冒険者なんか辞めちまえ
「うーん、どこにいるんだろう」
「いないねー。」
私とタサはあの女性からもらった紙を頼りに道を進んでいた。その紙には地図が書かれていた。必要最低限だが。
「ここら辺だと思うけど。」
私達はあの女性の言う冒険者を探しながら歩いていた。地図通り右に曲がると、
「いいから、出せ!ってんだよ!」
男性が声を張り上げながら女性を睨みつけていた。いや、脅していたと言うべきか。
「おい!何してる!」
タサが声をかけた。その声に気付き男はこちらを見た。そして私たちの腰にかけている刀に気づく。気づくとほぼ同時にその男は行動していた。
「近づくな!」
女性の手を掴み自分の前に突き出した。腰からナイフを取り出し、女性の首に当てる。
「お前の身のこなし、冒険者か。」
「あぁ?だったら何なんだよ!クエストよりも稼げる。だから俺はこうしてるだけだ。邪魔するなら殺すぞ。」
タサの質問に男は苛立ちを覚えながら答えた。そして響き渡った。タサの低い声が。
「そうか…もういい。」
次の瞬間、男の四肢に激痛が走る。あまりの痛さに男はうつ伏せの様にして倒れる。私は男の手から離れた女性を保護した。それを確認してタサは男に近寄る。そして、男の前にたった。
「人を守る冒険者のくせに、人を守るどころか、人並みのルールも守れないなら、冒険者なんか辞めちまえ!」
タサはそう言い捨て私の方に向かって歩いてきた。
「気は済んだ?」
「えぇ、バッチリ!」
私の知る限り、タサよりも正義感が強い人を今まで見たことがない。
「そういえばあの子は?」
「あぁ、帰らせたよ。ありがとうって言ってた。」
「なら、よかった。」
私達は男を放置して立ち去ろうとした。しかし、私達は歩みを止める。
「何でお前が…」
まだ痛みでまともに立つこともできないはずの冒険者の男が立っていた。
次回。Mr.さっきの男、リベンジ!