1-2.エレガンス
今、夢の中にいるのだろうか。
僕は冴えない仲間の茂木、幼馴染で髪が明るくて、赤い縁のメガネをかけた、最近イメチェンした加代子さんの3人で、たたた、たた、高嶺さんの家の前にいる!!!
高嶺さん夏制服バージョンは、長い黒髪ロングを際立たせ、家に到着するまでに漕いだ自転車の運動によって、微妙に汗ばんだその汗が黒髪の1本や2本をおでこにピタリとつけている。それがまた艶めかしく、素敵だ。
ありがとう夏!!!!
それにしても、
高嶺さんの家、塀に囲われていて全貌がわからないが、めちゃくちゃ大きい!
漫画のようなお嬢様に相応しい
漫画のような豪邸。
広い敷地に、でかい門。
心身ともにお嬢様か!高嶺さん!
「で、でかい。。。」
僕ら3人の声が一致する。
「私のおじいさんの代からある家なの。ずっと住まわせて貰ってるわ」
あくまで自分の力で住んでいる訳ではない、そういった品の良い謙遜をする高嶺さん。やはり素敵だ。
大きな門が開き、塀に囲まれて見えなかった高嶺邸が視界に入る。
野球のグラウンドぐらいの庭と、2階建の家がぽつり。敷地の大半は庭だが、庭師が木を剪定していたり、池から小さな噴水が出ていたり、やはりレベルが違う。
「ヨリ子ォ!おかえり!」
庭師が高嶺さんに挨拶する。あれは親しい仲だが、父親なのだろうか?40代ほどのザ・職人といった感じである。
「ただいま!坂山さん!」
高嶺さんは挨拶を返すと、僕たちに紹介してくれた。
「あのひとは昔から我が家の保全をしてくださる職人さんの坂山さん。今、木々の剪定をして貰っているけど、クロアゲハのいるミカンの木は何もしないでいてくれるわ」
なるほど。豪邸ともなれば、お抱えの職人がいるわけだ。
僕の家は僕か妹が草むしりやトイレ掃除をしている。
レ、レベルが違いすぎる!!!
「クロアゲハを見る前に、まずはお家に入りましょう。暑くて倒れそうです」
僕たちは庭を進み、高嶺邸にお邪魔した。
玄関を開けると、柔軟剤の香りがする。無論、柔軟剤を撒いている訳ではない。
エレガンスな何かが、玄関にある沢山の生花やらなんやらが漂わせているのだ。
正直僕は興奮した。
こ、これは女の子の匂いだ!
居間に通される。
家には誰もいないようだ。
高嶺さんは僕らを椅子に座らせ、エアコンのリモコンを手に取り、電源を入れる。
冷蔵庫を開け、どうやら飲み物の準備をしているようだ。
気が利かない僕らは、ただ座り込み、窓から見える庭を眺めていた。
「お茶と乳酸菌の飲料がありますが、、、皆さんは何がいいですか?」
「お茶で!」
茂木が遠慮なく言うので、僕と加代子さんもお茶をリクエストする。
「水出しの緑茶と、麦茶、アイスティーなんかもありますが。。。」
なんて選択肢なんだ!
我々庶民は麦茶をお願いした。
理科室のテーブルぐらいの大きさのテーブルに4つのグラスが並び、椅子座る僕ら4人。
僕と茂木、高嶺さんと加代子さんが向かい合う。
溶けた氷がカラン、と音を立て、グラスは汗をかいている。そんなころ、僕の汗は引いていた。
「実は、お友達を呼ぶのは初めてなんです」
高嶺さんは言う。
「素敵なおうち」
加代子さんがボソっと言う。
「むむ、麦茶オイシイナー!」
僕は間を持たせる為にお茶の感想を言う。気が利かない僕!!
「親はどんなお仕事してるんですか?」
茂木が聞く。確かに気になるが、茂木よ!そういう話は危険だ!
「父は普通のサラリーマンですよ。母はもう、この世にはいません」
茂木!!!!!!




