1-3.コレクション
「そ、そうなんだ」
僕は高嶺さんに反応する。
あ、そういえば。。。
「私は、お父さんがいないの」
加代子さんが答える。そうだった。
エアコン以上に、気まずさによって、場の空気が冷やされていた。
「あ、あれ、もしかしてもう、飛んでないかな?」
庭を見る僕。ミカンの木から、黒いヒラヒラが飛んでいる。羽化したのだ!
「行きましょう。こちらの窓から」
大きな窓だ。というより、ガラス張りの扉というべきだと思う。
「く、靴は?」
「皆さん、良ければ、裸足で芝生を歩きませんか?気持ち良いんですよ」
「賛成!」茂木は元気だ。
僕らは居間の大きな窓を開け、そのまま靴下を脱いで、裸足で駆け出した。
ミカンの木まで、何故か競争が始まる。
息を切らしながら走る。
茂木がすっ転び、笑いながら走る。
加代子さんも高嶺さんも、そして、僕も、笑顔だった。
加代子さんが僕の服を引っ張る。
「ああっ!ずるい!」
笑う加代子さん。僕を追い抜いて行く。
あっという間に、ミカンの木に到着。
僕らは羽根を乾かしている蝶々を見守る。
よく考えれば虫というのはヘンテコな生物だ。大人と子どもでは、その姿があまりにも違う。不思議なぐらいだ。
羽根を開いては閉じる。
羽根を乾かし、今から飛ぶのだ。
そして、色付いた羽根が宙を舞う。
下手な飛び方だ。
僕らの足元を通り、舞い上がる。
「小学生の頃、見たことがあるけど、今見ても、感動する」
僕は感想を述べた。
「羽根を広げて、飛び立っても、野鳥に狙われる事もある。羽根は破れ、胃袋で溶かされてしまう。自然の摂理かもしれない。桜が散る様な、そんな美しさが蝶々の羽化にはあるわ」
高嶺さんが語る。なんだか、少し暗い表現だ。
「それにしても暑い!」
茂木が騒ぐ。
「お家に戻りましょうか。私の部屋に、コレクションがあるんです」
「コレクション?」
「ふふふ、行けば分かります」
僕らは来た道を戻る。
芝生の硬さが素足に心地よい刺激を与える。
足を拭き、家に入る。
そしてたどり着く、高嶺さんの部屋!!
女の子の部屋では無いか!
僕は倒れそうだ!




