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第1話:ローズ

「消えたあなたの国、わたくしは、知っています」


「あんた、なにもの?」

少女は、目をつり上げて、相手を威嚇する。


「最近、あなたのクラスに転校してきた転校生ですわ」


金色の髪、青い瞳をした美しい少女が言った。

彼女の名は、ローズ。

手には、なぜか東の国のデザインの扇子。


目の前には、薄い赤色の髪、燃えるような赤い瞳の少女、

マヒル。


ここは、高校の渡り廊下。

マヒルが、昼休み一人で時間をつぶしていると最近転校してきた少女が声をかけてきた。


「そういうことを聞いてるんじゃないわよ」


ローズという少女は、扇子を開く。

そこに文字が書かれていた。

【ご縁】


「縁起ものみたいにいうな!」


「あら、ご縁は大切ですのよ」


扇子をパタパタさせながらローズは言う。


「あなた、いまご自分がどういう状況におかれているかご存じですの?」


「状況?」


「あなた、自分の国はどこですの?」


「それは、ここより南の海の島国よ」


「その島国、この地図のどこにありますの?」


ローズは、教科書の地図をひらく。


マヒルが、自分の国があると考えている場所は、その地図では海だ。


「うるさいわね。

 それが間違ってるのよ」


「あなたが、周りの人間にここに島国があったと何度聞いても、帰ってきたのは

 『知らない』という返答だけではありませんでしたか?」


「あんたに関係ないでしょ」


「あなた、自分の国がなくなったことは、理解はしているのでしょう?」


「なんであんたにそんなこと言われないといけないのよ!」

マヒルは、強い口調になる。


「あなた、たった一人で機密情報をぬすもうと、なんども国の施設に

 潜入しようとしましたわよね」


「それが何」


「成功率を計算したところ3.2パーセントでした」


「低っ!」


「もう、いい加減諦めたらどうでしょうか?」


「ほんと、あんた誰よ」


「あなたが相手にしているものは、あまりにも大きすぎますわ

 ここの生活は心地よいでしょう。

 このまま、不都合なことは忘れて、今の生活になじんでいったらいいのではなくて?」


「大きなお世話よ!」


ローズは、扇子を仰ぐ。

考えているようだ。


「そうですわね、ちゃんとお話をするには、まず親睦を深めることからですわ」


そういうと、扇子女は、ある提案をしてきた…。



――――――――――――――――――――――


「マヒルさん、どうしたの?」


教室に戻ると、クラスの委員長をしている女子が話しかけてきた。


授業に出席しなかったので心配してくれたらしい。


「大丈夫」

マヒルは返す。


そして、教科書を開く。

地図を指さす。


「ここに、島があったよね」


「ごめん、ちょっと分からないかな?」


急に顔色を変える女子。

逃げるように彼女は去っていった。


「またか」

マヒルはつぶやく。


知りたいことを知るには、あの変な扇子女に関わるしかないらしい。


――――――――――――――――――――――



「こちらですわ」


今、親睦を深めようと言って通されたローズの部屋にいる。


「なんか、変なものがおいてあるのだけど」


そこには、招き猫、変な湯飲み、地域名が書いてあるTシャツ、努力って書いてある鉢巻きなどが散乱している。


「ここは、世界のハブに近い場所。

わたくしの国では、手に入らない東の国の伝統工芸品が出回っていますわね」


「いや、これは伝統ではないわよ」


「そこにおかけくださいまし」


マヒルの返答にも意に介せず、涼しげな表情でローズが言う。


「どの紅茶がいいかしら」

紅茶を選び出すローズ。


「まどろっこしいことはいいわ。本題に入って」


「せっかちですのね」

息を吐くローズ。


「先ほども申しましたように、あなたが相手にしているものは、あまりにも大きすぎます」


「あなたは、今、どこの国の国籍も持っていない、

 そして、あなたには家族はいない。

 あなたを守るものは何もない」


「なに、脅しのつもり?」


「あなたの置かれた状況を説明しているのですわ」


「何が言いたいの?」


「個人では、国を相手にできないのです。

 国と交渉できるのは、その人が所属する国です」


「だからなんなのよ?」


「国を失ったあなたは、なんの後ろ盾もない。何もできない」


「あんたには関係ないでしょう」


「何度か提案されたはずです。新しい別の国に所属しないのですか?」


「嫌よ」


「なんどか、殺されかけたでしょう」


「それが何よ」


「国籍を持たないあなたを消してもどの国もなにも言わない。

 あなたを消すことなど、彼らにとって簡単なことなのですよ」


黙るマヒル。

それでも睨み返すことは止めない。

マヒルは態度を変えない。


「仕方ありませんわ」

ローズは、大きく息を吐いた。


そして、二枚の写真をテーブルの上に置いた。


マヒルは、それを見て、目を見開いた。

島国が写った写真。


マヒルは、ローズの襟元をつかむ。


「あんた!これをどこで手に入れたのよ!!」




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