1-5.シチュエーション
茂木とも別れ、僕は加代子さんと2人きり、帰り道を進む。なんとなく自転車を降りたので、ゆっくりゆっくり、自宅に向かう。
高嶺さんの豪邸の話を一通り終えると、次は七星の話になった。
「しかし七星も、急に留学だなんて、忙しい奴だよなぁ」
実は僕は七星が留学ではない事を知っている。七星は今、新任担当天使講習会とやらに長期出張しているらしいのだ。加代子さん含め、周りの皆には留学という事で話をおさめていた。
「太陽みたいで、嵐みたいな人」
加代子さんが言う。なるほど的確な表現かもしれない。
「加代子さんは自炊してるの?」
ふとした疑問が浮かぶ。
「うん」
「大変だね」
「調理器具はあるから大丈夫。でも寂しい」
「ひとりで食べるのは、寂しいよね」
「食べにきてよ、ハカセ」
え?
カチャーン、カチャーン
僕の頭の中で、何か変な文字列が現れた。
koshatogori
こしゃとごり???
カチャーン、カチャーン
文字が入れ替わって行く。
「私、カレー作れるよ」
カチャーン、カチャーン
shikogotaro
しこごたろ?
七星も、加津代さんもいない、
加代子さんしかいない家に
招かれた僕。
ガチャーン・・・
shitagokoro
下心!?!?
「う、うん。ひとりで食べるより、ふたりのほうが楽しいよね」
な、何を言ってるんだ僕は!?
僕が加代子さんを我が家に招待すれば良いじゃないか。僕らの家族は近所づきあいだ!みんな喜ぶ!
「じゃあ、今日きて」
今日!?
僕は、今まで読んだエッチな漫画のシチュエーションを思い出していた。
幾多ものシチュエーションがあるなか、いま、この状況が、世界一違和感のないシチュエーションだと僕は確信した。
これは、うら若き男女が一つ屋根の下でナンチャラするパターンだ!
カレーを食べた後、いや、カレーを食べる前かもしれないぞ。何かしらトラブるが起きて、まいっちんぐな出来事が100パーセント起きるに違いない!
はっ!
今日の夜は遅くなると母にメールを送らなければ!
僕は慌てながらメールを送る。
何を考えているんだ!?僕は!?
こうしてたどり着く!
加津代食堂!




