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6 シルヴィア・ロイトリン 16歳 結婚式当日

「ねぇ、この髪型、変じゃないかしら?」とシルヴィア・ロイトリンは純白のウエディングドレスを着ながら、神経質そうに鏡を見つめ、銀色の髪を束ねた髪を見つめている。今日は、シルヴィア・ロイトリンの誕生日であり、結婚出来る年齢となった。そして、本日、フェルディナント・ベンダール殿下。この国の第一王位継承者との結婚式の日である。


「本当にお綺麗でございます。きっと、フェルディナンド殿下も惚れ直されますわ」とお付きのメイドが言う。


「このネックレスは、別のものと換えた方がいいのではない? どう? 似合っている?」


「シルヴィア様の瞳の色と同じネックレスで、良くお似合いです。シルヴィア様」とまたメイドが答える。新婦控え室で先ほどから何度もされているやり取りだった。



 トン・トン


 新婦控え室にノックの音が響く。


「まぁ、いらっしゃったわ。ねえ、本当にこれで変じゃない?」とシルヴィアは不安そうにメイドに聞く。


「本当にお綺麗でございます」とメイドが笑顔で答える。


「失礼致します」と、扉を開けて入ってくる女性。マリアンヌ・ヴェルガ—婦人であった。


身重みおもに関わらず、遠路はるばるお越しになって下さってありがとうございます」と、シルヴィアは、模範とも言えるような完璧な所作で、マリアンヌ・ヴェルガ—婦人を迎えた。


「こちらこそ、結婚式へのご招待、誠に感激の至りでございます。シルヴィア様、本当にお綺麗ですよ」とマリアンヌも、美しい所作で挨拶を交わす。


「マリアンヌ様。あとどれくらいで?」


「あと、1ヶ月という所でございます。最近は、お腹を蹴ることも多いのです」とマリアンヌはお腹を摩りながら幸せそうに答える。


 一通りの挨拶が終わると、シルヴィアはメイド達は下がらせた。そして、口を開く。


「マリアンヌ様。この日を迎えられたのは、ひとえにあなたのお陰です。どれほどお礼を言っても、言い切れるものではない程に」と、シルヴィアは深く頭を下げた。


「滅相もございません。頭をお上げ下さい」とマリアンヌは慌てて言う。


「いえ、言わせてください。そして、謝罪をさせてください。私は、あなたに対して、酷いことを沢山しました。幼かった私には分からなかったのです。私はいつも独り相撲をしていました。私はずっと焦っていました。殿下の婚約者として相応しいのかと。あなたを、いえ、あなただけではなく、多くの人を邪険に扱い、殿下に相応しい女になろうという努力をするのでもなく、ただ、殿下を独占することしか考えておりませんでした。また、いつもあなたが私を殿下に相応しい女となるように導いて下さっていたことに、幼い私は気付いておりませんでした。あなたがアドルフ様に嫁がれてから、やっと私は気付きました。そして、それからというもの、いつも私はあなたの姿を追って、今日と言う日を迎えました。私が道を踏み外しそうなとき、そっと、私を正しい道に導いてくださいました。私の最大の感謝をお受け取りください。そして、私の誠心誠意の謝罪をどうか、お受け取りください」とシルヴィアは、更に深く頭を下げた。編み上げた髪が崩れ落ちてしまいそうな程。


「謝罪と感謝。確かに受け取らせていただきました。シルヴィア様、頭をお上げ下さい」とマリアンヌは震える声で言った。


「謝罪と感謝を受け取っていただき、誠にありがとうございます」とシルヴィアも言って、頭を挙げる。


 そして、二人は見つめ合いながら、互いに微笑みあった。


「マリアンヌ様。不躾なお願いでございますが——」とシルヴィアが口を開いた。


「私も、殿下との子供を恵まれたら、母親としてはどうあるべきか、ご指導戴きたいのです」と、シルヴィアはマリアンヌの膨らんだお腹を羨ましそうに見つめた。


「畏まりました」とマリアンヌは涙を溜めた目で優しく微笑む。


「ありがとうございます」とシルヴィアは言う。そして、マリアンヌとシルヴィアは抱き合った。


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