3-4.判断が正しかった
はっきりと、言わなくてはならない。
僕はこの目の前の男に、言わなくてはならない。
僕が避けていた、威圧的な人種の、魚住の提案を断らなければならない。
「や、やめて、おくよ」
僕はここで初めて意思表示をする。
「高嶺が好きなんだろう?」
「た、高嶺さんも好きだし、なな、七星も好きなんだ」
「あ?」
魚住が立ち上がる。
「女たらしかよ。ねーわ」
そのまま魚住が店を出た。
この判断が正しかったのか。
僕には分からなかった。
しかし、ここで、ひとつのある疑問が浮かぶ。
今、僕が七星を好きだと宣言した。
そもそも、僕と七星は付き合っている設定になっているのだが、ラブアシスト制度のルールを違反しているのではないだろうか。
天使は、どこまで僕の思考を読み取っているのだろうか?
そもそも、七星には上司とか、そういうのがいるのだろうか?
政府が打ち出した制度の割に、あまりにも自由が過ぎる。
あっ。
僕は思い出したようにカバンを探り、メモ紙を取り出した。
それは、以前七星から渡された、エンジェルコールセンターの電話番号。
分からないことは、ここに聞いてみるべきではないのだろうか。
僕はとりあえず店を出て家に帰り、部屋で電話してみることにした。
『フリーダイヤルでお繋ぎします』
プルルルル、と音がなる。
なんだか、普通だな、と僕は思う。
『こちらは、エンジェルコールセンターです。只今電話が混み合っております。このままお待ちください。』
このガイダンスが4回ほど流れる。そもそも、エンジェルコールセンターがこんなに混む事などあるのだろうか。
『お待たせしました』
電話の先は男性の声だった。
「も、もしもし、あの、聞きたいことがありまして」
『どのような御用件でしょうか?』
男の声は優しい。男も天使なのだろうか?僕は天使=七星というイメージがついてしまったので、丁寧な対応に驚く。
「いま、ラブアシスト制度で、天使さんに祝福をしていただいているわけですが、そのラブアシストのルールとか色々教えて頂きたくて」
『制度に関するご説明は、事前に資料として担当天使からお渡ししておりますが』
「えーっと、その、例えば、例えばですが、天使に恋をした場合、というより、どこからが恋なんですか?」
『恋というのは、曖昧ですね』
『それは、多くご相談をいただいております』
コールセンターの男は、語り出した。