構わんが。」


 「私も正直申しますとそれが一番望ましいんですが、彼女たちがそれに納得すると思えなくて…。」


 俺は頭を掻きながら正直に話すことにした。するとジンは「フフッ」と小さく噴き出して返答する。


 「そういう事なら、君の仲間には後方支援をお願いしようか。君ほどの男でも小さな女の子達には敵わないのだね。」


 「えぇ…。小さくても女性ですから。一応俺一人で行けるかどうかは相談してみますが駄目だったときは団長さん協力していただけると助かります。」


 「あぁ。その時は任せなさい。」


 (皆納得してくれるといいけど…。)


 こうして俺はもう一度遺跡に行くことになったのだが、その前に控える説得に気が重くなるのだった。

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