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九話 奴は警戒対象だ。

前回に引き続き読んでいただき、ありがとうございます!


また、素人なためあまり上手く書けていませんが、温かい目で見てくださると幸いです!

「やられた…」



呟く隈崎。それを横目に、酒井はみつきへ斬りかかる。しかし、みつきは酒井の腕をつかむと、そのまま上へ振り上げ、床へ叩きつけた。


そしてみつきは、刀から滴る()を手に溜めて飲み干す。



(ッ!隈崎さんの血を飲んだッ!?)


「あまり良い戦いじゃなかったけど、今回は私の勝ちだね」



そう言いながら、みつきの体は闇に染まっていく。


酒井と隈崎はすぐに立ち上がり、同時に叫ぶ。



「絶対逃さねぇ!」

「絶対逃さない!」



酒井と隈崎は前後から同時に刀を振り抜く。しかし、刃は空を斬った。そこにはもう、みつきの姿は無かった。


隈崎は思わず舌打ちをする。



「また…逃がした…」



そして、この戦いは幕を閉じた。


一方、秋はみつきの能力によってスナックまで帰ってきていた。


急に押し出されるように影移動したせいで、着地と同時によろける。



「……ここは?」


「秋くん?大丈夫かい?」


「マスター助けてください!みつきさんが……対魔人協会の人たちと戦ってるんです!しかも二人相手で……!」


「対魔人協会?大丈夫だ。水瀬さんは能力を得る前からテーゼの次席なんだ。あの人は別格だよ。心配することはない」



僕はマスターの言葉に少し心を落ち着かせる。



「それなら、僕が行っても逆に足手まといになってしまうんですね…」



マスターは頷く。



「今私たちにできることは、ここで信じて待つことだ。とりあえず落ち着くためにも何か飲むかい?」


「えっと、僕お酒は…」


「お酒には割材があってね、ウーロン茶と緑茶も置いてあるんだよ」


「そうだったんですね!」


「どっちを飲みたいかい?」



マスターは少し考える。



「……ああ、そうか。君はもう魔人だったね。必要なら血も出せるけど?」


「い、いや!血液は大丈夫です!それなら、緑茶でお願いします!」



そして僕はお茶を飲みながら、マスターと一緒にみつきさんを待っていた。


僕は考える。



(本当にみつきさんは大丈夫なのかな…?)



数分後、影が現れ、そこからみつきさんが飛び出し着地する。



「…はぁ…危なかったー」


「みつきさん…!大丈夫ですか!?」


「大丈夫だよー。まぁ、ちょうど未由ちゃんとの模擬戦で血を使いすぎてたから、ちょっと危なかったけど…」



みつきさんは笑っているが、息は荒れていた。



「あ、秋くんケガはなかった?」


「は、はい!」



そう言う彼女にふと視線を向けると、背中には大きな切り傷が刻まれていた。



「みつきさん、そのケガは…」


「ん?あーこれはちょっとしくじっちゃってねー」



笑顔を作って誤魔化すみつきさんに、僕は少し腹を立てる。



(本当は危険な目にあっていたのに、なんでみつきさんは…)



マスターはみつきさんに血の入ったグラスを渡した。



「ありがとうね、助かるよ」



そう言いながら飲み干す。



「よし、それじゃあ帰ろう。色々と迷惑かけてごめんねマスター」


「大丈夫ですよ。迷惑をかけてしまうのは仕方がないことですし、こういう迷惑は仲間にかけてなんぼですから」



優しく言うマスターは、本当に器の大きい方だと思うのだった。


そして僕たちはそのまま拠点へ帰り、みつきさんは報告へ、僕は家に帰り就寝した。


次の日、僕はいつも通り登校し、授業を受け、何事もなく放課後を迎える。家に帰り、時計を見ると訓練の時間が迫っていた。僕はみつきさんと合流し、戦闘場へ足を運ぶ。


今日は加賀さんと半田さん、そして澤谷さんが来ていた。



「おはよう秋!」



一番最初に話しかけてきたのは加賀さんだった。



「おはようございます!」


「あれ?秋、少し元気になったか?」


「え?僕はいつも通りですけど、そう見えました?」


「ま、良いことだ!とりあえず訓練を始めよう!」


「はい!」



すると、半田さんが今日の訓練内容を説明し始める。



「今日はお互いに武器ありの模擬戦。徹底的に君の“真似するだけの戦い方”を矯正していくから覚悟して。」


「っ…はい!」



僕はみつきさんからナイフを貸してもらう。


最初の相手は半田さんだ。


僕たちは互いに距離を取り、半田さんはナックルを装備し、僕はナイフを構える。



(ナックルってことはボクシングかな…?)



僕は昨日の出来事を思い出しながら、真っ直ぐ半田さんを見る。



(でも昨日は一瞬で転ばされたから、他の格闘技を使うかもしれないな)



そして、みつきさんが開始の合図を出した。


半田さんは開始と同時にこちらへ距離を詰めてくる。


僕は考えた。


どうしたら半田さんの攻撃をいなせるか。そして、どうしたら僕の攻撃を通せるか――。


半田さんは眼前まで迫っており、その拳の間合いに入った。


しかし、気づいた時にはもう拳は動いていた。


僕は反射的に避ける。だが、頬を掠めた。



(ボクシングのストレート!?)


「ッ…だけど!」



しかし、僕はその状況を逆手に取り、ナイフを半田さんへ振り上げる。



「なっ!?」


(ギリギリで回避して反撃を優位に運んだ?)



半田さんはナイフを避けるが、僕はそのナイフを止めずに振り続ける。


半田さんはすべて避け、距離を取る。


僕は相手に一息つかせないために距離を詰め、再びナイフを振る。



(……水瀬さんの真似か。だけど、タイミングが甘い)



半田さんは分かっていたかのように、ナイフを持つ僕の右腕をつかんだ。


――次の瞬間、気づいた時には投げ飛ばされていた。



(ここで合気道か…!)


(秋くんはまだ、()()()()()ということができてない。)



なんとか着地するが、半田さんは回し蹴りを繰り出した。


この状況、普通なら不可避のタイミングだ。


でも僕は、この攻撃が来ることを想定していた。


半田さんの足は空振りする。



(っ!読まれた!?)



身を屈ませた僕は、立ち上がると同時にナイフを突き出す。


半田さんは体勢を崩しながらも避ける。



(それでも反撃は甘いな…)



半田さんは崩れた体勢の中で、僕の腕を蹴り上げナイフを飛ばす。


そして少し転がり、体勢を整えてから拳を突き出した。


その拳はモロに僕の鳩尾へ入り、視界が揺れる。



「昨日よりかはだいぶ良くなったけど、まだ実戦には行けないね。反撃が甘いのと、自分を過信しすぎかな……でも、その調子だよ。」


「あ…ありがとうございます…!」



不意の一撃をもらって呼吸が乱れるが、思いもしなかった評価に僕は少し嬉しくなっていた。



「とりあえず、今のはまだ人間相手の戦闘だよ。ここからが本番だから気をつけてね」



すると、加賀さんが僕に話しかける。



「ここからは目隠しをした状態で模擬戦をしよう!」


「え、なんでですか?」


「相手の行動を予測する力を補うことができるからな!」


「なるほど…」


「秋、きっとお前はこの組織の大きな戦力になるはずだ。だから頑張ろうな。」



加賀さんは少し、僕を心配しているような気がした。


僕にはまだ経験が足りない。



「ありがとうございます!いつか加賀さんたちと一緒に組織のために戦いたいです!」


「ああ、頑張れよ…!」



先輩たちの期待に応えたい。初めて、そう思った。


相手は加賀さんと澤谷さんでやることになった。


最初は加賀さん。


加賀さんは何も取り出さずに構える。


すぐに模擬戦が始まった。


目隠しをされ、僕の視界はゼロになる。


こちらへ接近する音が聞こえた。



(来るっ!)



そう思った刹那、一瞬だけ浮遊感を感じた。


気づけば地面に倒れており、転ばされていた。


目が見えないゆえに平衡感覚が狂い、いつ転ばされたのかさえ分からなかった。


手を差し出す加賀さん。


僕はその手を借りながら立ち上がる。



「まぁ、最初はそんなもんだよ。もう1回やろう」



そして2回目、3回目と続くが、どう対応すればいいのか分からず同じことを繰り返す。


そして6回目。


戦闘場の砂利と靴が擦れる音で、おおよその距離が分かるようになった。


13回目。


踏み込みと同時に、僕は服を掴まれる感覚がした。


次の瞬間には身体が少し浮き、地面へ倒される。



(まじかよ!もう反応を!?)



そして18回目。


背後で砂利が鳴った。


腕がこちらへ伸びてきている――そう感じ、避けようとする。


だが反応が遅く、投げ技を決められる。


そして19回目。


相手は柔道を使おうとしている――そう感じた。


だから僕は、加賀さんの手をバックステップで避けた。


少し風を感じた。


スレスレで避けたのだろう。



「はっ!?避けた?」



声のする方へ、すかさず拳を繰り出す。


だがその拳は受け止められ、また転ばされる。



「あと少しだったのに…」


「いや秋、お前成長早すぎるだろ…」


「いいじゃん秋。相変わらず瞬殺だけど、徐々に対応できてんじゃん。でもまだ足りないかなー」



澤谷さんが僕に言う。


その言葉で実感し始める。


視覚以外を使った戦闘による成長を。


そして、これでもまだ実戦には及ばないことを。



「それじゃあ今度は俺が相手をする番だな」



澤谷さんは腰に剣を差していたが、それを抜かず木の棒を取り出した。



「ああ、これは一応なめてるんじゃなくて、秋くんが強くなってきたからこそ、うっかり斬らないようにするための棒だからよろしく」


「は、はい!」



そして再び模擬戦が始まる。


しかし、澤谷さんは一向に動き出さない。



(どうして一歩も動かないんだろう?さっきの模擬戦で僕の出方に警戒している…?)


「俺の勝ちだな」



聞こえてきたのは足音ではなく、澤谷さんのそんな声だった。


首元に棒が当てられる感覚があった。


そう。気づかぬうちに、僕は負けていたのだった。



(これが本物の剣なら、僕は死んでいた…)


「どうだ?何も聞こえなかっただろ?」


「はい…」


「秋くんさ、やっぱ来てから反応するだけになってんだよなー」


「それじゃあどうすれば…」


「言ってるだろ?考えろって。要はどこを狙ってくるのか、何をしてくるのか……来る前に予想できると、マジ変わるぜ?」


「わかりました…」


「まぁ、感覚は悪くねぇし、このまま訓練すれば慣れる……じゃねぇと、実戦で普通に死ぬしな…」



その言い方に、なぜか少し胸がざわついた。



「ま、アドバイスはこの辺にして、とりあえずもう1戦な」


「はい!」



それから何度も模擬戦は続いた。


加賀さんには、目隠し状態での体術を。


半田さんには、能力への対応と相手の癖を見る訓練を。


澤谷さんには、次を読むための実戦的な立ち回りを叩き込まれた。


最初は何もできなかった。


何度も地面に転がり、何度も武器を落とし、何度も負けた。


それでも少しずつ、確実に変わっていった。


足音だけで踏み込みが分かるようになった。


呼吸で相手の動揺を察せるようになった。


そして、相手の次の動きを予想することも、少しだけできるようになった。


こうして訓練の日々は続いた。


気づけば、訓練を始めてから九日が経っていた。


カレンダーの日付は六月二十六日を示していた。



「秋、今日は金曜日だからこのあと時間あるよな?」


「はい!あります!」


「じゃあこのあと遊びに行かね?半田や澤谷も来るし、珍しく水瀬さんも来るみたいだからさ」


「みつきさんも来るんですね!もちろん行きます!」



こうして、僕は“華金”と呼ばれる時間を過ごすことになった。


場所は都内のカラオケボックス。


それぞれ順番に歌い、僕はこの前みつきさんと歌った曲を披露する。



「秋くん、意外と歌上手いんだね。」



少し驚いたように半田さんが言う。



「ありがとうございます!みつきさんに教えてもらった曲で、少し練習したんです!」



すると、みつきさんは少し驚いた顔をする。



「そうだったの?そこまで気に入ってくれるとは思ってなかったよー」



そんな風に盛り上がりながらも、僕と澤谷さんはドリンクバーへ飲み物を取りに向かった。


ジュースをコップに注いでいると、澤谷さんが話しかけてくる。



「最近、秋くんって暗闇戦闘にも慣れてきて、かなり実力伸びてると思うんだよねー」


「え、本当ですか?」


「マジだよ。秋くんは模倣力で基礎はできてる。経験を積めば、俺たちくらいの実力には十分届くと思うよ。」


「なら、僕はこの才を使いこなせてきてるってことですか?」


「そういうこと。でも少しずつだ。どれだけ才があっても経験が無きゃフルでは活かせない。だから、これからも一緒に頑張ろうな。」



そう少し笑いながら言う澤谷さん。


今までの笑顔とは少し違っていて、ほんの少しだけ認められた気がした。


そして、その日は日付が変わるまで都内を遊び回った。


――そんな夜。


対魔人協会では、ある作戦が動こうとしていた。



【対魔人協会・第七支部】



「酒井、会議に遅れるぞ。」


「すいません隈崎さーん」



そう言いながら、俺のすぐ後ろまで走ってくる酒井。



「今日は作戦会議だ。もっと副総活官の意識を持て。」


「気をつけまーす」



いい加減な態度で言う酒井だが、会議室に入る直前には背筋を正し、真剣な眼差しになる。


そして、会議が始まった。


隈崎が前に出て説明を始める。



「今回の議題は湘南禁足エリア奪還作戦だ。まず、知っている者もいると思うが、現在禁足地とされているのは藤沢市、茅ヶ崎市、そして寒川町だ。」


隈崎は地図を映し出す。



「今回の作戦で我々は、茅ヶ崎市西部、寒川町、藤沢市北部から東部にかけて奪還を試みる。」


すると、一人の男性職員が手を挙げた。



「すみません、質問よろしいでしょうか?」


「なんだ?」


「なぜ今のタイミングで、さらになぜ第七支部のみで四大組織の一角に乗り込むのですか?お言葉ですが、あまりにも無謀すぎます。今からでも他支部の応援を──」



隈崎は即答する。



「本部命令だ。」



スクリーンに棒グラフが映る。



「見ろ。これは関東内の魔人事件数だ。三ヶ月前と比較し急増。他支部は対応に追われている。よって応援は来ない。」



会議室が静まる。



「だが湘南禁足地を放置するわけにもいかない。それに、今が唯一の好機だ。」



隈崎は続ける。



「現在、テーゼの動きは極端に少ない。確認されているのは九日前、“闇の魔人”が出現した件のみ。」



一瞬の沈黙。



「敵が動いていない今だからこそ、防衛ラインを削れる。勘違いするな。今回は拠点奪還を目的としていない。――防衛ラインの縮小だ。」



すると、隣にいた酒井が手を挙げた。



「はーい質問です!その作戦って、いつ行われるんですか?」


「作戦決行は明後日の夜中だ。」


「あー、やっぱり夜間なんだね…」



酒井の言葉に続き、会議室がざわつく。


『早すぎる』


『突然すぎるだろ…』


そんな小声が聞こえてくる。



「静粛にしろ。」



その一言で、ざわつきは収まった。



「今回の作戦で特に気をつけなければならないことがある。」



隈崎は指を一本立てる。



「一つ目は“闇の魔人”だ。奴は組織内でもトップクラスの実力を持つと言われている。」



二本目。



「二つ目はテーゼ首席の魔人。世代交代以降、未だ素性は明らかになっていない。」



そして三本目。



「三つ目は、九日前に確認された新たな魔人だ。魔人化して間もないと思われる。だが、闇の魔人と二人で行動していた。」



隈崎は一呼吸置いて呟く。



「……奇妙な魔人だ。なぜ闇の魔人は、戦闘中に先にそいつを逃がした?」



その言葉に酒井が反応する。



「重要人物って可能性もありますね…」


「そうだ。可能性が多すぎる。奴は警戒対象だ。」



隈崎は会議室全体を見渡した。



「その上で、これから配置と作戦詳細を説明する。手元の資料を開いてくれ。」



一斉に資料を開く部下たち。


その光景を前に、俺は心の中で強く思う。



(この作戦は何としてでも成功させる。そして闇の魔人に出会った時は――今度こそ、必ず……終わらせてやる)

最後まで読んでいただきありがとうございます!


何とか今週中に出せましたが、来週は中間テストがあるため次回は再来週中に出すことを目標にしてます!


また、「ここがおかしい」や「他の作品に似ている」などの意見があれば言っていただけると改善できるかもしれません!


もし、アドバイスなどあれば言っていただけると次のモチベーションに繋がります!


よろしくお願いします!

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