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どうも、前世で殺戮の魔道具を作っていた子爵令嬢です。※Web版  作者: 優木凛々
おまけ2

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【発売記念SS】薬師ココ、犬を拾う(※Web版)⑤


コミック2巻、それと5月30日発売の『ブチ切れた公爵令嬢、勢いで悪魔を召喚してしまう』の発売を記念しまして、SSを投稿します!

本日は最終話、5話目です。


バン!



突然、奥のドアが開いた。

職員が慌てた様子で出てくると、クロエを見つけて走り寄ってきた。



「ココさん! 丁度良かった! 来てください!」

「え⁉」

「いいから、早く! 皆さんお待ちです!」



よく分からないまま引きずられるように奥の会議室に入ると、そこには大きな会議テーブルを囲んで十人ほどの男女が座っていた。

一番奥に座ってニコニコしている白髭の老人以外は、皆一様に険しい顔をしている。


頭の上にはてなマークを浮かべながら促されるまま空いている席に座ると、立派なスーツを着た男性が、テーブルの上に小さな瓶を置いて、硬い声で尋ねた。



「これは君が作ったもので間違いないか」



 クロエは目を凝らした。瓶には店で使っているラベルが張られている。

他に使っている店を見たことがないし、多分うちの商品ねと思いながら彼女はうなずいた。



「はい、そうだと思います」



白衣を着た中年男性が、ガタンと立ち上がった。



「君! どうやってこの薬を!」

「い、一体どんな方法を使ったらこんな!」



隣に座っていた眼鏡の女性も目を血走らせ立ち上がる。

クロエは訝しげに彼らを見た。状況がさっぱり分からない。


サイファのギルド長が口を開いた。



「では、私の方から説明しよう」



彼によると、冒険者ギルドは全地下迷宮封鎖寸前まで追い詰められていたらしい。



「封鎖に向けた会議をしていたところ、医師の1人が飛び込んできてね」



医師は真っ青な顔で「特効薬が発見されました!」と叫んだらしい。

当然会議場は上へ下への大騒ぎで全く収拾がつかず、最終的には完治した冒険者たちが呼ばれた。



『昨日湖を歩いていたら、眼鏡の小柄な少年に薬をもらいました』



その少年のくれた薬を半信半疑で飲んだところ、紫に変色していた顔がみるみるうちに元に戻ったらしい。



「し、信じられない!」

「だ、誰だ、その少年は!」



そして、その少年の特徴を聞いたサイファギルド長が、

「恐らくうちの街の薬師ココさんではないか」

と言い、そこにタイミングよくクロエが現れた、という次第らしい。


クロエはようやく合点がいった。どうやら彼らは毒による症状を未知の病気と勘違いしていたようだ。



(確かに毒と病気を勘違いしていたら、薬は作れないわよね)



彼女が納得しながらうなずいていると、ギルド長が口を開いた。



「それで、ココさんには薬の作り方を教えて欲しい。もちろん相応の対価は払うし、製法についても秘密を守る。特許を取るサポートもこちらでさせてもらう」

「はい、かまいません。特別な材料や製法を使っているわけではありませんから」



何となく話がまとまり、その場の全員がホッとしたような顔をする。


そして、今回の件でココの名前が表に出ないようにすることを条件に、今後わからない病気や毒がでたときは、有料で分析を手伝うという約束を交わした。





冒険者ギルドでの騒ぎの2週間後、少し蒸し暑いどんよりと曇った午後。


クロエは、チェルシーと共に都市間馬車乗り場に来ていた。

彼らの正面に立っているのは、大柄な冒険者と犬オスカーだ。


冒険者が頭を下げた。



「ココさん、ありがとうございました。お陰で冒険者家業を続けられます」

「いえいえ、薬師として当然のことをしたまでです」



クロエは差し出された手を握り返すと、しゃがみ込んで犬の頭を撫でた。



「元気でね。おやつ食べ過ぎちゃダメだよ」

「わんっ」



元気よく吠えながら何か持っていないかとクロエのポケットの匂いをかぐ犬を、苦笑いしながら両手で撫でるクロエ。

ふわふわした毛を思い切り堪能する。



「じゃあ、我々はこれで」



冒険者がクロエに頭を下げると、踵を返して歩き出した。


犬が「お元気で」とでも言うようにクロエの手をペロリと舐めると、わんわんと嬉しそうに青年の後に付いていく。


一人と一匹が雑踏の中に消えるのを見送ったあと、チェルシーが心配そうにクロエの顔を覗き込んだ。



「大丈夫? あの犬、結構気に入っていたんでしょ?」

「……うん。でもきっと飼い主と一緒にいるのが一番だと思う」



クロエが寂しげに笑う。

割り切ったつもりではあったけど、寂しいものはやはり寂しい。


クロエの落ち込む顔を見て、チェルシーが、よし、という風に口を開いた。



「今日店に来なよ! わたしがおごってあげるからさ!」

「え、いいの?」

「もちろんだよ! 今日は飲もう!」



チェルシーが、笑顔でクロエの背中をバンバン叩く。


クロエはチェルシーを感謝の目で見た。

友だちってありがたいもんだな、と思う。


そして、2人は、それぞれ何杯飲めるか話し合いながら、街の中心部へと戻っていった。






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お手に取って頂けると嬉しいです(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)ペコリ。:.゜ஐ⋆*

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