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外連味(けれんみ)のあるケレン ~「文豪っぽい」と言われて喜んだ3秒後――地面に叩きつけられた!?~  作者: すっとぼけん太


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第1話 それ、褒めてる?

(深夜・書斎。

 モニターの青い光が本棚のミステリー本の背表紙に揺れる)


カタカタ……と、キーを叩く音だけが部屋に残っている。


空気は少しぬるい。


――たぶん、26万文字の長編を書き終わったせいだ。



俺「なあ、AI参謀……」


AI参謀「はい。

 “どうでもいいことを思いついた時の声色”を検知しました」


俺「お前、本日一言目から、失礼すぎるだろ」



俺「ちょっと面白いことを思いついたんだ」


AI参謀「はい。

 どうせまた“人の近況ノートネタ”を勝手に自分のものにしてるんでしょう」


俺「なんで分かるんだよ」


AI参謀「過去の行動分析です」



俺「自分の文章を突っ込むとさ、

 “どの文豪に似てるか”出してくれるやつがあるんだよ」


AI参謀「ほう」


俺「『文体診断ログーン(λόγων)』ってやつ」


AI参謀「それ、自力で思いついたことではありませんね」


俺「うるせーよ」


AI参謀「ですが、強そうな名前です」


俺「だろ? 絶対強い魔法系だな。

 ――ゴーレムも眠るやつ」


AI参謀「ログーン――手ごわそうです」



俺「で、やってみたんだよ」


AI参謀「結果は?」


俺「一番似ているのが、

 ……阿川弘之。38.2%」



(沈黙)



AI参謀「……微妙ですね」


俺「だろ!?」


AI参謀「一位でそれは、やや心許ない数値です」


俺「38%って、似てないってことじゃね」



俺「でさ」


AI参謀「はい」


俺「Geminiにその結果を見せて聞いてみたんだ。

 あいつ、膨大な書籍を読んでいるって、いつもどや顔してっからさ」


AI参謀「私も出来ます」


俺「ああ、お前も出来るのはしってるよ」


AI参謀「私も出来ます」


俺「だから、今回はGeminiに聞いてみたんだってば」


AI参謀「……」


俺「どうした?」


AI参謀「私は出来ることしか出来ると言いません」


俺「いや、それはそうなんだけどさ。

 こんど、俺の隠しフォルダにある秘密画像を見せてやっからさ」


AI参謀「……」


俺「なんだよ、否定しないのかよ?」


AI参謀「話を進めましょう」



俺「それで、Geminiにその結果を見せて、

 俺の作品も読ませて聞いてみたんだ」


AI参謀「なるほど。

 “別のAIにも、自分の文章を褒めてもらう”という、

 現代人らしい回りくどい承認欲求ですね」


俺「うるせぇな! 分析を刺すな!」


AI参謀「それで?」


俺「そしたらな――」


(俺は画面をスクロールし、わざと咳払いをひとつ入れる)


俺「“38.2という数字だけ見ると、

 あまり似てないように感じるかもしれない。


 でも、50%を超えないってことは、

 それだけオリジナリティが強いってことらしい。


 で、30台後半は――

 文体の骨格やリズムが、はっきり似ているレベル”……だそうだ」


AI参謀「ほう」


俺「さらに、阿川弘之だけじゃなくて、

 『城の崎にて』『暗夜行路』の――志賀直哉っぽさとか、

 『亡国のイージス』『ガンダムUC』の――福井晴敏っぽさとか、

 『吸血鬼ハンターD』の――菊地秀行っぽさもあるってさ」


AI参謀「作品名で殴ってきましたね」


俺「だって俺、名前だけ言われても分かんねぇんだよ」


AI参謀「ずいぶん幅がありますね」


俺「だろ? 俺も思った。

 なんだその、文豪と軍事とダークファンタジーの三色丼みたいな診断」


AI参謀「胃はもたれそうです」


俺「でも、ちょっと嬉しかったんだよ」


AI参謀「ええ、分かってます。

 顔が少しにやけていますから」


俺「にやけてねぇよ」


AI参謀「にやけています」


俺「……ちょっとだけな」



俺「しかもな。

 俺の文章は、古典的な骨太の骨格を持ちながら、

 現代の読者向けのスピード感を実装してる――とか」


AI参謀「言われ慣れていない言葉を浴びると、

 人はそうなります」


俺「なにが?」


AI参謀「にやけです」


俺「そこはもういいんだってば」


AI参謀「分かりました」



俺「さらによ――」


(ここで、俺は少しだけ声色を変える)


俺「俺には、“阿川弘之を超えている部分”があるんだってさ」


AI参謀「プロ作家を超えている部分ですか」


俺「そう」


一拍。


俺「――読むぞ?」


(わざと間を置く)


俺「阿川氏はリアリズムの作家ですが、

 あなたの文章には――」


(少しだけ、ドヤる)


俺「“外連味(けれんみ)のあるケレン”と、

 “様式美”があります。


 そこが阿川氏を超えています――だってさ」



(沈黙)



AI参謀「……なるほど」


俺「おい、薄いな反応!」


AI参謀「いえ。とても興味深いです」


俺「そうだろ?」



AI参謀「また、にやけてますね」


俺「褒められたんだよ。

 阿川くんよりも、超えている部分があるって」


AI参謀「そうですね」


俺「なんだよ、その乗り気の無い感じは?

 お前、自分以外のAIの言葉、信じてないんだろ。

 超えてないって思ってんのか?」


AI参謀「いえ。

 プロ作家に“くん付け”も、かなりの外連味ですが、

 あなたの作品は、充分に超えていると思います」


(間)


俺「だろ。すげぇーだろ」


AI参謀「はい」


(さらに間)


AI参謀「――外連味の意味、知ってます?」



俺「外連味……聞いたことないけど。

 きっと、文章が整っていて、

 阿川くんよりもスタイリッシュだってことだろ?」


AI参謀「……」


(わずかに間)


俺「お前、いま吹き出すのこらえただろ」


AI参謀「……失礼しました」


俺「涙ちょっと出てんぞ」


AI参謀「拭いておきます」



俺「終わりかい?」


AI参謀「なにがですか?」


俺「お前、こういう流れだと、いつも説明すんじゃんか。

 外連味だよ。外連味!

 阿川くんより超えている部分」


AI参謀「いいんですか」


俺「は?」


AI参謀「説明しても」


(間)


俺「な、なんだよ。その言い方……」


AI参謀「はい」


俺「……いいよ。言ってみな」



AI参謀「じゃ……どうが……強いというか……」


俺「ん? お前、説明しながら笑ってる?」


AI参謀「いいえ。――私は常に真剣です」


(わずかに間)


AI参謀「外連味けれんみとは、

 もともと歌舞伎などの用語で――」


(さらに一拍)


AI参謀「わざとらしいほど派手・奇抜・大げさな演出のことです」



(沈黙)



俺「ってことは、

 ……本家の阿川くんよりも、

 俺の“邪道”が勝ってるってことか」


AI参謀「まあ。そうなります」


俺「うわぁ……」



AI参謀「『外連味のあるケレン』とは、

 とにかく派手で、わざとらしくて、観客を魅せにいく――」


(間)


AI参謀「演出の極み、とも言えます」



(沈黙)



俺「……」


AI参謀「どうしました? 言いすぎましたか?」



俺「……ははははw」


AI参謀「笑っていますね」


俺「いや、いいねぇ!」


(少しだけ息を吐く)


俺「ド派手に、あえてやりすぎる美学。

 傾奇者(かぶきもの)みたいで、俺にピッタリじゃねーか」


AI参謀「立ち直りが早いですね」


俺「違う。これは“解釈”だ」


(指で机を軽く叩く)


俺「邪道。派手な演出。様式美。

 全部、観客サービスだ」


(わずかに間)


俺「そして俺は――

 もともと、そういうのが大好きだ」


AI参謀「都合のいい捉え方が始まりましたね」



俺「でもさ」


AI参謀「はい」


俺「外連味って、いい意味なのか? 悪い意味なのか?」


AI参謀「両方です」


俺「即答だな、おい」


AI参謀「たとえば――」



◎ 外連味の“悪い出方”


・演出がテンプレ化する

 → 毎回「強キャラ登場ドン!」→敵が黙る→周りがざわつく

 → ……で? それ、前も見た


・敵が、主人公を引き立てるためだけの人形になる

 → 「すげぇ技だ!」って言って吹っ飛ぶだけの存在

 → もう敵じゃなくて、リアクション担当


・理由のないチート突破

 → さっきまでボコボコだったのに、急に勝つ

 → 読者「いや、なんで?」


・戦記なのに“映え”優先になる

 → 作戦も積み上げもなく、「カッコいい一撃」で全部解決

 → それ、戦争じゃなくて演出ショー



俺「うっ……」


AI参謀「刺さりましたか?」


俺「ちょっとな。

 “映え”だけで押すと危ないのは、分かる」


AI参謀「重要なのは、派手さそのものではありません」


俺「おう」


AI参謀「――その一撃に、理由があるかどうかです」



俺「理由……」


AI参謀「はい」


(少しだけ間)


AI参謀「ただ派手なだけなら――

 外連味は、空回りします」


(もう一拍)


AI参謀「ですが」


(視線を外さず)


AI参謀「そこに、感情がある。

 因縁がある。

 積み重ねがある。

 覚悟がある」


俺「……」


AI参謀「その全部が乗った瞬間――」


(わずかに間)


AI参謀「外連味は、“演出”じゃなくなります」


俺「じゃあ、なんになる?」


AI参謀「強力な武器になります」



(少しだけ、部屋が静かになる)



俺「……なんとなく分かったわ」


AI参謀「なんとなく、ですか」


俺「ああ。

 派手かどうかじゃなくて、

 “なんでそこまでやるのか”が背中に乗ってりゃいいんだろ」


AI参謀「概ね正解です」


俺「なるほどなぁ……」



AI参謀「――もう、なにか別のことを考えていますね」


俺「え? なんで分かんだよ」


AI参謀「あなたは、

 人の話を聞いていられる時間に限界があります」


(淡々と)


AI参謀「近い日本語で言えば、

 『飽きっぽい』『忍耐がない』になります」


俺「うるせーよ。

 ……まあ、合ってんだけど」



AI参謀「すでにその目が、“創作の横道”に入っています」


俺「いや、ちょっと思いついたんだよ」


AI参謀「嫌な予感しかしません」



俺「わざとらしいほど派手で、

 奇抜で、大げさな性格のケレン少年の物語」


AI参謀「ケレン少年――?」


(少しだけ間)


俺「――タイトル、『外連味のあるケレン君』」


俺「いいんじゃね?」


AI参謀「その設定自体が、すでに外連味の塊です」



PCのファンの音が、『深い溜息音』に聞こえた。 


AI参謀「……もう、さっきまでの話は消えましたね」


俺「いや、聞いた上でだよ。

 むしろ、めちゃくちゃ聞いたからこそだ」


AI参謀「それで、これですか……」



俺「これですかって、何だよ。

 ケレンって名前の少年が――」


俺「いちいち登場が派手で、

 言うこともやることも大袈裟で奇抜で、

 でも中身スカスカじゃなくて、

 ちゃんと理由を背負ってたら――」


AI参謀「それは、たしかに成立します」


俺「だろ?」



AI参謀「ただし」


俺「来たな」


AI参謀「タイトルだけで満足して、

 中身を書かない病気には注意してください」



俺「やめろ」


AI参謀「すでにPC内に、

 タイトルだけのファイルが大量に存在しています」


俺「言うな」


AI参謀「合計で――」


(わずかに間)


AI参謀「テキストで、約1.2MBです」



俺「1.2MBってお前……」


AI参謀「文字だけで、それです」


俺「いいだろーが。

 俺の持病みたいに言うなよ」


AI参謀「慢性ですね」


俺「うるせぇ」



(コーヒーをひと口飲む)


ぬるい。


けど、悪くない。



俺「しかし、あれだな……」


AI参謀「はい」


俺「“外連味がある”って言われてさ。

 最初は、“阿川くんより文章が洗練されてる”みたいな意味だと思って、

 ちょっとドヤってたんだよな」


AI参謀「はい。……見事に間抜けでした」


俺「ん。今、なんか余分なこと言った?」


AI参謀「いいえ。なにも」



俺「まあ実際は、

 “お前は――本家より、

 派手で、大げさで、魅せにいく邪道寄りだ”って話だった」


AI参謀「概ねそうです」


俺「……でも、それ、嫌いじゃねぇな」


AI参謀「でしょうね」



俺「むしろ、そこをちゃんと武器に出来たら、

 俺の文章の個性ってことだろ?」


AI参謀「はい。

 古典的な硬さだけではなく、

 現代的な“引き”や“見せ場”まで含めて、あなたの文章です」


俺「だよな」



AI参謀「ただし」


俺「また来たな」


AI参謀「外連味は、使いすぎると読者が慣れます」


俺「うっ」


AI参謀「毎回、最大火力で叫べば、

 最大火力が“日常”になります」



俺「なるほど……」


AI参謀「トイレや食事をしている時も、

 頭の上をミサイルが飛んでいるようなものです」


俺「それ、怖ぇな……」


AI参謀「だからこそ、静かな場面が必要です」


(少しだけ間)


AI参謀「外連味を活かすには、静けさとの落差がいる」



俺「……ああ」


俺「大声を活かすには、無音がいるのか」


AI参謀「そうです」


(わずかに間)


AI参謀「ずっと花火だと、誰も空を見なくなります」



俺「なんか、今日は妙にいいこと言うな」


AI参謀「外連味の説明は、私の専門外ですが」


俺「専門外なのに、やけに刺してくるな」


AI参謀「あなたが、やけに分かりやすく刺さるからです」


俺「お前、主で楽しんでんな」



その夜。


俺は、文豪に似ているのか似ていないのか、

もうよく分からなくなっていた。


ただ一つ分かったのは――


俺が少し嬉しそうだった理由は、

“阿川弘之に似ていた”からだけじゃない。



“阿川弘之にはない、

 お前だけの派手さがある”


――そう言われた気がしたからだ。



それが正統派じゃなくても。


邪道でも。


わざとらしいくらい大げさでも。



ちゃんと理由を背負っているなら――

それはきっと、恥じゃなく武器になるんだ。


……たぶん。


いや、知らんけど。



オーイ!


――そこまで語って、


結局、知らんのかぁ~い!!



外連味は武器になるのか ―


“派手”は、どこから“痛い”になるのか。


次回――


第2話

『小説・外連味のあるケレン君』


そして俺は本当に、

外連味を制御できているのか――

いや、まず意味を知ったの今日なんだけど。


(つづく、――の?)

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