5-4.ガラスケースの先
ショッピングモールの2階3階は、様々な店が軒を連ねる。
ほとんどは洋服のお店で、そのうちのひとつに僕は七星に手を引かれ入店する。
僕は私服を見られるのが嫌だし、私服を買いに行くのも嫌だ。
服を買いに行く服が無い、と良く聞くがそれもある。なにより自分のセンスを笑われるのが怖い。
イケイケな店員が洋服を畳んでいる。
七星は店を一周し、その間、僕に似合いそうな服を選んでカゴに入れた。そのままレジへ向かう。
え?試着しないの?
「これ下さい」
カゴ一杯の洋服に驚く店員。何事もなくカードで会計を済ます七星。
「ちょ、ちょっと、七星。そんなに買わなくても」
「違うやつが欲しくなってまた買いに行くの面倒でしょ?」
感覚が違い過ぎる。
買い物は一瞬で終わった。
「帰る?」
七星がふと聞いてくる。
まだ14時5分だった。
人混みは嫌いだ。でも、なんだか帰りたく無い。
「せ、せっかくだし、他も見てみない?七星も欲しいものあるでしょ?」
そうだ。
あと2週間。
これで僕と七星との日々も一旦終わりだ。
今を、楽しまなくちゃ。
「あ、そう?それならアンタも付き合いなさいよ」
残り少ない時間を過ごす。
七星の選ぶ服は女の子らしい。ちょっと意外だった。
僕の得意なUFOキャッチャーで大きなお菓子の箱を手に入れ、喜ぶ七星。
僕のお小遣いでは到底届かないガラスケースの先の腕時計をふたりで覗く。
歩き疲れ、ふかふかの椅子に座ってコーヒーを飲む。七星はキャラメルなんちゃらという甘い甘い飲み物だ。
気がつけば17時。
僕らは帰ることにした。
帰り道は静かで、湿気が多いのか草の匂いがした。
「今日はありがと」
七星がぼそっと言う。
「うん」
「来週は練習出来ないから、アンタ個人練習してなさいよ」
「わ、わかったよ」
「近いうちに、アンタの服を決めるから、時間あるうちに私の家に来てね」
僕は自宅に帰り、今日のスポーツの練習ではなく、その後の七星とのデートの事を何度も思い出していた。




