3-3.ルール違反
タイムリープを発動すると、景色が歪み、世の中の事象は5分前に戻る。
僕と七星だけが記憶を引き継ぐ。
ところが今は、歪んでいた景色にヒビが入り、時が止まっている。
僕と七星、そして、絵留くんが止まった空間にいる。
「え、絵留くん!?」
僕の問いかけに、絵留くんが少し間を置いて答える。
「他人の鞄を勝手に開けて、祝福を使用し、開けていなかった事にする。。。これ、ルール違反じゃないですか?」
タイムリープの禁則事項を思い出す。
〝悪用してはならない〟まさにこれだ。
「絵留くん、君は何者なんだい?」
僕は整理するために質問した。
「先ずは私の質問にお答え下さい。」
絵留くんは機械的に返してくる。
「確かに、悪用と、取られるかもしれない。けど、加代子さんのキーホルダーを盗んだ犯人を見つけたかったんだ」
「犯人探しの為に祝福を悪用して、他人の鞄を勝手に開けた。違いないですか?」
確かにそうだ。でも、絵留くんに何が分かるのか。それに、絵留くんは何者なんだ?
「ち、違う。犯人探しは、した。けど、それだけだよ。別に美和子さんに白状させるつもりは無かったんだ」
「知りたかっただけ、という事ですね?」
「そ、そうなんだ」
絵留くんは自分の人差し指をこめかみに当てた。さながら名探偵のようだ。
思考を巡らせているのだろうか。
「うーん、イエローカードですかね」
イ、イエローカード!?
七星は黙ったままである。
と、言うより喋れないように見える。
「私は監査員。大天使省から派遣された天使です。ラブアシスト制度が正しく機能しているかを監視するのが私の役目」
絵留くんが遅れながら僕の質問に答える。
「担当天使の七星さんは1ヶ月の出場停止としましょう。また、次に同じ様な悪用をすれば、アウトです。」
「え?」
出場停止!?
そう思った瞬間、七星の姿がフッと消えた。
「な!七星!」
「今回の祝福は適用します。しかし、七星さんが出場停止となりましたので、少々世の中の事象を改変します。七星さんは本日から長期の休みを取り、留学していることになります。これは全員も納得の記憶の改変です」
記憶の改変!?
「そうなった場合のクラスに戻ります。この場合、美和子さんはおそらくキーホルダーを盗んだりはしません」
「あと、君の記憶も改変します。」
「な、何がなんだか分からないよ!」
「大丈夫です。君は〝タイムリープを悪用してはならない。ルールを破ってはならない〟という記憶と〝七星さんが1か月の留学に行く〟という記憶だけが残り、〝三木矢絵留が監査員である〟という記憶は消えます」




