2-3.控えめに左手
相手チームの神田くんがボールを取り、手でバウンドさせながら颯爽とこちら側へ向かってくる。
早速七星がダッシュし、ボールを奪いに行く。しかし、性差という根本的な違いにより、神田くんはぐいぐいと進み、七星を突破した。そのままトウマにパスを回し、トウマはその場でシュート。またたくまに点を取られた。
「余裕だな」
トウマが素直にカッコいいと思う僕だ。
なぜ、こう生まれてこなかったのか。神様を恨むにも年齢的に遅い。
「ん、気を取り直していこう」
吉田くんはポジティブだ。
「部が悪いな。。。」
ぼそりと呟く魚住。暗に僕のことを言いたいのだろう。
「まだまだでしょ!?」
勢いのある七星。無言の僕。
再びゲームが始まる。
魚住がボールを吉田くんに渡し、吉田くんがヘンテコな動きをしながら笑いを取る。ふざけている場合では無いのだが、盛り上がる。
吉田くんが七星にボールを渡す。
七星が僕を見る。
まさか、僕にパスをするのか!?
やめてくれ、七星!
七星は優しくボールを僕に向けて投げる。茶色く、重いバスケットボール。突き指しないか、僕は怖い。
それに、僕はボールを受け取ったらどうすればいいのだろうか。
誰かにパスを回せばいいのだろうか?
その思考も間も無く、ボールが向かってくる。両手と胸でキャッチする。不恰好だ。
僕みたいな人間をマークしている人はいなく、ガラ空きのゾーンに僕は立っている。
なにを、どうすれば良いんだろう?
「シュートしちゃえ!」
七星が言う。
僕は即座に、アメリカのバスケットプレーヤーを思い浮かべ、ジャンプし、両手でボールをネットに向けて投げる。
自分でも分かるぐらいの不恰好なシュート。
ネットの枠にぶつかり、跳ね返る。それを魚住がキャッチし、綺麗なシュート。するりとネットを揺らした。
「うぉー!!!」と盛り上がりギャラリー。
魚住が僕に近づく。
魚住の右手が上がる。
僕は控えめに左手を上げる。
パチン、と音が鳴る。




