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派遣勇者の世直し観光記  作者: あおまる軍曹
第一章【レグナ王国編】
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第029話「派遣勇者と虫の群れ」

第一章【レグナ王国編】

第029話「派遣勇者と虫の群れ」



 「うわぁー!!魔物だっ!」

 「た、助けてくれーっ!」

 「キャー!!」


 町に戻った俺達が目にしたのは町中を飛び回る大量の魔物だった。しかも大量の蛾の魔物だ。


 「うひゃあ…。」

 「ひぃ!」

 

 逃げ惑う町人の中に見覚えのある人物がいた。


 「皆様方は先日見学会にいらした旅の方!」

 「あんたは糸工場のガイドさんか!これは何が起きたんだ。」

 「あの魔物はカイコン虫です!工場にいたカイコン虫が突然成虫になって工場からあふれ出てきたのです!」


 「あの工場内の幼虫が全部成虫になったの!?」

 「はい…。雷のような音と共に工場に何かが落ちてきた後、突然成虫になり始めて…。でもおかしいのです。」


 「何がだ?」

 「ウチのカイコン虫はそれぞれ孵化の時期をずらしているので一斉に成長するはずがないのです。しかも成長には時間の掛かる繭作りが不可欠のはずなのでこんなに早く成虫になるはずがないのですが…。」


 「工場に落ちてきたのはなんだか知っているか?」

 「い、いえ…。天井を突き破って飼育場に何か落ちてきたのは知っていますが、その後すぐこの混乱でして。」


 ガイドの説明を聞く限り、原因は工場の飼育場にあることは間違いなさそうだ。


 「ガイドさんありがとう。皆!工場へ向かおう!」




 町中を通って工場へ向かう最中、俺はあることに気付く。


 「なぁ、これだけ魔物が飛び回っているのに襲われている人がいない気がしないか?」

 「そーいえば、怪我してるような人も見かけてないかも。」

 「私たちも全然襲われたりしてないですよね。」


 (これだけの魔物の襲撃で怪我人や被害が出てないのはおかしくないか?)


 実際カイコン虫を退治しようと戦う人や冒険者の姿があるが、負傷したような人は見かけていない。俺たちはそれを不思議に思いながらも糸工場を目指す。


 糸工場は街よりも凄い光景となっていた。多くのカイコン虫の成虫が飛び回るだけでなく、工場の壁にも無数の卵が産みつけられていた。

 開け放たれた工場の入り口や破られた天井や窓からは無数のカイコン虫が飛び立っている。


 「えぇ…。この中に入るの…?」

 「シンキチむしすごい…。」

 「夢に出そうです…。」

 「確かに気が引けるが、町をこのままにしておけないし行くしかない!」


 意を決して工場内に突入する。



 工場内は大量のカイコン虫が飛び回っているからなのか荒れ放題となっている。

 様々な所に卵が産みつけられているがすでに孵化したのか割れた卵も多い。


 「これ、割れているけどもう孵化したってことなのかな?」

 「でも、幼虫が全くいませんね…。」

 「というよりもこの短時間で産卵と孵化が起きるものなのか?」


 俺達は通路を進みながらその光景の異様さに気付く。


 (いくら昆虫系の魔物といえどこんなに早く孵化するとは考えにくい。やはり通常とは違う何かがこの工場で起きていることは確かなようだな…。)


 「ここまでカイコン虫が襲ってきてないとはいえ皆気を付けるんだ。ここでは通常とは異なる何かが起きているみたいだから何かイレギュラーな事が起こるかもしれない。」


 「わかった。」

 「は、はい!」

 「おー。」


 通路の先へ進むと、見学会で案内された幼虫の飼育場へたどり着いた。


 「な、なんだこれは…。」


 飼育場で俺達が見たのはおびただしい数のカイコン虫が所狭しと飛び回っている光景と壁や天井に無数に産み付けられた卵の数々だった。


 「なんでこんなに数が多いの!?」

 「飼育場で飼われていた幼虫より間違いなく数が多いです!」

 「はわー!」


 どう考えても数が合わない。町中にいたカイコン虫ですら飼育場で見た幼虫と同数位の規模だったのにその倍はこの飼育場にいる。その答えはすぐに分かった。


 「シンキチ!あそこ!」

 「たまごがわれる!」


 天井に産み付けられた卵にヒビが入り、まさに孵化したのだ。


 「え…。」

 「なんで!?」

 「あれはどういう事なんだ。」


 孵化した卵から出てきたのはカイコン虫の幼虫ではなく成虫だった。


 (なぜ、成虫が卵から出てきているんだ!幼虫が繭を作り成虫になるんじゃないのか!)


 予想外の事態に混乱する俺達だが、これで膨大な数のカイコン虫が説明は出来るようになった。

飼育場にいた幼虫が何等かかの原因で全て成虫になり、卵を産み付けそれが信じられないスピードで孵化する。しかも生まれた子供は最初から成虫の為、またすぐに卵を産むという高速の世代交代がこの工場で起きているのだった。


 「シンキチ!あそこひかってる。」


 ルーが指をさした先は天井が抜けた部分の真下になる。大量のカイコン虫の為、何があるかまでは分からないが地面に何か輝くものがあることは分かった。


 「何かがあるが、危ないかもしれない。三人はここで待ていてくれ!」

 「気を付けて下さい!」

 「シンキチ無茶しないでね!」


 飛び交うカイコン虫に注意しながら光る何かの元へ向かう。

 光る謎の物体に接近して確認すると、それは俺が見たことのないものだった。


 「これは…。なんだ??」


 地面に突き刺さったそれは杭のようなものだった。しかし、表面には不思議な模様が浮き出て光り先端には何かが掘り込まれている。


 「これは…。魔法陣か??それにしても小さいな…。」


 杭自体もずいぶんと細いが地面から出ている方の先端部分には表面の他の紋様とは違う規則性のある模様が掘られていてそれは近くで確認すると間違いなく魔法陣なのだ。


 (これは地中の魔力を吸い上げる魔法陣か。とりあえずこの魔法陣を無効化してみるか…。) 

 「〈マジックキャンセル〉」


 俺は魔法を打ち消す対抗系魔法を杭に打ち込む。すると杭に掘られた魔法陣は歪み力を失った。魔力を吸い上げることが出来なくなった杭は光を失う。


 相変わらず飛び回るカイコン虫はおとなしくなったりはしないものの、あれだけパカパカと孵化していた卵は全く割れなくなった。


 「とりあえずこれで数が増え続けることは無くなったみたいだ!あとはこの成虫を退治していこう!」

 「よ~し!頑張るかぁ!」

 「ん。〈シルフ〉!」

 「行きます!」


 とにかくこの大量のカイコン虫を何とかしないと。

初執筆作品です。

四、五日ペースで更新できるように頑張っています。

皆さんの暇つぶしになると良いなと思っております。

確認はしていますが誤字脱字等ありましたら気軽に教えてください。

評価点だけでも入れていただけると励みになります。

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