5-1.二等辺三角形
ーなにやってんのよ。練習するわよー
朝、七星からのメール通知音で目覚める。
今日は土曜日。6月6日。
せっかくの休みだというのに。
ーあと2週間切ってるのよ!ー
七星からしつこくメールが来る。
僕は渋々着替え、朝食を済ませては加津代食堂に向かう。
「遅いわよ」
「ご、ごめん、で、練習って?」
「スポーツの練習よ!」
場所を変え、自転車で20分ほどの大きな公園。
大きな原っぱがあり、それを囲うようにランニングコースがある。いわゆる運動公園だ。
休日の家族連れが大きめのゴムボールでわいわいと緩やかに遊んでいる中、僕と七星は距離を置いて向き合う。
まずはサッカーの練習がしたいという。親睦会ではスポーツのミニゲームが行わるのだ。そのうちのひとつにフットサルがある。
僕の家からサッカーボールを持ってきた。
「いくわよー!」
七星がボールの位置から5歩ぐらい下がり、一気に助走をつけてボールを蹴る。
つま先がボールの中心を突き、見事なトーキック。高さをつけたボールが気が付けば僕の顔面を直撃していた。
「避けなさいよー!」
避けれるものか!結構なスピードがあったのだ!
「つ、つぎは僕だ!」
サッカーぐらい、体育の授業でやっている。
ボールはつま先ではない。靴の内側で蹴るのだ。
僕も助走をつけ、ボールを蹴る。芯からは程遠い位置を当て、七星のいる方向とは程遠い場所へボールはゴロゴロと向かう。
原っぱの草がボールの推進力を奪い、動きを止めた。僕と七星とボールで二等辺三角形が出来た。
「ヘタクソー!」
七星が笑いながら僕を指差す。
「い、いまのは、失敗だよ!ちょっと間違ったんだ!」
僕は靴紐を結び直す。
ボールに近づき、再び七星に向かってボールを蹴った。
ゴロゴロ。。。
次は正三角形が出来た。
「アンタ、サッカー選手の子どもに産まれなくて良かったね」
七星が爆笑している。
3度目のパスは七星の足元に届いた。
そこで僕は大変な事に気付く。
な、七星はスカートをはいている!
しかも!短い!
気を取り直し、またしても距離を保って七星が蹴る番だ。
改めて見てみよう。
七星は茶髪でツインテールの可愛い女の子。
おっぱいもあるし、今日はよくわからないピンクTシャツの上に白のカーディガン。そして短めな水色のスカートだ。
ファッションは甘いとか辛いとかあるらしいけど、間違いなく甘い!
「いっくよー!」
またしても助走をつける七星。
ボールを蹴る瞬間。僕はスカートの向こうを凝視する。
またしてもトーキックの七星。
「白ッ!!!!」
またしても顔面直撃。