1-4.スケジュール
扉を開けると、そこは天国だった。
高嶺依子さん。誕生日は不明だが、おそらく15歳。黒髪ロングはサラサラストレートで、なにより可愛い。それでいて清楚で綺麗なタイプだ。言葉遣いも美しく、毎日何時間まえに起きて身だしなみを整えているのか聞きたくなるぐらいの完璧な容姿。
こうみえてグミが好きなところ、そういった抜け目があるとこも彼女の魅力だ。ファンクラブがあるというのは、噂の域を出ないが、とにかく絶対的な女神のような、女性。高嶺依子さん。
そんな女神の部屋に入るのか、僕は。
半開きの扉から、高嶺さんの部屋が見える。
いい匂いが既にするし、高嶺さんが寝ているベッドがあるではないか!その隣のタンスにはまさか、まさか、身につけるあれが、あるんですか!?!?
僕の頭の中は今、北国の大自然、花畑、僕が全裸で重力1/6ぐらいでびょ〜んとジャンプしながら、スキップしている。
とりあえず頭がおかしくなりそうだ!!!
「早く座れよ〜」
茂木、加代子さん、高嶺さんが床に座っている。僕は部屋の入り口で立ち尽くしていた。
「ご、ごめんー!」
座る僕。高嶺さんの部屋に座ったぞ!僕は!人類が月に到達したように、僕は女子の部屋の床に座ったのだ!それも、皆のアイドル高嶺依子の部屋だ!ジーザス!!!
高嶺さんは、机の引き出しから、四角い木箱を取り出し、僕らに見せてきた。
それは、先ほどまで見ていた蝶々たちの標本だった。
身体に針を刺された虫たちは、綺麗な姿のまま箱に収められている。
見たこともない美しい羽根の数々。
「自慢のコレクションですが、クラスメートの皆さんには虫のコレクションだなんて、理解されないのではないかと、誰にも見せた事はありませんでした」
「すてき」
加代子さんは口を開いたままだ。
「凄いな高嶺さん!」
茂木も驚いている。
僕は何も語らなかったが、実は高嶺さんが虫が好きだとか、裸足で芝生を駆けたりするのだとか、意外と近い存在のように思えて、嬉しかった。
区切りの良いところで、僕らは帰ることにした。
「ありがとうございました」
「こちらこそ!高嶺さん家は凄いね!」
茂木が何度も騒いでいる。
「いつでもいらしてください。何なら、別荘にご招待しますよ。別荘には剥製がありますから・・・」
別荘!?やはりお嬢様じゃないか!
「いく」
加代子さんが答えた。そして僕を見る。
「う、うん!良いの!?高嶺さん!?」
「もちろんですよ。再来週のはじめに行く予定をしていました。いかがですか?」
「よよよ、予定を確認するね!」
何故か逃げ道を作る僕!スケジュールなんてガラ空きだ!でも何故か格好をつけてしまった!
こうして、夢の様な1日は、夢の続きを見せたまま終わった。
しかし、この後僕の1日はもっと大変な事になる。