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魔王たちの主  作者: 御家 宅
第三章

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森への同行者

「これはベルフェの言う通り、調べた方が良さそうだな。とはいえ、俺たちはまだ国の住人じゃないし、大っぴらに調べるは難しいだろうから、まずはフィリエさんにでも聞いてみるか。何か知ってるかもしれないしな」


 俺たちはこの国に移住して、この国の国民になる予定だ。その上、冒険者になれば、否応なく絡んでくることが見込まれる。そうなってから動いていては後手に回る可能性もある。

 調べられるところから、調べ始めた方がいい。アゼルの襲撃の時でもそうだが、情報があれば先手を打てる可能性が高まる。


「はい。そうでございますね。では、今晩辺りにでも森に行きますか?」

「ああ、そうだな」

「かしこまりました。それではフィリエに連絡しておきます」


 早速ベルフェが森へ行って聞いてくれるらしい。

 今すぐ原因を探りたいわけではないが、早いことに越したことはないので、助かる。


「あの…、それは皆さんで森へ行かれるということでしょうか?」


 俺たちの会話を勘違いしたのか、俺の横で話を聞いていたティフェア様が問い掛けてきた。

 その眼がきらきらと輝いていて、何やら期待に満ち溢れている。

 それに合わせて、今まで緊迫感に包まれていた空気が霧散していく。


「え? いや、ベルフェだけのつもりだったんですけど…」

「え? あ、そうなのですね…」


 ティフェア様が俺の返答を聞いて、明ら様に肩を落として意気消沈した。

 その様子から、ティフェア様が余程森へ行きたいことが察せられる。

 最終試験に合格し、これからは俺たちと生活を共にするので、森へ連れて行くのはやぶさかではないが、今は流石に全員で森に行くことはできない。


「ほっほっほっ、フェイル殿、儂のことならお気になさらず、森へ行ってくださってもよろしいですぞ」

「え? でも、今は護衛中ということになってますから」


 ティフェア様の悲しそうな表情を気に留めたのか、魔法師団長が許可を出してくれた。

 その許可は、俺としても正直ありがたいのだが、護衛任務を離れるというのは気が引ける。

 かといって、国の重鎮である魔法師団長を森へ連れて行くことは、何かあっては困るためできない。なら、ティフェア様ならいいのか、という話だが、彼女自身がそれを望んでいるし、それを含めて俺たちに同行することを許可した以上、連れて行かないという選択肢はないのだ。

 魔法師団長もその辺りを理解して、自分も行くと言わないところが、魔法師団長の漢気溢れる魅力の一つだと言える。


「何、護衛なら騎士たちもおりますでの。それに既に国境も超えておりますのじゃ、騎士を連れた使節団を襲おうとする賊もおりませんじゃろう」


 魔法師団長が乗った馬車を襲えば国際問題になる。

 そんなことになれば最悪戦争も起こり得る。それを回避したければ、全力でこの国の騎士が、襲撃した賊を追いかけ、首を取り、それを王国側に差し出して交渉するしかない。それこそ国家規模の騎士を派兵して草の根をわけてでも見つけ出すに決まっている。それが分かっていて襲ってくる賊など、いないということだろう。


「そうですか、分かりました。では、お言葉に甘えさせていただきます」


 俺は魔法師団長に感謝し、素直にあたまを下げた。

 先日、オルフェス、ベルフェからも立て続けに、アイネラたちが、俺が来なくて寂しがっていると聞かされていたので、気にはなっていたのだ。オルフェスもベルフェも、この旅が終わればと答えてくれてはいたようだが、その都度、肩を落としていたと聞かされれば、誰だって心配になってしまう。


「あの…、それでは…、私もご一緒できるのでしょうか?」


 この会話で息を吹き返したティフェア様が、恐る恐る尋ねてくる。

 ただし、眼の奥には期待がありありと見て取れた。


「ええ、そうですね」

「! ありがとうございます! ガレリック様もありがとうございます」


 ここで無下に駄目と言うほど、俺も性格は悪くないつもりだ。

 俺の了承にティフェア様が顔を輝かせ、許可を出してくれた魔法師団長にも礼を述べた。

 ティフェア様は余程嬉しかったのだろう、飛び跳ねそうなほど喜んでいる。


「ただし、俺たちの言うことは必ず守ってくださいね。森といっても冒険者が入るよりも深いところなので、危険ですから」

「はい、勿論でございます!」


 ただ、その嬉しさは分からなくはないが、俺たちが出入りしているから安全と思われても困る。何かあってからでは遅いのだ。このため、危険であることを強調しておいた。


「それでは、フェイル様、フィリエにそのように連絡しておきます」

「ああ、頼む」


 ベルフェが事の顛末を見届けると、フィリエに事前に連絡を入れてくれる。

 これはきっと、晩御飯も用意されていると思っておいた方が良さそうだ。久しぶりの森での食事は楽しみだが、魔法師団長に申し訳ない気分になる。


『なぁ、ベルフェ。もしできれば、ガレリックさんたちへの土産も準備してもらえるように伝えてくれるか? あ、無理やり用意させる必要はないから、できればでいいからな』

『はい。かしこまりました』


 俺は急いでベルフェに念話を繋げると、追加で土産を頼んでおいた。

 俺まで森へ行って手ぶらで帰ってくるのは、流石に気が利かな過ぎて恥ずかしくなる。特に魔法師団長にあれほどの漢気を見せられた後では猶更だ。


「ちなみにオルフェス、ティフェア様も結界に入れるのか? 入れないようなら、先に入れるようにして来て欲しいんだけど」


 俺はベルフェとの念話を切ると、気になったことをオルフェスに尋ねた。

 ティフェア様が同行するのは構わないが、結界に入れないならば、連れて行きようがなくなる。


「それは問題ありませんよ。俺たちと一緒なら入れますから」


 オルフェスの言葉でティフェア様も入れることは分かったが、その中に気になる言葉を見つけてしまう。


「『俺たち』って、此処にいる俺たちってことか?」

「はい。フェイル様とベルフェとネルフェア、それと俺ですね」


 もし、『俺たち』の中に、俺と繋がる者という意味が含まれているなら、誰かが敵の手に落ちた時が心配だったが、オルフェスたちならば安心だ。そもそもこいつらが敵の手に落ちるようなら、あの結界も役に立たないしな。


「ああ、分かった。それなら大丈夫だ」

「それで、フェイル様。話は変わるのですが、森に行かれるのであれば、その前に確認したいことがあるのですが、よろしいですか?」


 俺の疑問が解消したことを受け、今度はオルフェスが問い掛けてきた。


「ああ、どうしたんだ?」

「はい。ティフェアの冒険者登録の件ですが、ティフェアはこの国の皇都で冒険者登録をするんですよね?」


 オルフェスが知りたいことは、俺でも、森でもなく、ティフェア様についてだった。

 ティフェア様は俺たちと一緒に行動をするので、冒険者登録をした方が良いが、強制ではない。ただ、この場合、俺たちが冒険者の依頼を受けている時は別行動となるが。

 そのため、返答はティフェア様に任せようと思い、俺はティフェア様に視線を向ける。


「はい。そのつもりでございます」


 ティフェア様もそれを察して、オルフェスに返答してくれた。

 オルフェスはそれを聞いて、一度軽く頷くと、再び俺の方に視線を向けた。


「フェイル様、それであれば、ティフェアが召喚する魔物にガロア配下の灰色狼を召喚させては如何でしょう?」

「え? そんなことできるのか?」


 オルフェスから予想外の提案を受けて、俺は驚いて眼を瞬かせてしまう。

 俺が冒険者登録をした時は魔物が指定できなかったはずだ。だからこそ、オルフェスたちが召喚されてしまったので、俺の認識は間違っていない自信がある。


「魔物召喚の魔法陣が発動する時に少々細工すればできますよ」


 俺はその返答に怪訝な表情をする。

 あの魔法陣は床に刻み込んであるので、細工するとなると、魔法陣を傷付けることになる。

 それは後々問題になる気がするので、できてもしたくない。


「魔法陣を傷付けることになるだろ。それなら却下だ」

「いえ、それなら大丈夫です。刻まれている召喚の魔法陣の上に、幻術で見えないようにした別の魔法陣を被せてやれば良いので。ティフェアには下の魔法陣に魔力を流してもらいますが、下の魔法陣の発動と同時に上の魔法陣から灰色狼を召喚して、下の魔法陣は召喚前に無効化させます。ですので、見ているものからは魔法陣から灰色狼が召喚されたと認識するので問題ありません」


 なるほど。それならできそうな気がする。

 ただし、こんな事ができるのはオルフェスたちくらいのものだろう。あ、フィリエさんでもできそうかな。

 だが、できることと、やることでは雲泥の差がある。そこには当然良心も絡んでくる。


「でもそれって、ずるしてることにならないか?」

「見方によってはそうですが、実際にティフェアは魔法陣に魔力を流しますし、発動まではさせるので、その後の手順が変わるだけですよ。それに、ティフェアが召喚した魔物がテオたちに馴染めばいいですが、そうでない場合は困ります。それに何より、灰色狼であれば、ティフェアの護衛にも使えますからね。あとは、ティフェアが灰色狼を召喚して服従させれば、冒険者の階級も俺たちと同じような階級になりますし、活動もし易くなると思いうんですが」


 渋る俺に、オルフェスが次々と魅惑的な提案をしてくる。

 う~ん。なんという策士だ。

 オルフェスが発動までさせると言い切っている以上、ティフェア様にはそれだけの魔力はあるということだ。それであれば、何か異常事態が起こらない限り召喚も服従もできると思われる。その後の手順を変えるだけで、これだけの利点があれば、心が揺らぐのも致し方ない。

 ただ、この提案も俺たちからすれば良い案だと思えるだけで、本人が良いと思えるかが重要だ。


「理解はできたけど、でも、それは俺たちが決めることじゃなくて、ティフェア様がどう思うかだろ」

「フェイル様、私なら問題ありません」


 俺が、オルフェスに決断はティフェア様次第という旨の回答を投げ掛けると、ティフェア様が悩むことなく了承の言葉を紡いだ。


「いいんですか?」

「はい。腕には多少の自信もございますので、魔法陣が発動できるなら、あとは儀礼通過のようなものでございます。それであれば、私もテオ殿たちのお仲間の方が安心できますし、何より仲間として気を遣わなくて良いのは、これからの生活を考えれば助かります」


 俺たちはこれから見知らぬ土地で生活することになる。そう考えると、気を遣う点が少ない方が助かる。召喚した魔物が馴染まないようでは、生活に加えて魔物の仲まで気を遣うことになるし、冒険者としての活動にも支障を来す。


「分かりました。それじゃあ、森へ行った時に、ガロアに相談してみるか」

「ええ、そうですね」


 オルフェスが森へ行く前に相談したかったのは、このためだろう。

 ガロアには連れて行く者の選別をしてもらわなければならないし、それには時間も掛かる。度々森へ行けない俺のことを考えて、ここでガロアに伝えたかったという、オルフェスの気遣いが感じ取れる。


 その後、俺たちは森へ行く段取りを詰め、野営地で天幕に入ると、魔法師団長に森へ行く挨拶をした。

 俺にとっては久しぶりの森なので、少しばかり気が急いていたのかもしれないが、折角行くなら早い方が良い。


「ガレリックさん、それでは行ってきます」

「うむ。楽しんできてくだされ。ティフェア嬢もじゃ」

「はい。ガレリック様、ありがとうございます」


 ガロアやフィリエさんやアイネラたちは元気にしているだろうか。会えるのが楽しみだ。

 こうして俺たちは、国境を越えた初日に森へ転移した。


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