1
国民にとってバルドは、ついに本性を現した凶悪犯にすぎなかった。
処刑は三日後。
ところがその夜、地下牢へ侵入した何者かが、バルドを殺そうとする。
狙われたのは彼の命だけではなかった。
二十年間、依頼人と本当の罪を記録してきた一冊の帳簿。
バルドが死に物狂いで守り続けてきた、《罪買い台帳》だった。
牢獄から逃げ出したバルドは、自らの無実を証明するため、かつて罪を引き受けた依頼人たちを訪ねていく。
だが、依頼人は一人、また一人と殺されていた。
伯爵令息は殴り殺され、豪商は金庫の中で窒息し、元神官は教会の献金箱に詰め込まれていた。
その殺され方はすべて、バルドが過去に引き受けた犯罪を再現したものだった。
世間は騒ぎ立てる。
代罪人は、過去の犯罪を今度こそ自らの手で繰り返している、と。
逃げるほど罪は増え、真相へ近づくほど、かつての依頼人たちがバルドを殺そうとする。
彼が無実を証明するには、これまで法廷で語ってきた三十四件の自白が、すべて嘘だったと認めなければならない。
それは同時に、貴族、騎士、神官、豪商――王国を支える権力者たちが、本物の犯罪者だったと暴くことを意味していた。
やがてバルドは気づく。
代罪制度は、ただ刑罰を肩代わりさせる制度ではない。
国にとって都合の悪い犯罪を一人の人間へ集め、歴史から消すための仕組みだった。




